#58
七月も終わりに差し掛かり、皆は夏休みに浮かれつつ、例年稀にみる大量の課題に阿鼻叫喚していた。
そして、愛理さんは収録があるので二日間東京に行ってしまう。
課題より愛理さんが居ないことに阿鼻叫喚している。
「なんでぇこんな課題多いのぉ……」
「文化祭の規模が拡大したおかげだぞ。教師たちでなんとかやりくりしたんだから感謝しろ」
「「「ブーブー」」」
「課題減らせー」
罵詈雑言が飛び交う教室となってしまった。
今年の夏休みは忙しくなりそうだというのにこうも課題を増やされては困る。
「夏休み前に進めるか……」
「樹さんの分の課題は私がやりますよ」
「愛理さんにばかり任せられない……けど分からないところは教えてくれ」
愛理さんの答案は大体合ってるからな最悪写せば終わる。
「愛理ちゃん私も教えて!」
「千郷ちゃんはなるべく自力で頑張ってください。留年しないためにも」
「うっ……」
千郷は定期的に赤点ぎりぎりになりかける……というか赤点になる。
でも、基本的にそこまで点が低いわけじゃない。
苦手な部分がはっきりとしているというかなんというか。
「そういえば皆は夏休み何するの?」
「私は家から招集掛かってぇ……」
「俺はそのついでだな」
「考えたくないね……」
正直俺も逃げていいんだったら今から逃げる準備している。
だって財閥家の集まりだぞ?ろくなことない。
「そういう千郷ちゃんはどうなんですか?」
「んーなんもないかなぁ……家でまったりゴロゴロと、まああとバイト?」
「俺もそうだな」
「僕も」
意外と長期休みって学校ないからありがたがられるけど、いざ何かするかと言われたらそこまで何もしないんだよな。
まあ勿論たまに友達と遊んだり旅行に行ったりするのはあるかもしれないが、基本別になにかするか聞かれたら出てこないんだよな。
あとはバイトしまくって金稼ぐぐらいだろう。
俺としてもこんなに忙しい夏休みは人生初かもしれない。
「きーちゃんは?」
「色々あるわよ」
「きーちゃんも財閥家のパーティー来ないかなー」
「立場が違い過ぎるわよ。行けるわけないじゃない……行きたくもないわ」
そうだよなぁ、俺も行きたくない。
「樹君の顔に明らか行きたくないという意思が現れてるけど……」
「連れて行きます。まあ他の財閥家への顔合わせが必要ですし、どのみち家へ嫁ぐのなら避けては通れぬ道です」
「なんもしたくねぇ……」
「顔出してるだけで何もしなければいいんですよ」
「もう立派なヒモよね」
「ヒモだねぇ」
俺は愛理さんに養われて生きていく覚悟ができている。
覚悟も何も愛理さんに媚び売って、あとはなにもしなければ勝手に生きていけるの間違いだが。
普通に考えて愛理さんみたいな美女のヒモになって生きるとか最高だろ?
一生このままがいい。
そう思い将来像を浮かべながら、授業をぼんやりと聞いた。
今日は夏休み前のよくある半日登校日なので、全員早めに帰れることに歓喜した。
遊びに行く者、そそくさと速足で家に帰る者がいる中、俺は東京へ向かう愛理さんと別れ、オルフェーヴルへ向かった。
最近仕事がないと言われ、バイト代を受け取るべきなのか良く分かってない。
指輪代に充てているとはいえなんか申し訳ない。
「錬弥さん今日仕事あるのか?」
「ないですよ。さっさと金属工芸学んで、出来るようになってくれませんか?多分そっちのほうが凄い助かるような気がしてきましたよ」
「暇があったら教えてるんだけどねぇ……こっちの手が空かないから教えられないや」
「俺は手先不器用だからできないぞ」
こういう細々とした作業は俺苦手なんだよな。
電子機器類だったら大して問題ないんだが、どうも電子機器以外は駄目なんだよな。
「もう売りに出てもらったほうがいいのかもしれないですね」
