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#57

 昼休み、学校で錬弥さんから連絡が来たので確認した。

 今日はバイト終わりに夕飯を食べに行くことになった。


「愛理さん、今日夕飯ってもう作ってあるのか?」


「いえ?まだですけど」


「錬弥さんから誘われたんだがどうだ?」


「大丈夫ですよ。私って帰りついて行った方がいいですか?」


「あーどうだろうな。バイト終わってからだしな……まあ一応確認するわ」


 錬弥さんに聞いてみると来ても大丈夫だし、あとから集合でも大丈夫と返ってきたので愛理さんに任せることにした。


「……なんで千郷は愛理さんに抱き着いてるんだ。暑いだろ」


 俺と愛理さんが普通に会話しているなか、千郷は愛理さんに抱き着いていた。


「え、おっぱい」


「まあ分からんでもない」


 今更だが体育祭始まる前当たりで衣替えも終わり、全員夏服に代わっている。

 ブレザーで多少ごまかされていたものが夏服に変わった途端主張がさらに強くなったと言える。

 正直俺も愛理さんの夏服を見たときは本能が目を逸らさせた。

 そのあと愛理さんがずっと視界に入ってこようとするせいで目を閉じるに至った。

 さて、話は変わるが、去年は紀里の夏服で男子生徒諸君がお祭り騒ぎとなった。

 正直俺もあれを見た時は成長期ってすげぇなと思いつつ、紀里にちょっかいかけられて目の前であのでかい物が強調してくるものだから理性が困った。

 今年は紀里に加えて愛理さんだ。

 男子生徒諸君は目のやり場に困るだろう。


「樹さんもこうやって抱き着いてきていいんですよ」


「学校では流石に恥ずかしい」


「家でもしない癖に何を言ってるんだか」


「家では抱き着くぐらいはするだろ……」


 周りがニヤついている。

 愛理さんに会話を誘導された。


「にしても男子は目のやり場に困るよな」


「京一それは直接言う物じゃないぞ。そして彼女の前で言うことでもないぞ」


「いてぇ」


 京一が千郷に頬をつねられていた。


「でも、私は紀里ちゃんと愛理ちゃんの間に挟まれたい」


「京一、千郷ってこんな奴だったか」


「意外とスケベだぞこいつ」


「まじか」


 今まではこうなんていうか別にそういうことを喋らないタイプの人間だと思っていたが、実際そうではなかったらしい。


「樹さんは挟まれたいですか?」


「愛理さんはまだしも紀里は……」


 当のご本人はこちらをにらみつけている。


「ほら紀里があんな目で見てくる」


「良かった、樹さんがきーちゃんにも挟まれたいとか言ったら、その言葉言ったこと一生後悔させるところでした」


 表面上は笑顔でいるが、愛理さんの目の奥が笑っていない。

 冗談でも言わないで良かった。

 まあでも何気、俺が挟まれたいって言っても愛理さんは許してくれそう。

 なんなら紀里だったら喜んでさせそう。


「まあ紀里ちゃん美人過ぎて、お姉さんが昔の制服着たみたいな感じだけどね」


 千郷が全員思っても言ってはいけないという思いで言ってなかったことを言った。

 そう、愛理さんはまだ年相応な感じがするのだが、紀里は本人が大人っぽ過ぎるせいで、見えてしまうのだ。

 言い換えれば年食ってる人が無理して制服着ている。

 まあこれはこれで色々と理性的な物が吹き飛ぶのだが、冗談でも本人に言ってはいけない。


「千郷、あとでゆっくりお話しすることになりそうね」


「あ……」


 放課後の生徒会室が楽しみだが、俺はバイトがある。

 残念な気持ちを抑え、昼休みを終えた。






 放課後

