十二、忘れ物
公園をぶらぶらと歩いていると、捨てられている一枚のディスクを見つけた。
ベンチの下に生い茂った雑草の間に埋もれるようにそれは置かれていた。
それがDVDではなくCDだと思ったのは無地のディスクに太いマジックで『CD』という文字が書かれていたからで、あるいはDVDなのかもしれない。
公園に落ちているDVDの類というのは、ほとんどがいかがわしい内容のものと相場が決まっている。
普段なら気にも留めずに歩き去るのだが、今回だけは違った。
僕は引き寄せられるようにそのディスクに手を伸ばし、迷うことなくカバンに押し込んでいた。
しばらく散歩をしてから家に帰り、ケータイを取り出そうと鞄に手を潜り込ませた時、プラスチック製のケースに手が当たった。
その時になってやっと、昼間拾ったCDのことを思い出した。
ディスクをプレイヤーに挿入すると、三という数字が表示された。
たったの三トラックしか入っていないのか。
残念に思いつつ、再生ボタンを押した。
キュルキュル、とディスクが空回りする音が聞こえて、停止してしまった。
奇妙に思いながらディスプレイを見ると数字が二に変わっている。
読み込みに失敗したのか?
もう一度再生ボタンを押したのだが、やはりキュルキュルと空回りするだけで何も聞こえなかった。
ため息をつきながらディスプレイを見て愕然とした。
数字が一になっている。
次に再生したら何かが起こるんじゃないか?
恐怖もあったが好奇心に負け、僕は再生ボタンに手を掛けた。
翌日、俺はそのディスクを元あった場所にそっと戻した。




