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第三話 お芋のスイーツを楽しみます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークと☆☆☆☆☆を★★★★★にお願いします。


よろしくお願いします


「それって、奴隷とかって言う事か?」


異世界転生ものではよくある話だ。

奴隷とかでハーレムを築いてく主人公。

だが、実際に自分がそうなると判断や理解に苦しむ。

俺は基本的人権を一人ひとりが平等に保有することを許され、義務とする国の出身だからだ。


「いえ、国際条約で一般奴隷に対しても最低限の人として扱うことが決められています。ですが、この契約により、私は物になりました」


「つまりはもっと下の扱いになると」


「はい」


どうやら、事態はもっと深刻なようだった。

そうか、一国の姫様がそんな状態になるのは確かに国としても認めることはできないだろう。

もし自分の家族がそうなったら俺だって憤慨する。

あの国王の態度はどうかと思うが。


「すまない。状況がちゃんと理解できていなかった。すぐにでも契約を破棄しよう」


「かしこまりました」


抑揚のない言葉でシェリアが頭を下げる。


「それで、契約の破棄ってどうすればいいんだ?」


「分かりません」


は?


「いまなんと?」


「分かりません」


「え、え~」


普通こういったものを扱う人間は最悪の事態を想定して、色々と知識を蓄えておくものなのではないか?

思わず頭を抱えそうになったが、でも最悪二週間後にはどうかなるだろう。


「あの禿げた宰相に聞けば大丈夫か」


「いえ、ブッフケは分からないと思います」


「え? 頭よさそうだし、知ってそうじゃない?」


「もし、医者に料理を教えてもらおうとしても、一般人と同じ事ぐらいしか知識は無いと思います。そういう事です」


「そう、か」


あれ?

そうなると、契約を解消できないのなら二週間後元の世界に返してもらうことができない。


「なんとしても、二週間以内に契約解消法を探すぞ」


「はい」


その為に、まずは。

まずは……。


「何をすればいいと思う?」


「私が提案できるのは二つです。城の中にある書庫から方法を探す方法と誰かに教えてもらう方法です」


「でも」


「はい、今の状況で城に戻るのは止めた方がいいかと。お父様がお怒りだと思いますので」


そうですよね。

あの時は国王の態度がひどすぎて頭に来てしまい、こちらもクソジジイを刺激するような物言いになってしまったが、腹が満たされて改めて思い返してみるとあそこまで言う必要はなかったように思う。

うまく話せていたら、今頃は帰れていたかもしれないのに。


「後悔先に立たずとはよく言ったものだ」


「それはどういった意味なのでしょうか?」


「え? ああ、過ぎたことをいくら後悔しても意味がない、取り返しがつかないって意味だったと思うが」


「そうなのですね」


そうだな。

後悔してても意味がない。

まずは契約を破棄する方法を探す。

そして、せっかくお金もたくさんあるんだ。

この際楽しむとしよう。

でも、その前に


「決めておきたいことがある」


「はい? なんでしょうか」


「シェリアが以前なら嫌がっていたことは言ってくれ。出来るところは譲歩するから」


さすがに元々お姫様なら色々と今の状況で我慢している事も多いだろう。

感情を前に出せない今の状況は彼女にとってかなりのストレスになってるはずだ。


「かしこまりました。では、まず。以前の私は男性があまり好きではありませんでした」


「ごめん、女にはなれない」


「後は旦那様を召喚獣と見下していたので、一緒の食事も嫌がっていたかと」


「ご飯は別々にしようか」


「他にも、毎日マッサージとエステは欠かせなかったと」


「……。もらったお金で、足りる範囲でお願いします」


そうね。

お姫様とかそういう所大変だよね。

女性だもの。

ちょっと、自分で言った事なのにすでに後悔しそうだ。


「旦那様、止めましょう」


「ん?」


「今の私は感情を前に出せない分、常識というものをベースに対応させていただいております」


「そう、なのか?」


「はい。そして、この状況は昔の自分を客観的に見ることができる状況でもあります。その上で言わせていただければ、以前の私は常識を持ち合わせていても自分優先、楽しむ事優先で他人を顧みる事のしない心の弱い人間でした。その上、むしゃくしゃしたり、欲しいものを買うのに国のお金を使う前にブッフケに止められた時に、ストレス発散とお小遣い稼ぎにあなたを使っていました」


「それは」


「あなたに対してだけではありません。他の人にも沢山ひどいことをしてきました。以上の観点から私は私自身が元に戻る事を旦那様にはお勧めできません」


「なあ、シェリアこそ止めよう」


「はい?」


先程からシェリアは淡々と自分の意見を口にする。

そして、俺の言葉に首を傾げている当たり気づいてないのだろう。


「そんな辛そうに、自分を否定するのは止めた方がいい」


「え?」


ずっと、苦しそうな顔で泣きながら自分を否定する言葉を口にするのを見てはいられなかった。


「言い分は分かった。でも、シェリアは女性だ。男の俺では分からないところで無理させてしまうかもしれない。だから、君の言う常識の範囲内で必要なことは言ってくれ」


「旦那様はお人よしすぎなのでは?」


「は?」


「以前の私の行いはそれこそ、先ほど仰られた奴隷に対する扱いよりも何倍もひどいものでした。あなたが傷つき、血を吐き、涙する姿をほくそ笑んでいたのですよ。そんな相手に」