 ちなみに愛理さんは生徒会室が面白くなりそうなので、そっちへ行った。

 俺も生徒会室のほうに行きたかった。

 バイトに来たが、錬弥さんが俺に働かせる気があまりないのか、それとも仕事が少ないのか分からないが、楽ではあった。


「このままじゃ給料泥棒に……」


「樹君が仕事を終わらせるのが速いだけなんですよ……ちょっと関係ない仕事も今度分けておきますね」


「それは話が違う」


 しかし、本当にこのままじゃ給料泥棒になりかねないので、もう少し仕事が欲しい。

 仕事は少ないほうがいいという考えは万歳だが、あまりにないと不安になる。

 事前に聞かされていたので、店閉めが終わる前に愛理さんを呼んでいた。


「愛理さんです」


「雪上愛理です。この間はお世話になりました」


「はぇー……べっぴんさんだぁ。あ、私、金栗双葉、よろしくね」


「銀鏡翡翠です」


 愛理さんが俺の腕に抱き着いてくる。

 なんとなく意図を感じ取ったので、愛理さんに小さな声で話した。


「この二人、多分錬弥さん狙ってる」


 俺が愛理さんの耳元でささやくと愛理さんは腕に抱き着くのをやめて俺の手を握った。

 これは独占欲の現れではない。

 俺の手綱を握ってるぞという合図だ。


「店閉め手伝うからちょっと待っててくれ」


「あ、いいよいいよ。愛理ちゃんと居なよ。どうせ、もうやることあまりないんだし」


「樹君にやらせるとすぐ終わるだけであって、別にやることがないわけではないんですけど」


「え、そうなの。ごめん、手伝って」


 こうなる気は若干していた。

 というかなんか愛理さんに働いているところ見られるの少し恥ずかしいな。

 こうなんかずっとむず痒いって言うかなんというか。

 しかもずっと愛理さんがにこにこしながら見守ってるのが余計に。

 しかし、愛理さんを待たせるわけにもいかないので、俺は全力で店閉めを手伝い終わらせた。


「よっしゃ行くぞー!酒だー!」


「こんなみっともない大人にならないでくださいね。二人とも」


 あのみっともない大人の末路が黒瀬さんだと思っている。

 堕ちるところまで堕ちる、最も人間らしい欲にまみれた人間はあの人ぐらいだと思っている。


「依存するもの樹さんぐらいなんで」


「それはそれで……まあ一途ってことかな」


「その言うのもなんですが、樹君って愛されてるというか飼われているというか……」


「あながち間違いではない」


 愛理さんの握る手の力が強くなった。

 愛理さんに飼われるのなら本望だけどな。

 養ってくれて、一途に愛してくれて、飯も美味いし、優しいし。

 よくよく考えたらこのままだと俺もみっともない大人の一例になりそうだな。

 とは言っても世間で言われるのとは、少し違うみっともない大人だけどな。

 居酒屋につき、早速大人組がビールを頼み始めた。


「ちなみにみっともない大人になるなとか言ってた翡翠が一番酒カスだからね」


「うるさいですねぇ……酒は生命の源なんですよ」


「とか言ってる金栗さんもなかなかの酒豪ですよ」


 ちなみに錬屋さんは酒癖が悪い。

 俺が中学の頃錬弥さんが荒れて酒を飲んでた時は酷かった。


「もしかして、私たち介護要員……」


「タクシーに詰めれば問題ないぞ」


 RIVEAにいた頃学んだことの一つだ。

 こういう大人を介護すればするだけ損しかない。

 タクシーに詰めて帰らせれば、大体なんとかなる。

 何とかなるというよりも責任放棄が正しい気もするが、それはまあ仕方のない事だと割り切ろう。

 早速一杯目が来た。

 そして、銀鏡さんのジョッキの中身は一瞬でなくなった。


「ぷっはーっ最高です。店員さんおかわりー!」