「営業までさせる気か」
「広報でもいいよ」
「人手が足りないのにさらに客集めてどうするんですか……」
まったく銀鏡さんの言う通りである。
人手不足で限界を感じるが、まあなんだかんだ言ってこの三人だからなんとかなってるし、店があるのだろうって感じがする。
今日も今日とてあまりすることなく簡単な作業だけして終わってしまった。
「早いですけど、本当にもう仕事がないんで帰っていいですよ」
「暇だからここにいる」
取り合えず出勤簿に退勤を記載して、椅子に座った。
「あれ、愛理ちゃんは?」
「東京……」
「あらら、二人のあのラブラブ度を見るとだいぶ心に穴空いてそうだけど」
「家に帰って愛理さんがいないからな……」
寂しいという一言で表せない。
あと愛理さんと同棲する前のしんどさも加算して思い出してしんどい。
「ふむ、じゃあ作業の手伝いの為に勉強してもらいましょうか」
「退勤消してくるぞ」
「お好きにどうぞ」
「一番困る回答」
困るとか別にいいっていう回答だったらそのままその通りに従えばいいだけだが、お好きにどうぞってどうするか悩んでこっちが困るんだよな。
これ以上給料泥棒しても申し訳ないので、特に何もせず錬弥さんの横についた。
面倒くさい専門的なことは俺は一切分からないので、簡単な作業を教えてもらったが、それでも手先の器用さが求められるような作業なので、困ったものだ。
「まあ慣れですよ」
「俺は手先が器用じゃないんだよ」
機械関係だったらなんとでもなるのに、こんな良く分からん作業は俺に向いてない。
練習として金属板を削るがどうやったらあんなに綺麗に宝石がハマるのかわけわからん。
削るけど入らないし、ちょっと広げようと思ったら広げすぎてぐらつくし。
「始めたばっかってのがあるけど、樹君が苦戦してる姿初めて見た」
「大体やってきたことだったからな……」
「その歳でどこで覚えてくるんですか……」
「まあ色々とあったからな」
本当、中学時代に色々なところでこき使われまくったおかげだな。
特に父さんの会社とREVIA。
雑用全部振って来やがる。
そのおかげで弱みを握ることはできたけどな。
「樹君は中学生の頃のほうが謎めいていて関わったらあかん雰囲気ありましたよ。それが今じゃこんな丸くなって」
「親?」
「まあ前の樹君がどんなかは知らないけど愛理ちゃんのおかげだよね」
「まあそうだろうな」
中学生の頃と今を考えてみると自分でも分かるぐらい変わったと思う。
愛理さんと一緒に暮らして変わったよな。
やっぱ、成長期の子供が一人で生きると頭おかしくなるよな。
「やっぱり愛理さんと一緒に生活し始めたのが転換期だな」
「ああ、樹君中学の時ほぼ一人でしたよね」
「両親は?」
「仕事人間でなぁ……家にいる時間がほぼなかったからな」
「育児放棄だ」
「あまり他所の家庭のこと言うのは良くないですよ。と、言いたいところですが、流石に可哀そうですね」
銀鏡さんと金栗さんが憐れむような目でこちらを見てくる。
普通の家庭だったらよかっただろうなとは思いつつ、しかし本当にそうだったら愛理さんとの出会いはなかっただろうなとは思う。
財閥家の一人娘が一般家庭のやつと結婚することはないだろうな。
まあ正直最低ラインをぎりぎりで、家族間での仲があったからこそ愛理さんと許嫁になったんだろうけど。
「弓義さんとは会ったことありますけど……」
「母さんはほとんど海外で過ごしてるからな」
「何やってるの?」
「知らんわけでもないが、予測でしかないって感じだな」
「だいぶこうなんていうか尖った一家なのかな?」
父さんは会社に籠りっぱなしの社長、母さんは知らんが多分音楽系のことやってるんだと思う。
なぜそう思うかって?
