大森林-案内人-
「止まれ!何用だ」
冒険者ギルドで手紙を受け取り、ニクス大森林の入り口にいる。
入り口には詰め所が設置されており衛兵が出入り口を監視している。
女神ウラニアの居住地であるニクス大森林は我らが母国ワンダー王国によって手厚く保護されている。
「冒険者ギルドより配達の任を受けてきた。これが紹介状だ」
紹介状を衛兵に渡すと、書類の真贋確認後にスタンプを押してもらう。入退出の履歴管理を行っているわけだ。
「ご苦労。通ってよし」
「どうも」
「森の中に結果が張られている。もし迷子になったら素直に出直すことだな」
「分かりました」
ん?そいつは初耳だぞ。とりあえず戻るわけにもいかんし進むけどさ。
◇ ◇ ◇ ◇
森の中に入ると手つかずの原生林が広がる。一本一本の木々はどれも太い。
生き物の気配はするのだが姿は見えず静か。相棒のウルフは気にしたそぶりも見せない。
精霊か物の怪の類がいるのかもしれない。
「また同じ道か・・・」
道なりに幾ら進んでも元いた入り口にいつの間にか戻ってしまう。これが衛兵のいっていた結界というやつか。
結界を壊して侵入してもいいが、何か怒られそうな気がするので出来れば別の方法、正規ルートで訪ねたい所。
そうこう考えていると『バキィィッッ』と枝が派手にへし折れる音が響き渡る。ウルフがダッシュで現場に向かう。俺も現場へ急行する。モンスターか?
現場にはフクロウではなく白いフクロウがいた。羽は血で赤黒く汚れて痛々しい。俺達を威嚇するように羽を広げようとしているが広げられない。先程の音の原因はこのフクロウのせいだろう。
敵意がないことを伝えるにテイマースキル<心を一つに>を使用する。動物やモンスターと心を通わす基本スキルだ。
俺とフクロウが真正面から見つめ合う。暫くすると威嚇をやめておとなしくなる。よしっ、成功だ。
フクロウの傍により下級回復魔法<ローヒール>をかけてやる。
手の平から淡い光が生じる。包み込むように光をあて続けると10分程で傷が癒える。
フクロウは羽の状態を確かめるように羽ばたいて・・・あっ、飛んだ。
そのままどっか飛んでいってしまうと思ったら足元に戻ってきた。俺の足元で頬を擦り付けてくる。モフモフ可愛い。情に厚いフクロウだ。
フクロウはひと鳴きすると俺達の前を先導するようにちょんちょん前へ進む。
チラっとこちらを見てくる。ついてこいってことか?
迷子は充分堪能したからフクロウの後をついてゆくことにした。