「まじかよ……」


「ね?言ったでしょ」


 俺が見てきた中で一番ジョッキの中身がなくなる速度が速かった。


「ほら、二人も頼んでいいんだよ。どうせ錬弥が払うんだから」


「大人三人で割り勘ですよ……まあ二人からしたらはした金でしょうが……」


「じゃあ」


 適当に選んでまとめて注文した。


「仕事のくそつまんない話はいいから、私は愛理ちゃんの話聞きたいなー」


「キャバ嬢の客かよ」


「樹君との馴れ初めはー?」


「錬弥さん話してないのか?」


「ええ、樹君が話したものだと……」


 どうやら金栗さんと銀鏡さんは俺と愛理さんの間柄を聞いていないらしい。


「許嫁だ」


「……金持ち?」


「愛理さんは特にな」


「雪上……雪上……あ、雪上財閥ってありましたよね」


 俺と愛理さんと錬弥さんは無言で頷いた。

 金栗さんと銀鏡さんがジョッキ片手に動かなくなった。


「え?マジ?」


「マジマジのマジですよ」


「酔い覚めたって、というかお嬢さんがこんなとこ来ちゃダメでしょ」


「庶民派なんで」


 確かに言動は庶民派かもしれないが、家柄は庶民と真逆にある。

 銀鏡さん飲むスピード速くなってないですか。


「樹君にも敬語使わないとですね……」


「金栗さんの敬語ほど似合わないのないな」


「あはは~言うねぇ、まあ私も敬語なんて使いたくないね」


 やっぱりこう他の人の反応を見るとやっぱり雪上家って関わったらいけないような家系だよな。

 金持ちの中の金持ちだもんな……

 そしてそこの一人娘が、居酒屋でキャッキャしてるなんて話誰も信じないし、雪上家からしたら頭痛くなる案件だろ。

 まあ俺が連れてきたようなものだから、飛ぶのは俺の首だけどな。


「黙々とビール胃に流してる人いるけど、」


「素面じゃぁ、雪上家の人と話せませんよぉ」


「まあうちがここまで大きくなったのも雪上家のおかげですし、まずまず店が建てられたのは樹君のおかげですし……お二人には頭上がりませんよ」


 まあ別に俺は特に何もしてないんだけどな。


「にしても樹君は超優良物件を見つけたわけだ」


「見つけたというか、用意されてたというか……」


「そうですよ、私超優良物件なんですよ。顔良くて、胸大きくて、養うことできて、優しい私が居るんですから」


「自分で言うのはどうかと思うぞ」


 まあ実際本当に超優良物件だけど。

 優良物件だけど怖いところあるからな……


「樹さん変なこと考えてませんか?」


 愛理さんが俺の顔を覗き込んでくる。


「あ、ほら愛理さん飯食おう」


「樹君、誤魔化し方下手じゃない?」


「愛理さんのちくちくほど痛い物はない」


 本当に。

 愛理さんからは横目でにらまれているが、事実なので仕方がない。

 特にこうやって俺の考えているところを完璧に当ててくる辺りとかな……

 冷や汗が止まらない。


「いいなぁー私も金持ちに養ってもらいたいよー」


「毎日お酒飲んで寝たい」


「二人ともだらしないですよ」


 錬屋さんが二人のことを諫めているが、俺には刺さる。

 愛理さんが風邪ひいたときしか家のことはやらないし、ずっと愛理さんに甘えてばかりのだらしない生活なんだよな。

 まあ愛理さんがそうさせてくるのだが……


「そういえば三人のご関係は?店の従業員という割には仲が良く見えるので」


「大学時代の先輩、後輩。私と翡翠が後輩で錬弥君が先輩ね」


「金細工だけでなく、金属加工とかその他諸々と一緒になりましてねぇ……」


 三人とも懐かしく思っているような素振りを見せた。

 というか大学時代の錬弥さんってだいぶ荒れてる頃じゃないのか?