家に楽器ケースがあるし、俺が入っちゃいけないって言われてる部屋防音だし。
なんで母さんがここまで俺に仕事について隠しているのかは分からないが、まあ聞かないようにしている。
「考えたらうちの家系尖ってるな」
父さん母さん以外もなかなか色物ぞろいと言うかなんというか。
「まあ尖ってるで言えば、樹君以外は金属系の仕事してた一家出身者しかいないから」
「珍しい気がするな」
「まあね、錬弥と翡翠はそれこそアクセサリーを作り続けてる一家出身だし、私は金属加工で繋いできた家出身だし」
金属加工っていうとどんなことをしているのか分からないが、ずっとやってきた家って考えると相当な技術があるんだろう。
アクセサリーを作り続けている一家は珍しいよな。
まあ銀鏡さんは名前から分かりやすいぐらいそれが伝わってくる。
「家から逃げ出すはずがいつの間にか元に戻ってるっていう」
「まあ金になってるしいいんんじゃないか?」
「おかげさまで作業しかしてないロボットですけど」
「雑務は任せとき」
「雑務は任せときって……機械じゃないんですよこっちは」
まあでも俺ができることが雑務だけだからな。
錬弥さん達は身を粉にして作業してもらうほかないだろう。
閉店までそんな他愛もない会話をして、帰路についた。
夕飯は家に帰ってから作るのも面倒くさいし、冷蔵庫の中身がだいぶすっからかんだったので、適当に買って帰った。
「やっぱ寂しいもんだな」
家に帰って愛理さんがいない。
今じゃ愛理さんがいることに日常に感じられる。
でもこうやって愛理さんがいないと普段の日常が、非日常的に感じられる時間だ。
俺が愛理さんと出会っていなかったときの生活に戻った感じがする。
「配信でもするか」
昔は特に考えもしなかったが、俺が配信を始めた理由の中には寂しかったからというのもあるのだろう。
愛理さんと生活し始めて配信する頻度が酷く減った。
それは、愛理さんとの生活が楽しいというのと寂しさがなくなったからだろうな。
現にこうして愛理さんがいないと配信したくなったからな。
買ってきた夕飯を食べて、パソコンを開いた。
「しかし、この部屋まだ慣れないんだよな」
前は地味でシンプルでただパソコンしかなかっただけの部屋だったのに、ネオン色と無駄に高い設備に囲まれ、落ち着かない。
配信するためのアプリを開き、色々と設定したあと、配信開始ボタンを押した。
『さてはこいつ暇だな』
『ゆきちゃんがおらんのやろ』
『凛斗ー寂しいんかー』
「雪が収録でいないから寂しいんだよ」
枠立てしてすぐにコメントが流れ始めた。
そして、俺は愛理さんがいなくて寂しいから始めたとバレている。
『私より配信しとらんやん』
「久しぶりに見たな立凛」
『息子がしくしく寂しがって泣いてるって聞いたから配信やめてすっ飛んできた』
「泣いてないぞ」
『おーよしよし、雪ちゃんいなくて寂しいねぇ』
『泣いてもええんやで』
なんでこの配信保護者面のやつらしかいないんだ。
『凛斗さんそんなに寂しいんですか?』
「……収録は大丈夫なのか?」
『明らかに声が上擦ったな』
『ご主人様が帰ってきたペットみたいだな』
『尻尾ぶんぶん振ってるのが見えるわ』
「うるさいぞ」
愛理さんがコメント欄に現れて興奮してしまったのは事実である。
『収録の合間です。やっぱり連れてくるべきでした……』
『ペットなんよな』
『扱いがペット』
『凛斗のクール感がすっかりなくなって』
「立凛、俺はそんな雰囲気出してたつもりないぞ」
『あれ?孤高の狼感出してたのに?』
「うるさいぞ」
配信しないで一人で布団にくるまってた方が良かったかもしれない。
このままじゃ俺が愛理さんがいないとしょげてるペットとしてずっとからかわれてしまう。
「そういえば、雪から十月のライブが完売とか聞いたんだが」
『チケット取ったぜ』
『開始数時間で最前席なくなってたんだよな……油断してた』
「誰得ライブだよ」
『リスナー得?』
『濃密なイチャイチャを数時間に渡って見るからなぁ』
『私も取ったよー』
「一月はどうなるんだか……」
『……?』
『完売しとるどころか、抽選やぞ』
『普通に著名人集まりすぎて、倍率えぐかった』
「雪?俺は何も聞いてないぞ」
『話してないですもん』
『主役がなんも知らんのかい』
『抽選外れたの悔しい』
『siveaのライブより倍率高そうだったもんな……」
「どうなってんだ」
『いやー集まってゲームするだけじゃなくて、色々な企業のブースが集まるとかなんとか』
「雪?」
企業が来るというのは聞いていたがブースというのはどういうことだ?
