十八、祖父の好物
おはぎを作ったから食べにおいで、とお彼岸の朝におばあちゃんから電話が来た。
おばあちゃんはお彼岸になるとたくさんのおはぎを作ってくれる。
あんこをもち米で包んで、そこにさらにあんこを纏わせた特製のおはぎだ。
私が生まれる前に死んだおじいちゃんは、このおはぎが大好きだったらしい。
お店では味わうことができないこのおはぎは、私にとってもお彼岸が待ち遠しくなるほど大好物だ。
お彼岸の日は、最初におじいちゃんのお墓参りをする。
おじいちゃんに怒られないように心をこめてお墓を掃除して、しっかりと手を合わせる。
そしてようやくおばあちゃんの家に向かうのだ。
おばあちゃんの家に着いたらすぐに仏壇に手を合わせる。
お線香の匂いは苦手だけど、お供えしてある三つのおはぎを見た瞬間にワクワクが勝った。
家に持って帰るぶんのおはぎをタッパに詰めてもらって、それとは別にお茶と皿に乗せたおはぎをもらう。
満面の笑みでかぶりつく私を、おばあちゃんは嬉しそうに見ていた。
「お仏壇のも持ってきて食べていいよ」
私の食べっぷりを見たおばあちゃんがお供えしてあったおはぎを持ってきてくれた。
さっそく箸で半分に割ってみると、思わず不満の声が零れてしまう。
「おばあちゃん、これ中身ないよ」
私が見せたおはぎは真ん中が空洞になっていた。
他のおはぎも割ってみると、どれも中身が消えて空洞になっている。
「じいちゃん、あんこが好きだったから……。あんこだけつまみ食いしたのかねぇ」
おばあちゃんは困ったように笑った。




