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第二話 アルブレッド王国六角亭の味を楽しみます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークと☆☆☆☆☆を★★★★★にお願いします。

よろしくお願いします。


俺はシェリアと王城を出て少し経った。

いたるところからいい香りがする。

元々の世界では夕食を食べる前にこちらに飛ばされてしまったので腹ペコだった。

お金もあるし、さっそくご飯を食べるとするか。

……


「シェリア、文字が読めない。あれはなんて書いてあるんだ?」


「あれは六角亭と書いてあります」


「……。何屋さん?」


「食堂です」


「何がうまいのかな?」


「すみません。以前の私ですと、下民の食べ物など汚いと食べたことが無かったので、何のお店かまでは分かりません」


「そうか」


ん?

こいつ、今以前とか言ったか。

元の世界であった時から今までのこいつとは全然態度が違うと思っていた。


「なんで、そんなに性格が違うんだ?」


「契約の能力によるかと」


「その契約ってやつも聞きたいが、その前に飯にしよう」


俺達は六角亭に入るのだった。

なぜ六角亭と呼ぶのか、それは入るとすぐに分かった。


「いらっしゃい!」


元気よく挨拶してくれたおばさんの頭には小さいが六本の角が生えていたのだ。

たぶん自分の身体的特徴を店名にしたのだろう。

だが、それ以上にこれこそ異世界人といった光景に心躍った。

おばさんだけでなくご飯を食べている人のほとんどが普通の人間とは違ったのだ。

異世界物の定番である体の一部が獣の人や二回りも普通の人間より大きく岩の様に皮膚が固くなった人間、それに鳥のような翼が生えた子までいる。


「あの子って天使か何か?」


「いえ、あれは有翼人です。たぶんハーフか何かで、ほとんど人間なのに翼が生えているのでしょう」


「すげえ、異世界だ。異世界だよ!」


「旦那様には確かに異世界ですね」


ここに竹内もいたら共感できる仲間がいたのに!

どうして、玄関なんかで警察を呼んでたんだ。

って、俺が呼ぶように頼んだのか。


「最高に興奮してるよ!」


「では、下のお相手しましょうか?」


「ごめん、シェリアをそういう目で見れない」


ちょっと前まで恐怖の対象でしかなかった。

それを性格が変わって、旦那様呼びするようになったからって、簡単に変わるものではない。

それに、最初は好きな人って決めてるし。


「席に座んないのかい?」


「ひゃい! す、座ります!」


突然、おばさんに話しかけられて思わず悲鳴を上げてしまった。

とりあえず近くの席に座る。

そして、シェリアは俺の後ろに立った。


「なんでそこにいるの?」


「旦那様と同じ席で座るのもどうかと思うので」


「いや、座ってよ。周りから浮いちゃうから」


「かしこまりました」


俺はテーブルに立てかけてあるメニューを見る。

だが、案の定読めなかった。


「シェリア、とりあえずお肉メインで頼んでくれない?」


「はい、お肉は豚、牛、鳥、ビックワームのどれにしますか?」


「……ちょっと待って、ビックワームって虫だよね?」


「はい、そのカテゴライズで間違いないかと」


そうか、この世界では虫を食べちゃうのか。

日本でも蜂の子やイナゴなんかを食べる地域もあるけど、正直無理だ。

現代っ子ですから虫なんて触れないし、黒光りする系の虫は見るのだっていやだ。


「ゴメン、虫は無理」


「そうですか、ではビックワーム以外で頼みますね」


そう言っておばさんをシェリアは呼ぶといくつか頼んでくれるのだった。

これで、ご飯の心配はないだろう。


「それじゃあ、ここまでの経緯について説明してくれ」


「どこからにしますか?」


どうせ、知らなくてはいけないことが多い。

なら、すべて聞いた方がいいだろう。


「最初からだ。俺を呼ぶことになった理由から」


「はい、旦那様を最初に召喚したのは偶然の出来事でした」


「シェリアの意思とは関係なかったって事か?」


「その通りです。私には魔法の、特に召喚系の魔法の素質があることが分かりました。そこで、適当に召喚してみた結果、旦那様を引き当てたのです。そして、契約して私の専属召喚獣として働いてもらっていたのです」


かなり運が悪かったのだろう。

それで、何度も呼ばれてしまったのか。


「契約ってのは?」


「魔獣や魔物を従える時に行うものです。本来は召喚した獣等に対して食事と寝床、それに召喚士の魔力を提供することで契約が成立します。しかし、コミュニケーションが取れ、自分の意思がはっきりしている召喚対象にはそうはいきません。旦那様の様に欲しいものを聞いて、それを与えることで契約が成立します」


「百万円が欲しいって言ったと思うのだが」


「すみません。そのヒャクマンエンなるものが何かが分かりませんでした。ですが、王族なので金でどうにでもできるだろうと思ってました」


あの親にしてこの子ありだな。

国の金を自分のものと勘違いしてる。


「それで、ヒャクマンエンとは?」


「俺の世界の金の単位だ。かなり高額の」


「そうでしたか」


「はい、おまち」


ちょうど話の区切りがついたところで食事が届いたのだった。

まずはお肉がゴロゴロ入ったスープを一口飲む。


「思ったよりあっさりしてる。鳥のもも肉か? 味はコンソメに近いかもしれない。でも、ちょっと塩気が薄いような」


「アルブレッド王国は内地にありますので、塩が高いのです。そのせいで味が薄いのかと」


「なるほど」


でも、肉と野菜のうまみが出ていて嫌じゃない。

お肉も簡単に嚙み切れてしまうほどに柔らかかった。

じっくりと煮込んだのだろう。


「次はこの串肉を」


今度は牛の肉の串焼きだ。

シンプルに焼いた香ばしいにおいが空腹を掻き立てる。

それに何やらソースがかかっている。

一口食べると思ったよりもフルーティな味わいだった。

果物特有の甘さを感じるが、お肉の方にしっかりと下味がついていて絶妙なバランスを保っていた。


「うまい」


俺は次々に口に運んでいく。

だが、シェリアは一切口にしなかった。


「なんで食べないんだ?」


そう、問いかけて思い出した。

下民の食べ物は汚いとかなんとか。

そんなにこいつらはいいものを食ってるって事か?


「旦那様と食べるわけにはいきません。私は旦那様の食べ残しを頂きます」


「……なんか、すまない」


「何がですか?」


「いや、何でもない」


俺は自分の考えが恥ずかしくなった。

それに、一人で食べるのも味気ない。


「シェリアが嫌じゃなかったら、一緒に食べよう」


「いいのですか?」


「もちろん」


俺がそう言うとシェリアは串肉をとり、綺麗に外し、一口大に切ってから口にするのだった。

その姿を見てシェリアはいいとこのお嬢様どころか、お姫様なのだと理解するのだった。


「なあ、契約破棄したいか?」


「えっと、どうでしょうか? 分かりません」


「おいおい、自分の意思はないのか?」


「はい。私は契約により身も心もあなたのです。そこに私の意思はありません」


「は? それってどういう」


「憶測になりますが、数刻前に旦那様との契約が満了しました。そして、その代価を払うことになったのですが、残念ながら私自身が千回目の戦いだとは認識していませんでした。また、いつもの様に金目の物を持っていなければ諦めて帰ると思い、何も持たずに旦那様を召喚しました。その結果、私は払うものが自分しかなく文字通りすべてをお渡ししたのであります」


その言葉に思わず背中に嫌な汗が出てきたのだった。









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