十七、天使
遥か天空から光り輝く生物たちが舞い降りてきたのは、もうじきクリスマスという時期だった。
背に鳥とよく似た白い羽を持つ彼らは、その羽を除けば人間と瓜二つの姿をしていた。
その姿と彼らが訪れたタイミングからその生き物たちは「クリスマスの天使」名付けられ、国際研究機関により“保護”された。
天使たちの身体に付着していた物質などから彼らは地球で誕生した生命ではないことが確認され、宇宙人が実在したと世間は沸いた。
その幻想的な姿や温和な態度から人々は彼らを賓客として迎え入れ、彼らの用いる言語や母星の環境などを研究しようとする者も現れた。
天使たちも地球が気に入ったのか、母船と思われる巨大な宇宙船を上空に駐留させ頻繁に地上との行き来を行うようになった。
その頃から異常気象と呼ばれていた現象が急激に減少しはじめた。
どのような手法を用いたのかは不明だが、天使たちが異常気象を止めてくれたのではないかと巷では噂になっている。
天使が舞い降りて数ヵ月後のことだ。
母船から数体の天使たちが地上へ降りてきた。
そして、未だ解明されぬ宇宙言語で何やら語り交わすと、地上にいた天使たちを引き連れて再び天空へと舞い戻ってしまったのだ。
その行動に何らかの意図があるものと考えた研究機関は緊急会議を名目に各国の要人を招集し、対応を急いだ。
しかし、その時にはもう手遅れだった。
間もなくして、地球上のありとあらゆる地点で火の手が上がった。
各国の主要軍事都市は壊滅状態となり、全世界中が混乱に陥る。
その時、天使の透き通るような声が、地球上のあらゆる言語を網羅して響き渡った。
「調査の結果、我々はこの星を次の住居区とすることを決定した。反乱する者は容赦なく排除する。また、人類は我らの奴隷とし、これより捕獲を開始する。
繰り返す。調査の結果、我々は――」