そこまで行くと企業のブースが気になってくる人が多そうだけどな。
「俺が観客側だったらどれだけ楽しみだったことか……」
『メインだもんな』
『俺だったら逃げてる』
『ワイだったら胃が痛くなって家で寝るンゴ』
立凛の口調がだいぶ掲示板に寄ってる。
『引きこもりが何を』
『引きこもりじゃないが????働いてるが????』
『わぁお』
『ニートじゃなかったんか我』
「俺も最初ニートか在宅勤務だと思ってた」
『有能すぎてすぐ仕事終わっちゃうんだよねー』
『ほっぽりだしてるだけだな』
『有能なフリをしてる無能かもしれん』
『バカやん』
「散々な言われようだな」
『ふんだ、君たちと違ってライブ関係者側に呼ばれてんだからね!』
「呼ばれてるんかい」
『返しがずりぃ』
『いいな』
『行きてぇ』
『ハハハ、これがママ特権なのだよ』
まあ関係者特権と言われてしまえばそれまでだよな。
どうせ来てもらうんだったら何かしてもらいたいところではある。
「ステージでも立ってもらうか」
『いいですね!』
『待って、雪ちゃんが言うと本当に出ることになっちゃう』
『行ってこい』
『俺らの希望や』
『楽しんで来い』
リスナーは立凛がステージの上に立つことを期待しているようだ。
まあでもどうせだったらステージの上に立たせるのが正解だよな。
「まあ全ての采配は雪の手にあるからな」
『雪ちゃんが暴走してるだけなんだよね』
『暴走でここまで出来るのはおかしい』
『令嬢説ってマジっぽそうだよな』
『ただの令嬢か?』
愛理さんはデビューしたての頃から令嬢説というのが流れていた。
言葉遣いはだいぶ俗よりだが、今までの経歴や価値観というのがずれているので、よく令嬢説が浮上する。
まあ実際令嬢だったが。
「まあ雪のファンがほとんどだろうし俺は裏で寝てるわ」
『そうか?』
『ワイら凛斗見に行く気やったんけどな』
『配信頻度が終わってるのと予告がないから人が集まらんだけで、ファンは多いと思うやけどな』
「でも、元は雪んとこだろ」
『それはそう』
『なんやこいつって見に来たわ』
『唐突な脳破壊RTAされて、ぐちゃぐちゃになってきたわ』
「俺がそっちだったら同じだな」
推しが良く分からんやつと付き合ってただったらまだ別に普通に思えるがよくわからんVとだもんな余計脳が焼ける。
『過去配信ずっとイチャついてるし』
『なんか可哀そうな男だし』
『たまに感じる父性よな』
『『『いい男やった』』』
「リスナー同士仲が良くていいことだ」
割とコメントしてるやつらは皆同調している。
『飯も美味いし』
『凛斗イベントで飯作ってくれ』
『凛斗と関わる全員が凛斗の飯美味いっていうもんな』
『ルリも凛斗の飯は美味いって豪語してたもんな』
『見せてもらいましょうか、泥棒猫の実力を』
野生のフォルナ・レシーナが現れた!
あれ?俺NG出してなかったか?
「なんかいたんだけど」
『ガチ炊き厄介オタクが通り過ぎたな』
『まあ分からんでもないけどな』
『百合……素敵だ』
「リスナーもおかしいのが混ざってるな」
『雪花様にふさわしいかこの私が判断してやる』
『面倒くさいの来たねぇ』
『フォルナちゃんもう寝る時間だよ』
『はい♡雪花様♡ふん、私はもう寝るけどイベントでご飯食べるから!』
愛理さんにほだされコメ欄から消えた。
『嵐』
『台風』
『天災』
「過ぎ去ったな」
トタンの屋根が剥がれそうな突風が吹き荒れた。
このままでは俺がイベント会場で飯番することになってしまう。
「まあステージ上がらないで飯作るんだったらアリか」
『凛斗さんの料理食べれる!』
『雪はたまに食べてるだろ。というか雪の飯のほうが美味いからな』
『二人で作れよ』
『夫婦飯』
『胸焼け確定だな』
『砂糖多め』
『いいじゃん!やりなよ』
まあ愛理さんと一緒に作って出すならまだいいかもな。
『数食限定で出しますか!』
「大変じゃないか?」
『まあお昼は多めに時間取れるように調整はするので、なんとかなるんじゃないんですかね』
『飯だけ食いに行くか』
『一期生のところでも話になったからな……一番混みそう……』
一期生は昔よく飯作ってやったからな……
