冒険者ギルド-特殊な依頼-
「アークおはよう。他のみんなはどうしたの?」
「ハナさん、おはようございます。仕事を探しに来ました」
僧侶ペルラ達と別れた後、その足で冒険者ギルドに向かった。
看板娘である受付嬢ハナさんが元気よく声をかけてくれる。
「ん?、どういうこと??」
「じつはパーティを抜けることになりまして」
「はぁ?ペルラを捨ててきたの?返答次第じゃ泣かす」
「捨てたって人聞きの悪い。そんなことしません」
「じゃあなんでなの」
「実は・・・」
◇ ◇ ◇
「はぁ? あのナルシスト何考えてるの?許さん!!」
「ハナさん、落ち着いて」
案の定、逆鱗に触れてしまった。だから何で俺はなだめる側なんだ。
「魔剣手に入れたからって調子に乘ってんじゃないわよ。そろそろ先にヤキ入れてやればよかった」
「ハハッ」
ハナさんは可愛い顔してAランク冒険者だ。古参冒険者の一人であり、ハーフエルフのため見た目変わらない。ハナさんを怒らせてはならない。冒険者の共通見解だ。ギルマスですらハナさんに頭が上がらない。
「で、ナルシストは次いつ来るの?」
「別の依頼を受注してましたから、多分暫く戻ってこないと思いますよ」
僧侶ペルラに詳細まで確認していないが、多分1ヶ月単位の依頼ではないかと見込んでいる。
依頼内容から察するに2〜3日で帰ってこれるような案件ではないだろう。前回の遺物回収は2ヶ月かかった。
「チッ。逃げたか。アークが抜けたということは誰かが加わったということよね?」
「はい」
「誰が加わったの」
「ナイアというシーフです」
「うちのギルドのものじゃないわね。聞いたことないわ」
「ダニエルが連れてきたやつで、手はとても器用でした。ケーシーに握手した時に指輪を抜き取ってましたよ」
「へぇ、やるじゃない」
「得体の知れないやつでしたよ。Aランク冒険者らしいです。どうやってダニエルが知り合ったのか知りません」
「Bランク冒険者がAランクに昇格したとかかもね。ソロのAランク冒険者なら他所のギルドでも耳には入ってくるからね」
「心配しすぎだったかも知れませんね」
シーフ、ナイアを悪人と決めつけるのは早計だ。騎士ダニエルが連れてきたから色眼鏡で見てるのは否めない。仮に邪な思惑があったとしてもペルラ、ケーシー、ゴンザレスがそうそう遅れを取ることはない。ダニエルに関しては少々怪しいが。
「ところでアーク、あんた仕事を探しているのよね?」
「ええ、何か良さそうな仕事ありませんか」
「配達やってみない?」
「配達ですか・・・」
配達といっても千差万別だ。穀物の類といった嵩張るものを隊商で運ぶこともあれば、手紙といった小さな荷物、情報を運ぶこともある。荷物が小さければ小さい程、緊急度、速やかな遂行が求められる傾向がある。俺達のパーティは遺跡専門のパーティだったが配達専門の冒険者パーティも存在する。
「東の大森林、女神の森の村落に手紙を配達してほしいの」
「えっ!?女神の森ですか」
東の大森林ことニクス大森林はここから東にある。
ニクス大森林には女神ウラニアが顕在されている。そのため通称女神の森と呼ばれる。
大森林に一般人が立ち入ることは許されていない。森の中にいるドルイドと呼ばれる部族が女神及び自然を崇拝しながら原始的な暮らしをしているらしい。実物は俺も見たことはない。だって俺はパンピーだからな。
「そう警戒しなくていいいわよ。危険はないわ。ただ、信用出来る相手じゃないと任せられない案件なのよ。だからアークお願いね」
ウィンクしながら無茶振りしてくるハナさん。ただ提示された報酬を確認すると、これが中々悪くない。言い分も額面通りと受け取ってよいだろう。ハナさんとは長い付き合い出し冒険者ギルドと冒険者は持ちつ持たれつだ。
「分かりました。配達の依頼引き受けます」