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プロローグ 日常を楽しみます

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「呼んであげたんだから、さっさと戦いなさい!」


俺は今日もこの女に戦わされるのだ。

本当は怖いし、痛いし、戦いたくないのだが俺の首に巻かれた首輪のせいでに強制的に戦わされるのだ。

今日の相手はでかい狼だった。

大きな口からは俺の腕よりも長い鋭い牙が見えていた。


「あれに噛まれたら、痛いだろうな」


「文句言ってないで、戦いなさい!」


彼女はそう言って金色の長い髪をたなびかせ、きつめの瞳で俺を睨む。

見た目は綺麗なのに性格最悪だな。

本当は逃げ出したいが、そういうわけにもいかなかった。

俺は自分の意思とは別に腰に差してある剣を抜いて狼に向かって走り出した。


ぐがあう!


狼は爪で俺首を狙ってきた。

それを俺は剣で逸らせるとそのまま、狼の顔面に拳を叩きいれた。

だが、叩きいれた拳に牙を向ける。

そして、右腕を噛みちぎられた。


「くっそ!」


「もう、右手やられたの? 使えない奴」


本当は悲鳴を上げてのたうち回るだろう。

だが、首輪の強制力で無理やりにも戦わされる。

食いちぎった俺の腕をまだ加えている隙に自分の腕から出る血を狼の瞳にかけて視界を奪う。

その隙に右手から落ちた剣を左手で拾い構えると狼の瞳にそれを突き刺したのだった。


ぎゃあがああ!!


狼が甲高い悲鳴を上げた。


「美しくないやり方」


俺達から少し離れたところで女はつまらなそうに呟いた。


「さっきからうるせえな」


「早く片付けて。この後、用事があるの」


この女、本当にイラつく。

この後、思いっきり殴ってやる!

今回で最後だ!


俺は女の言う通りにさっさと終わらせるべく、たうち回る狼に剣を向けて走り出す。

狼は間一髪逃げ出す。

だが、俺は剣を放すと腰に差していた短剣で体に突き刺す。

ひるんだ所で、再度剣を拾い狼に向かう。

そして、喉元に剣先から突き刺した。


「終わった (がう!)