あのメンツでまともに飯作れるの黒瀬さんぐらいだからな……
『私の分は別で作ってよ?』
「それを始めると沢山作ることになるから勘弁してくれ。また今度オフの時にでも作るから」
立凛はもう家も知ってるしな。
別にまた会えばいいだろう。
『マジ!?やった!今度行く!二人の飯たらふく食ってやる』
『あ、ずる』
『夫婦飯食いたい』
『というか飯の写真、投稿してくれよ』
「あーそれはありだな」
二人して配信頻度が減っていたから、なにか活動らしい活動はないかと思っていたが、写真を投稿すれば多少はマシだろう。
まあほとんど愛理さんの飯になることは確定しているんだけどな。
『前私が食べた二人の料理投稿しよーっと』
『ぐわっ飯テロ』
『なんというか対比が凄いな』
『実家の飯と料理人が作る飯って感じ』
『多分誰が食べても子供の頃に食べた実家のご飯を感じるよ、凛斗の料理は』
「普通に作ってるだけなんだがな」
『雪ちゃんのご飯は、普通の外食に物足りなさを覚えさせる料理人顔負けのめちゃうま料理』
『よだれが止まらん』
『そんなの毎日食ってんのか』
「雪の飯は料亭で出されても普通に気づかん」
『凛斗さんそんなに褒めても何も出ませんよ』
「褒めなくても雪からは出てくるんだけどな」
『ヒモ』
『養われてぇなぁ?』
まあ周りから見ても俺はヒモ男だよな。
だって愛理さんが何もしなくても養ってくれるんだしょうがないだろ。
「俺も雪も配信頻度減ってるからなぁ」
『本当にな』
『悲しい』
『二人が幸せならOKです』
『私は凛斗さんとイチャイチャできればどうでもいいですけど』
「企業所属がそれ言っちゃ終わりじゃないか?」
雪上家の力があるからこその発言な気がする。
でも、社長があんな感じだから別になんも考えてなさそうだけどな。
「なんかしないとなぁとは思いつつ今後のことを考えるとそうも言ってられんか」
『ゆっくりでええんやで』
『イベント多いもんな』
『しゃーなし』
「飯は毎日食うから今度から投稿するわ」
『飯テロは夕飯前にしてくれな』
『夜食はアカンで』
まあ飯の写真で許してもらえるんだったら割と楽でいいよな。
配信を閉じて、寝室へ向かった。
スマホを見ていると愛理さんから電話がかかってきた。
「もしもし?」
「樹さーん、寂しいです」
「俺も寂しい」
なんか恋人らしいことをしている気分になる。
正直愛理さんと一緒に生活始まって普段から愛理さんが一緒にいるせいで、恋人らしいことをしてきたかと言われればしてないし、会えない寂しさを感じる回数も少なかった。
「飯作るのはどうするんだ?」
「わりとコンテンツ化できそうなので、ありですね。まずはライブで出してからでもいいですし」
まあまずはsiveaのライバーにでも食べてもらって感想を広めてもらうことが優先されるかもしれないな。
そういう点ではフォルナ・レシーナは役に立つかもしれないが、俺としては会いたくないし愛理さんに会わせたくないというのがある。
「瑠璃とかに広めてもらうか」
「瑠璃ちゃんは意味ないというか……だいぶすごいことになってますよ?」
「どういうことだ?」
愛理さんが言うには配信で隙あらば俺の話をするらしく、本当に妹疑惑が浮かんでいるらしい。
やばいやつだよな。
「広めるも何もずっと言ってるってわけか」
「はい」
そうなるともう効力がないよな。
「やっぱ一期生か?」
「どうせなら火花燐さんとかに頼みませんか?」
「あーまあそれだったらありか」
ということで愛理さんが話を進めてくれることになった。
光大の姉とはいえ、一回ちょっとあったぐらいだしな……
人見知りの身としてはすこし困る。
「樹さん帰ったらいっぱいイチャイチャしましょうね」
「寂しいから早く帰ってきてくれ」
「なんか焦らしてる気分になって、いいですね」
「やめてくれ……」
愛理さんに焦らされでもしたら俺はとうとうどうにかなってしまう。
これだけ愛理さんが居ないとダメな人間にされたのに、離されてしまったら俺は生きていけない。
「まあ私も寂しいのですぐ帰りますけど」
「待ってる」
「樹さんおやすみなさい」
「おやすみ、愛理さん」
俺は寂しい気持ちをなんとか紛らわせ、寝た。




