幽霊退治-無茶振りされた系の-
「村で悪霊対峙か。そりゃご苦労なこった」
馬車に揺られながら平原の村を目指す俺達。
見習い僧侶アニーに旅の目的を訪ねた。
流石に少々不用心すぎるような気がしたためだ。
先程の一件があったためか、尋ねれば特に疑う様子もなく理由を告げてくれた。
何でも近隣の村で幽霊騒ぎがあった。
教会の判断では見習い僧侶でも問題ないと判断されたためアニーに白羽の矢が立ったとのこと。
「そうなんですよ。大変なんです。自分で言うのも何ですが悪霊退治は結構得意なんですよ。でも一人旅に出たことがなかったわけで。幽霊より野犬の方がよっぽど怖かったです」
「野犬が怖いっていう点には同意するがな」
実際、戦いの心得がないものからすれば、幽霊も野犬も脅威以外のなにものでもないだろう。
正直ぽややんとしていて除霊の腕前がすごいのかピンときていないが。
そう思っていると、おずおずとイリアが質問してきた。
「幽霊って退治しないといけないの?」
「どういう意味ですか?」
「わたし、精霊さんとお喋りしてるから、幽霊がいけないものっていう感覚がないの。精霊さんも、肉体、ないから」
「私達がやっているのは退治ではなく救済です。迷える者を救うことが仕事なんです。手当たり次第退治してるわけじゃないから安心してください」
「だったら、納得」
俺もアニーの考え方に同意する。教会の人間も千差万別だから過激派も勿論いるわけだが。
そんなこんなで、日々の暮らしの話をしながらイリアとアニーは盛り上がっていた。二人共、特殊環境で暮らしているためか妙にウマがあっていた。後、モフモフ(ウルフとオウル)最強。アニーもメロメロになっていた。
◇ ◇ ◇ ◇
村到着。時間は15時頃だろうか。村はある一点を除けばごくごく普通村だった。少し離れた所にある巨大霊園を除けばだが。
「随分大きな霊園だな」
「近隣の村々と共同管理している霊園だそうですよ。定期的に幽霊騒動が起きるから教会も人員を派遣しているそうです」
「夜になったら、何か出てきそう。ざわざわ、する」
「まぁ、まずは村長に話を聞くのが打倒だろうな」
村の中に入ると比較的身なりの整った初老の男性に迎えられる。
「もしや教会の関係者ですかな?」
「はい、教会の者です。アニーと申します」
「遠い所よくおいでなさった。村長のタイラーと申します。これで村も安泰だ。立ち話も忍びない。ささ、まずは部屋に部屋に入ってくだされ」
そんなわけで村長宅に案内される。なし崩し的に俺達も案内を受ける。
何となく断るタイミングを逸したまま話は進む。
「早速ですが状況について教えてください」
「共同墓所で夜な夜な笑い声が聞こえてきます。笑い声は日に日に大きくなっておりいます。まだ実害はございませんが、このまま放置して大事になったら大変なので教会にお願いさせていただきました。僧侶様。どうか村をお救いください」
直角に頭を下げる村長タイラー。テーブルに頭が付きそうな勢いだ。
「分かりました。私でよければ助力いたしますので、どうか頭を上げてください」
「僧侶様、ありがとうございます。感謝いたします。まさか教会が冒険者殿も派遣してくださるとは思っておりませんでしたぞ」
「え?」
「違うのですか?てっきりご同行されているから幽霊退治を手伝ってくれるものとばかり・・・」
チラッとこっちを見てくる。
「あの、なし崩しで申し訳ないですが、お願い出来ますか?」
何となくそんな気がしたよ。
「イリア、手伝うってことでいいか?どの道、この村で一晩過ごそうと思ってたんだ。旅には支障がないと思うんだがどうだ?」
「いいよ。私も共同墓所の様子気になるし、アニー、助けてあげたい」
「アークさん、イリアちゃんありがとう!」
「引き受けてくださるか。ありがとうございます」
そうして破片探しの旅に出ているのはずなのに幽霊退治に出かけることになった。