そう言う事か。


「確かに、何度も復讐してやろうとも思ったし、許せないことも多い。でも、飯食って、冷静になったら、そんなことするぐらいなら、帰ってゲームしてた方がいいって思って」


「げーむ? ですか。トランプとかの?」


「そういうのじゃないんだ。何といえばいいのか分からないが、俺の世界のゲームは面白いぞ」


「そうですか」


納得はしてないようだ。

だが、俺の言葉を聞き入れてくれるようだ。


「それじゃあ、まだ日は高いし情報収集と行こうか」


「そうですね」


俺達はご飯を平らげると六角亭を出るのだった。

お金はシェリアに持たせているので払ってもらう。

その時、六角のおばさんが冷めた目で俺を見ていた。

そう言ったところは俺の世界の常識と同じなのね。

グスン


「さて情報収集といったものの、どういった方法でこの世界は集めるのが常識なんだ?」


「ギルドなどに依頼するか、情報屋にお金を払って集めますが、後者は基本一見様は拒否される可能性が高いです。ギルドに行くのがいいかと」


「そうか、それじゃあ、案内を頼めるか」


「はい」


賑やかな商業街から少し離れた所に大きな建物が並ぶ通りがあった。

商業街はレンガ造りの頑丈そうな小さい店が多かったが、ここいらの建物は木造で少なくとも三階以上はあるような建物が多かった。

しかも、厳つい男たちが多くなってきた。


「ここの辺りがギルド街になります」


「なんか街並みが全然違うんだな。建物の造りも全然違う」


「そうですね。商業街のお店は基本賃貸で、潰れたとしても次のお店が入れるようになっています。その為、何十年も使えるように頑丈な造りになってますが、ここら辺は、その。荒くれ物が多いので」


「壊れてもすぐ治せれる木造が多いと」


「レンガよりも木材の方が安いですしね」


なるほど。

用途によって違う造りをしているのか。

異世界の街並みを物珍しく見回していると、ひときわ大きな建物の前でシェリアが止まる。


「ここがこの国一番のギルドですね」


「そうか」


大きな看板が掛けられているがなんて書いているか分からない。

俺はシェリアに進められるがまま、中に入るのだった。

中は人がごった返していた。


「どうすればいいんだ?」


「私がカウンターで聞いてまいります。旦那様はお待ちください」


俺はとりあえず併設されている酒場の椅子に座った。


「注文はどうされますか?」


「え?」


いつの間にかお姉さんが注文を取りに来たのだ。


「ここに座ったって事は何か注文されますよね」


「え? あ、ああ」


そういうシステムなのだろう。

だとすると、何も頼まないのはルール違反になるかもしれない。

でも、さきほどご飯を食べたばかりだ。


「適当に甘いものと、飲み物をもらってもいいですか?」


「え!? あ、もしかして、ギルドの冒険者じゃ」


「ないです」


「も、申し訳ありません」


お姉さんが急に謝りだしたのだ。


「何か問題でも?」


「いえ、冒険者以外の人はここはあまり利用されないので」


「そうなのですね。でも、なんで俺が冒険者じゃないと?」


「言葉遣いが丁寧でしたから」


なるほど、荒くれものならもっとぶっきら棒なしゃべり方をするのが多いのだろう。


「でも、なにか注文します。お姉さんのおススメを頂けますか?」


「かしこまりました」


そういって、奥へ入っていったお姉さんは物の数分で戻ってきたのだった。

そこにはカップに入った冷たそうな球が乗っていた。


「アイスか?」


「あいす、ではないです。カンコロって言うデザートです」


「そうなんだ」


一口食べると冷たさと甘さが俺の知るアイスそのものなのだが、どうも舌触りが少し違うような。

何かに似ている。


「ああ、もしかして芋が入ってる?」


「はい、果実と芋とミルクを入れて滑らかになるまで混ぜ合わせて作るんです。氷魔法で冷やすと更においしくて」


そうか、これスイートポテトに似てるんだ。

冷やしてある表面がサクサクしてるのに舌に乗せるとミルクが溶けて口の中に甘さが広がる。

それでいて、芋も入っているのでお腹にたまりやすい。


「おいしい」


「ホントですか!? それ私が作ったんです!」


「へえ」


二口目を口にした時だった。


「やめてください」


声の方を向くと、甲冑を着こんだ男がシェリアの腕を掴んでいたのだった。


「おまえら、王族のせいで!!」




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