狼の決死の一撃を食らい突き飛ばされる。


「くっそ、いてえな! オラッ!」


すぐに狼に俺はなぐりかかるが思ったような感触が来ない。

殴られた狼は倒れた後に全く動かなくなったのだった。

俺は達成感で思わず泣きそうになった。

今までこの狼よりも凶暴なドラゴンや巨人とも戦ってきた。

それが今日の千回目でやっと終わったのだ。


「片付いたの? それじゃあ、お疲れ様。帰っていいわよ」


女は俺の顔も見ずに帰ろうとする。

だが、俺は女の肩を左手で掴んだ。


「おい、報酬はどうした?」


「いつもの付けにしといてよ」


悪びれもなく女は言う。

だが、今回はそうはいかない。


「今日で約束の千回目だ」


「え? もう、そんなに使ったっけ?」


すっとぼけたようことを言うこの女を俺は力の限り殴り飛ばした。

利き腕じゃない左手で殴ったが、思いのほか女は吹き飛んでいったのだった。


「な、なにすんのよ! 止まりなさい!」


いきなりの事に女は命令で俺が近づくのを止めようとするが、残念ながら俺の首にはもう首輪は付いていなかった。

俺は女の髪を掴んで持ち上げる。


「い、イタイ。やめて!!」


「今ので百万円分でいいぞ」


「は、は!?」


「さあ、残りの代価を俺に払え」


「なによヒャクマンエンって」


俺はこの女との契約で千回戦う。

その代わり、一度の戦闘に百万円払うように契約していたのだ。

いつもは俺も早く帰りたい衝動と、この女が対価になるようなものを持っていないので諦めて付けにしていたが、今日が最後だ。

しっかり付けを払ってもらわなければいけない。


「百万円が千回で百億円だ。払え」


「だから、ヒャクオクエンって何よ」


ああ、こいつはそうか。

元から払う気なんてなかったんだな。

でも、俺も強制的に戦わされたんだ。

ならばこいつから強制的に奪っても構わないだろう。


「確かこの契約は強制だったよな。なら、今あるものから百億円分貰っていくぞ」


「な、や、いや、いや、いやあああ!!」



~~~~~~~


「って、叫ばれたところで目が覚めたんだよ」


「分かる、分かるよ。エロ展開に入る前に夢から覚めちゃうんだよな」


前の席の竹内たけうち 陽太ようたに先ほどの数学の授業中に見た夢を思い出していた。

だが、これは意図的に居眠りをしていたわけではない。

俺、安藤あんどう 清次きよつぐは睡眠障害があるのだ。

小学四年生ころに急に発症し、症状は突然気を失うように寝てしまうのだ。

寝てる時間は大体一時間ほどで、一度これで寝ると何があっても起きない。

しかも、寝ているはずなのに起きると疲れているのだ。

病院で色々な検査を受けたが結局原因はわからなかった。


「後でノート貸してやるから写しとけよ」


「いつもありがとう」


竹内は幼稚園の頃からの幼馴染だ。

昔から一緒に遊ぶことが多かった。

だが、俺のこの病気になってから毎日一緒にいるようになった。

それも、俺のこの病気が不規則に発症するのが問題だからだ。

信号を渡ってる途中や電車を待ってる最中に寝てしまうこともあった。

そんな時、竹内は俺を助けてくれたのだ。

竹内がいてくれなかったら俺は何度死んでいたか分からない。


「そういえば、これで千回目なんだっけ?」


「夢の内容があってれば」


そんな病気が発症すると決まって似た夢を見るのだ。

綺麗な女に呼び出され、モンスターと戦わされ、ボロボロになりながらなんとか勝利を手にする。

そして、戦いが終わると夢が覚めるのだ。

これがお姫様みたいな女性だったら頑張りがいがあるが、綺麗なだけで性格最悪のあの女だ。

しかも、変な首輪で俺を無理やり戦わせるのだ。


「本当になんであんな契約をしちまったんだか」


「ああ、一回戦うことに百万円ってやつな。ちょうど今回が千回目って事は十億円か? そんな大金が入ったら一生遊ぶどころか、使い切れないんじゃないか?」


竹内は俺の夢の話をよく聞いてくれる。

何度もボロボロになりながら戦わされるだけの夢なので、自分一人で抱えるには気がまいってしまう。

そこで、竹内に愚痴をこぼしてストレスを解消しているのだ。

竹内も昔からマンガやゲームが好きなようで俺の話を笑って聞いてくれたのだ。


「でも、その女毎回持ち合わせがない。付けで頼むって言うんだぜ」


「詐欺だな。そんな女捨てちまえ」


「そうだな」


でも、今回の千回目で終わった。

俺はこの時そう思っていたのだった。


「さあ、帰ろうぜ」


「もう、六時か。待たせて悪かったな」


「気にすんなよ。でも、今回は二時間も寝てたから、心配したぞ」


最後の数学の時間から二時間も寝てしまっていたのだ。

それから、いつもの様に愚痴を聞いてもらっていたので、もう最終下校時刻の六時になってしまったのだ。

いつも、こいつには申し訳ない。


「ほら、立てるか?」


「大丈夫だ」


俺達はいつもの様に一緒に帰るのだった。

バス通学なので学校近くのバス停のベンチに座り、アプリでアニメを見ながら待っていた。

そして、エンディングの曲が流れる。


「やっぱり、六話の戦闘シーンは神回だよな」


「お前の好きなヨナちゃんがメインかいだからだろ?」


「ああ、もっとメイン回が多くてもいいのに」


そう言いながら竹内は目を閉しながらエンディングを聞いていた。

このアニメはメイン回の女の子が歌う設定なので竹内は最後までスマホに釘付けだった。

俺は興味がないのでバスが来る方に視線を向けた。

やっと、バスが来たようだ。


「ダメ!!」


その声の方を向くと小さな女の子がボールを追いかけて道路に出てきてしまったのだ。

しかも、もうバスがそこまで来ているのだ。

ブレーキを踏んでも間に合わない!


「後はよろしく頼む!」


竹内は「へ?」と気の抜けた返事をする。

俺はその横で強気地面を蹴っていた。

なんとか女の子の前まで来るがもうバスは目の前だ。

突き飛ばすわけにもいかず、俺は女の子を庇うように抱き寄せ強く目を閉じた。


ドン!


強い衝撃が来る。

だが、なんか思ったよりも痛くない。

今日、狼に噛まれた時の方が痛かった。


「……あれ?」


そうえば、はねられたはずなのに、飛ばされる浮遊感がない。

俺はゆっくりと目を開ける。

確かに俺はバスにはねられたようだ。

バスには俺をはねた後のへこみがあったのだ。

だが、吹き飛ばされたのはバスの方でガードレールにぶつかっていた。

そして、俺には何の傷もなかったのだった。


「おい、安藤」


「なんだ?」


「逃げるぞ」


竹内にそう言われて俺は立ちは逃げるようにこの場を離れるのだった。








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