「大学の時の錬弥さんって……」


「あ、そっか樹君は荒れてる錬弥君知ってるわけか」


「勘弁してください。もう黒歴史ですよあれは……」


「大学で翡翠と一緒に居たらナンパされたの覚えてるよー」


 金栗さんの言葉を聞いた錬弥さんも現実逃避するかのように酒をがぶがぶ飲み始めた。

 まずい……


「錬弥さん酒癖悪かった記憶が……」


「間違いないねぇ……」


「……うっさいでぇ、双葉ぁ」


 店主になってから口調を変えたと言っていたが、酒癖の悪さは直せていないらしい。

 口調も変わって、ダルがらみが増える。


「愛理さん人というのは酒で簡単に変わってしまうんだ。ほらあんな風に」


「双葉ぁ、あんま昔のこと話すんじゃねぇ」


「自分からボロ出してるよ。まったく酒癖の悪さは相変わらずだわ」


「酒は飲んでも飲まれるなって言いますけどぉ、錬弥君は酷いですよねぇ」


 そう言っている銀鏡さんもだんだんと言葉の節々で酔っている喋り方に変わり始めているんだよな。

 金栗さんがまだ平然を保っているが、いつ崩れるかもわからん。


「樹ぃ、はよ結婚しないんか」


「うるせぇ、まだ年齢も足りんわ。お前も相手さっさと見つけろって」


「あぁ?いないんや、相手が」


 周り見ろって少なくとも二人いるって。

 モテる奴は罪だ罪。

 銀鏡さん嫁さんにしたほうがいいと思っていたが、酒カスと酒癖の悪い奴合わせたら相性が悪いので錬弥さんは相手、金栗さんにしたほうがいいのではと思い始めていた。


「錬弥くーん?二股かけた女二人ともここに呼んでるくせに何をいってるのかなー?」


「え……錬弥さん二股……」


 まさかの事実が発覚した。


「あーあかんわ。そないなこと忘れてしもたわ」


「酔い覚めてるやんな」


「樹君、二股はやめたほうがいいですよ」


「樹さんはしませんよね?」


 愛理さんが微笑みをこちらに向けたが、俺は苦笑いをするほかなかった。

 地獄の雰囲気を作りたくないので、愛理さんが居ようが居まいがするつもりはない。

 愛理さん居るのに二股をしたその時は多分俺の名前が日本から消える。

 そして良く分からない暗くて、寒くて、冷たい床の場所にぶち込まれて、一生そこで暮らすことになるだろうな。


「二股したら人として過ごせなくなるだろうから絶対にしない」


「分かってるじゃないですか」


「愛理ちゃんって独占欲が強いタイプ?」


「独占欲と金で殴ってくる一番逃げられんあかんタイプ」


 ちゃんと愛理さんの言うとおりにして、愛理さんを愛して、普通にしていれば何も問題はない。

 普通にしていればな……


「にしても錬弥さん二股かけてた人、自分の店に入れるってどういう神経してるんだ。というか金栗さんと銀鏡さんに関しては……あ、あー……なるほどな」


 まあ二人の今の近況を考えるに、忘れられんかった系か。


「勝手に察しないでください」


「酔っぱらった勢いで誘われたんだよね」


「もう飲まへんわ」


 そう言いながら錬弥さんは酒をどんどん流し込んでいく。

 思ったよりこの三人の関係面倒くさそう。

 というか思っていたより錬弥さんがカス人間だった。


「愛理さんこんな大人になったらだめだからな」


「なんでこう周りの大人全員ダメ人間なんですかね」


「それはそうだな」


 俺は頷くしかなかった。

 REVIAもそうだし、この三人もそうだし……酷いもんだよな。


「さあいきん死ぬほろいそがしいのなんなんですかぁ」


「呂律周ってないな」


「樹君のせいやでぇ、しごとのまわりが早いんやぁ」


「ほんま、堪忍や」


 とうとう仕事が忙しいことが俺のせいになったぞ。

 金栗さんも酔いがだいぶ回ってきている。

 俺と愛理さんでゆっくりと飯を食べている間に、三人はさらに飲んで完全につぶれた。


「どうする?」


「タクシー呼びますね」


「わかった。俺は錬弥さんの家どこか聞くわ」


 愛理さんがタクシーを呼びに行き、俺は錬弥さんの肩を叩いた。


「おーい、家どこ」


「あぁ?んなもん、あそこに決まっとるやろぉ……」


「鞄漁るぞー」


 俺は錬弥さんの住所が書いてある物を探した。

 免許証に書いてあるよな?

 免許証を探した。


「あーあった……割と近くなんだな」


 歩いて行ける距離ではあるが、この酔っ払いどもを歩かせて、行かせるには少し遠すぎるかもしれない。


「呼びましたよ」


「ありがとう。さて、会計は……まあ俺がしてくるわ」


「私がしましたよ」


「しごできか。すまん、今度金返してもらうから」


 愛理さんの仕事が早い。

 愛理さんって本当にお嬢様かって疑うくらいにはこう人としてできているというか社会経験があるというか、まあとにかく優秀過ぎる。

 まあsiveaの連中を相手していると考えればなんとなく分からないでもないのだが。

 タクシーが来たので、三人無理矢理詰め込み、錬弥さんの家にまとめて送った。

 愛理さんがもう一台呼んでくれていたので、俺と愛理さんはそれに乗って帰った。






 家に帰ってまず風呂を沸かした。


「お風呂湧くまで、話したいことがあるんですけど」


「ん?なんだ?」


「ちょっと色々と用事が詰まっているので、一回まとめたいなーって思ったので」


 取り合えずカレンダーを持ってきた。

 スマホのカレンダーでもいいんだが、日常的に目につく物といえば壁掛けのカレンダーだよな。


「まず七月の予定は、まあ私の収録ぐらいなんですけど」


「東京か?」


「そうですね……樹さんどうします?」


「バイトかもな……」


 付いて行きたいのはやまやまなんだが、オルフェーヴルのほうが忙しいらしく客が来るのならそっちにいかないとかもしれない。

 指輪もそろそろできるとか言われたし、取り合えず手伝えるだけ手伝いたい。


「じゃあ、私一人でめそめそ行ってきます」


「すまん」


「気にしないでください。で、次なんですけど、八月のお盆前に社交界ですね」


 愛理さんの言った日付に社交界と書き込んだ。


「どこでやるんだ?」


「今年は……こっちでやるみたいですよ。毎年場所変わるんですけど」


 まあなので色々と準備したり移動したりはそこまで考えなくていいとのことだ。


「で、社交界とお盆の間の休みにsiveaのライブがありますね」


「結構規模でかいんだろ?」


「よくそこまで広げたなぁとは思うぐらいですね」


 かなり手の込んだイベントになるということだな。


「で、お盆はじいちゃんの家行くけど、愛理さんは?」


「行きます!絶対に!」


 かなり食い気味だが、なんでだ?


