入山-すれ違い-
「それじゃ、父さん行ってくるよ」
「ああ、気をつけてな」
日ノ出前。辺りはまだ真っ暗。山の麓のためか若干肌寒い。
入山には最適な気候らしい。ツイている。
「行ってまいります」
「行って、きます」
「山は平地と勝手が違う。娘を使い潰すつもり頼ってくれ」
「お心遣い感謝します。頼りはしますが、使い潰しませんよ」
「ああ、そうしてくれると助かる。村にとってはこれでもいないと困るからな」
◇ ◇ ◇ ◇
登り始めて1時間程経過した。
ニッキーさんの言う通りに快適に登れている。天候は快晴、視界良好。汗をかかないようにだけ気をつければほぼ問題なさそうだ。
「3時間位で登れる山だから、無理しなくていいからね。安全第一でいこうね」
「ああ、よろしく頼む」
「はい」
確かに山は平野と勝手が違う。ペース配分を考えないとバテてしまう。なるべくイリアの負担がかかりすぎないように気を遣いながら進む。
後、今の内に確認したいことをニッキーに尋ねておく。
「山の神様ってどんな御方なんですか?」
「んー、大雑把じゃなくて、おおらかな人で普段はガハハ笑ってる。天候管理してて太鼓を鳴らすのが得意。演奏はすごいかっこいいかな」
「器の広い御方なんだな」
「物は言いようだね」
何となくだが、女神様と同類な感じがする。人間に神意なんて分かるわけないしこればっかしは出たとこ勝負かな。
◇ ◇ ◇ ◇
更に1時間登ると当たりの景色が変化する。周りの木々が高木が低木に変化している。更に上を見上げると低木から草花に変化しているのが見て取れる。
「ここら辺からちょっと空気も薄くなってくるけど大丈夫?」
「ああ、まだ大丈夫だ」
「だ、大丈夫」
イリアは返答に間がありやや上ずった声で返事する。
それとなく様子を伺うと少し肩で息をしていて顔色も青くなってる。これは大変よろしくない。ウルフも心配そうに鼻先を体にくっつける。
辺りを見渡すと少し登った所は開けた中腹になっている。やることは決まっている。
「ニッキーさん、すまない。やっぱり休ませてくれないか?ちょっと立ち眩みしてきた」
「ん・・・?ああ、いいよ。急ぐもんじゃないし折角だから景色楽しんでってよ。後、私ニッキーでいいよ。その代わりにアークって呼んでいい?」
「勿論。そっちの方が気が楽でいい」
ニッキーは俺の提案を快諾してくれた。特に気分を害した様子もない。
道中こちらに気を遣ってくれたことを考えると、多分彼女も察してくれたのだろう。そういう心遣いほんと有り難い。
イリアに顔を向けると、ホッとしたようなムッとしたようなよく分からん表情している。
「私のこと、中々呼び捨てにしなかったくせに」
「ん?」
「なんでも、ない」
俺にしてはいい対応したつもりだが何かお気に召さなかったらしい。ぶすっとしている。
何故かニッキーはカラカラ笑っている。わけわからん。




