廃墟群ー無人都市ー
目の前に広がる建物の残骸、廃墟群を見下ろす。
オリバ氏のお陰で村から廃墟群まで何事もなく到着することが出来た。
道中、注意深く辺りを見渡し、雪原に残された足跡などを参考にして時には迂回しながら注意深く進んでいった。
一度もモンスターに遭遇しなかったのは、偶然ではなくオリバ氏がガイド(斥候)として優秀だったからだ。
「誰か、住んでたのかな」
「そうかもな」
イリアの呟きに同意する。崖下に広がる廃墟群。
塔のような建物以外にも、四角い建物───アパートだろうか?それ以外にも闘技場のような円形の建物など様々ある。どの建物も共通して外壁がボロボロになり、骨組みだけになっているものも散見している。そんな光景が延々と続いていた。気温と相まって寒々しい気持ちになる。
「破片はどこにありそうか分かるか?見覚えのある場所はあるか?」
「───ん、見えた風景は暗い場所。建物の中。もっと建物が、しっかり残ってるところ。方角はここからずっとまっすぐ行った所」
「だそうだが、オリバさんは心当たりないか?」
「あるにはあるけど・・・。多分、ここ(廃墟群)の中域ないし深部の方だろうな。本当に行くの?中域以降はまだアタシも踏み入れてないよ。まだ周辺部で開拓も済んでないしね」
思ったよりも芳しくない答え。まぁ無理もないか、ソロで探索しているようだし廃墟群も広大だ。隅から隅まで探索していたら時間なんていくらあっても足りないだろう。
「無理をするつもりはありませんので探索続行ということでよいですか?俺達も雪男と遭遇して大変な目に遭いました。北の地にいるモンスターを軽く見るつもりはありません」
「依頼を引き受けた以上は付き合うよ。その代わり、危険だと感じたらすぐ引き返すからな。命あっての物種だ」
「勿論それで構いません。よろしく頼みます」
◇ ◇ ◇ ◇
崖を下って廃墟群の周辺部に突入して数十分。周辺部を右往左往しながら進む。
オリバ氏の首にぶら下がっている長方形の箱がビービーとけたたましくなる。
「あー、こっちはいかん。引き戻すぞ」
「了解」
「わかった」
こんな感じで音がなると引き返して迂回して進むを繰り返している。
オリバ氏曰く、無色透明、無味無臭のガス状のものが溜まっているのではないかとのこと。
無理して進もうとすると意識朦朧、鼻血などが出てきて倒れるらしい。自覚症状が出てからでは手遅れ。時折、廃墟群に紛れ込んだであろう雪男や狼の亡骸が横たわっている。誰も寄り付かないわけだ。
周辺部でも開けた場所に出てきた。
「OK、ここまで来れば一段落だ。二人ともお疲れ様。少し休憩しようか」
「そうなのか。ナビゲートありがとう。オリバさんもお疲れ様」
「お疲れ、様」
ドカッと座り込むオリバ氏。
オリバ氏に倣い、座り込む俺達。
ゆっくりと辺りを見渡す。今いる場所は広場、公園か何かだったのだろうか。
ベンチの残骸と用途の分からない棒状の鉄で作られたシンプルな構造物が多数ある。どれも錆びている。
建物の壁には、まるで何かかから逃げるような姿でくっきりと人影が張り付いている。何となく寂しい気持ちになる。
「ここには誰か住んでたんですかね」
「多分そうだろう。そしてある日突然それが終わったんだろうな。周辺部に溜まってるガスもその名残だろうな」
北の民、ダコタさん達がこの場所を禁忌と考えているのも理解が出来る。この場所では間違いなく何かがあったのだろう。興味がないわけではないが、俺達の目的はあくまで破片の回収だ。
「ここまでが開拓済みのルートだ。ここから先はまだアタシも行ったことがない。行くのか?」
「ええ、そのつもりです。───イリア、方角は間違えないか?」
「うん、間違えない。もっと奥の方で、感じる」
ここからが本番だ。