「お盆明けすぐにコミケですね」


「大変だな。じいちゃんの家泊まるの今年はいつもより短くするか」


「用意とかは全然気にしなくていいんですけど、疲れるようだったらそっちのほうがいいかもしれませんね」


 俺はカレンダーに予定を書き込んでいった。


「で、コミケが終わったら海行きませんか?」


「海か。急になんでだ?」


「今日生徒会室に皆で集まって海行かないかって話になったんですよね」


「じゃあ、行くか。愛理さんの水着見たいし」


 愛理さんの水着なんて見たら俺頭おかしくなるけどな。

 夏休みの中でも一大イベントになった。


「あとは……九月に文化祭、とイベントがちょっとありますね」


「まあ文化祭が大変か」


「そうですね……」


 愛理さんが規模広げたんだけどなと思いつつカレンダーに書いた。


「十月は、私と樹さんのイチャイチャライブ」


「誰も見ないだろ……」


「チケット完売しましたけど」


「???」


 いつの間にかチケットを売られていたことはどうでもいい。

 チケット完売ってなんだ?

 俺と愛理さんがただ喋るだけのライブがチケット完売?


「あ、分かった、そこまで広くない会場か」


「一万です」


 俺は愛理さんの言葉が幻聴になって聞こえる病気にでも罹ったのか。


「よし、今は忘れる。十一月って修学旅行ぐらいか?」


「そうですね。京都に……行きたくないです」


「なんでだ?」


「修学旅行は楽しみなんですけど、京都は天文字家がいるので」


 天文字は確か財閥家のまとめ役みたいな感じだったか。

 まあ上のナワバリに入って何もなしで帰るなんてことはないだろうな。


「十二月は何かあるか?」


「クリスマスイブに視聴者の脳を破壊する配信でもしようかと」


「愛理さん?」


「で、配信終わったら樹さんと二十四時間セックスしてだらだらします」


「愛理さん?」


 愛理さんが恐ろしいことを二連続で話した。

 で、そのあとに愛理さんの誕生日が待っているとか考えると恐怖以外の何物でもないのだが。

 愛理さんは随分と嬉しそうにしているが、俺は恐怖に怯えているぞ。

 カレンダーには書き込まなかった。


「い、一月は?」


「樹さんメインのくそでかライブです」


「まじでやるの?」


「呼べる人は全員呼びました。企業も呼びました。楽しみですね」


「恐ろしい」


 人望も財力も使えるものは全部使ってやろうの精神なの怖い。

 しかし、これは変えようがない予定なので、カレンダーに書き込んだ。


「二月、三月はまだ特に決まってないことが多いので、これぐらいですかね……十二月書いてないですよ」


「ん?愛理さんの誕生日って書いたけど」


「その前のクリスマスですけど」


「死にたくない」


「生かさず殺さずですよ樹さん」


 一番質の悪いやり方を選んできたよこの人。

 愛理さんが俺からペンを取り合げ、クリスマスのところに書いてしまった。

 絶望に打ちひしがれていると、風呂が沸いた。


「樹さん一緒に入りましょうよ」


 愛理さんが無邪気に誘ってくるが、最近俺は理性に限界を感じている。

 指輪渡したらもういいんじゃないかと考えているぐらいなんだ。

 この状態で愛理さんの素肌なんて見たら指輪渡す前になってしまう。

 ということで、適当に言って一緒に入るのはやめた。

 愛理さんが先に入り、俺はあとから入った。

 風呂から上がり、寝室に行くと愛理さんがゴロゴロしていた。

 ゴロゴロという言葉通りベッドの上を転がっていた。


「樹さん胸に顔押し付けませんか?」


「急にどうした?」


「いやー私ときーちゃんで千郷ちゃんのこと挟んだんですけどだいぶ良さげな表情してたんで樹さんにもしたいなぁって」


「愛理さんと紀里ってそのまあ贅沢だな」


 まあ結局俺はその誘惑に負け、愛理さんの胸に顔を埋めて寝た。

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