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第一話 異世界転生を楽しみます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークと☆☆☆☆☆を★★★★★にお願いします。

よろしくお願いします。


「ここまでくれば大丈夫、か?」


竹内は息を切らせながらそうつぶやいた。

こんなに走ればいつもであれば竹内みたいに息を切らしていた。

だが、生き一つ切らせずに「すまない」と竹内に謝っていた。


「どういうこと、なんだ? あんなの、アメコミのヒーローでしか見たことないぞ」


「俺も意味が分かんない。大ケガを覚悟して飛び込んだら、あんなことになって」


「信じられねえよ。でも、目の前で実際にお前が。だけど……」


興奮気味だった竹内は大きく息を吸い込み、吐き出した。

そして、地面に倒れ込んだ。


「意味わかんねえ。でも、安藤が無事でよかったよ」


「心配かけた」


「ホントだよ。痛みは無いのか?」


「それは大丈夫だ」


傷もないし、痛みもひかれたあの瞬間だけだった。

今は痛みも何もない。


「あれ? 竹内、ひじ」


「え? ああ、いつのまに」


いつの間にか擦りむいたのか竹内のひじは血がにじんでいたのだ。

だが、それを治療できるものは無い。


「もうすぐ俺の家だし、寄ってけよ。救急箱もあるし」


「そうだな」


俺の家はマンションの一室にある。

ついでに言えば母子家庭で、母さんと俺の二人で暮らしている。

母さんは広告代理店で働いていて今日は先方との打ち合わせで帰りが遅くなるって言っていた。


「あれ? 開いてる」


鍵を開けようとしたが既に扉が開いていた。

予定が変わってもう帰ってきているのだろうか?

だが、玄関を見ると母さんのヒールが無かった。

仕事の時は必ず履いて出る。

それがないという事はまだ帰ってきてないのだ。


「泥棒かもしれない」


「分かった。警察に電話するよ。って、おい」


俺は玄関に置かれ埃をかぶったままの中学の頃に修学旅行で買った木刀を構えて中に入っていった。

中から物音が聞こえる。

どうやら誰かいるのは間違いないようだった。

足音がしないようにすり足で廊下を進んでいく。

そうしている間に不自然なほどの笑い声とコミカルな音が響いてきた。

どうやらテレビをつけたようだ。

それと同時に「きゃっ!」という女性の声が聞こえた。

次の瞬間には何かが落ちる大きな音が聞こえた。

俺は急いでリビングに行く。


「だれ、だ」


「え?」


そこにいたのは夢の中で俺に命令してきた女だった。

しかも、夢の時のまんまローブのようなものを着て、中はきわどい感じの鎧を着ていた。


「おかえりなさいませ、旦那様」


「は?」


他人の空似かとも思ったが、俺が直前殴った後が頬に残っていた。

それに、嫌悪するこの声は五年間聞き続けてきた女の声で間違いなかった。


「なんでここにいるんだよ」


「私は旦那様のになりました」


「意味わかんないし」


「ただ、主従契約が必要です。ここではできませんので一緒に来ていただけませんか?」


「嫌だって言ったら?」


「すみません。もう、向かいが来ているようです」


「いかな


俺は行かないと言い切る前に床が光り、リビングを包んだ。

そして、光が止むとそこはリビングではなく、石造りのおおきな広間にいたのだった。

そこの装飾はどれも煌びやかで、いうなれば中世の城のような造りだった。

だが、それもあながち間違いではないようだ。


「汝が召喚者か」


広間の奥には金や宝石が散りばめられた指輪やネックレス、冠を付けたじいさんが座っていたのだ。

その周りには似たようなおっさんが数人と甲冑を着こみ剣や槍を構える多くの兵士たちがいたのだ。


「連れてきました、お父様」


「そうか、それで汝は何が望みだ?」


踏ん反り返ったじいさんはつまらなそうに俺に聞いてくる。

それに、先ほどからワインや果物を食べながら俺に話しかけてくるのだ。


「感じの悪いじいさんだな」


「な!」


「お前、この方を誰と心得る!」


「知らないよ」


いきなり連れてこられて、名乗りもしないじいさんの事なんざ知るか。


「それよりも、早く元居た場所に戻してくれ」


「無礼者め! こちらが下手に出ていれば調子に乗りよって! ひっとらえ「王よ」


イカレタじいさんの言葉を隣にいたハゲのおっさんが止める。

それに、やはりこのじいさんは王様だったのか。

見かけだけで中身はクズっぽいけどな。


「姫にどのような契約が働いているか分かりません。ここで、機嫌を損ねてしまうのは」


「は?」


俺は横を見る。

俺を操っていた女は綺麗にお辞儀をする。


「こいつ、姫だったのか?」


「私はアルブレッド王国第一王女、シェリア・アルブレッドといいます」


今まで馬車馬のように扱われていただけあってこんなに丁寧にあいさつされると。


「正直、気持ち悪い」


「お前!」


おっと、口に出ていたようだ。

王様が怒りで顔を真っ赤にしている。


「わ、私が話を変わりましょう」


ハゲのおっさんが前に出てくる。


「私は宰相のブッフケ・ロドンゴと申します。つきましては王女様にかけられた契約を破棄していただきたく」


「……契約?」


何のことを言っているのだろうか?

俺の表情にブッフケとじいさんが顔を合わせる。


「すみませんが、召喚された際に何かしらの代償を払うと契約されたとか。それを出し渋ったシェリア姫も悪いのです。ですが、一国の姫が主従関係というのは。まだうら若き女性でもありますし」


「はい。では、代わりに払っていただけると「びた一文払わん」


「は?」


じいさんは酒を飲み干し頬を赤らめて俺に指さした。


「王の命令だ! 今すぐ姫の呪いを解け! そうすれば、苦しまずに殺してやる!!」


俺の中で何かが切れた。

そもそも勝手に呼び出して無理やり戦わせてた姫が悪いのに、謝りもせず、報酬も渡さず、あまつさえ殺すと。


「シェリア」


「はい、旦那様」


「刃物をを自分の首元に構えろ」


「はい」


シェリアはローブの奥に隠してあった短剣を首元に、あと少しで当たる直前まで持ってくる。


「なにを!」


「シェリア、俺が死ぬ瞬間自身で下を噛んで、その上で首を切り落とせ、いいな」


「かしこまりました」


「ひ、卑怯者!!」


愚かなじいさんは俺に文句を言うがそれどころじゃない。

こっちだって命がかかっているんだ!


「俺は元の世界に帰りたい。どうすればいい? 答えなければ「こ、答えます!」


ブッフケが慌てて俺に応える。


「今あなた様が召喚された足元をご覧ください。それが召喚と送還を可能とする魔法陣です。ですが、今召喚したばかりで魔力が残っておらず、すぐに送還することはできません。二週間後くらいには再起動することができるはずです」


「帰れるんだな」


「はい、そうで「ブッフケ! 勝手に答えるでない!!」


「ですが、姫様は」


「く、クソッ!」


帰れるのか。

その事実に安堵する。

転移ものだともう帰れないなんてのはよくある設定だ。


「なら、俺は帰還以外に何も求めない! だが、シェリアを解放すれば俺が殺されるのは明らかだ! なあ愚王!!」


「我を愚弄するが、この下民が!!」


怒りで大声を上げる愚王を尻目にシェリアの手を握る。


「俺は二週間の間、適当に過ごす。それまで遊んで暮らせる金を用意しろ! そしたら、二週間後にここでシェリアを解放してやる」


「生死はは問わん!! そいつをひっとらえ「分かりました!!」


「ブッフケ、お前!」


「こちらで手配いたします。少々お待ちください」


すぐにブッフケがコインが入った袋を持ってきて俺に渡してきた。

俺はそれをシェリアに持たせる。


「出口を案内しろ」


「はい、旦那様」


そして、逃げるように城を後にするのだった。




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