旅仲間-見習い僧侶-
「すっ、すごい」
驚きの表情で、俺達を見上げる。驚いているのは俺もだ。上手くゆきすぎだ。
具体的にはウルフとオウルの力が有りえない。どちらも野犬を力で圧倒している。特にオウルは鳥類特有の俊敏さがある代わりに力は野犬と比べたら非力なはずだ。それが正面から野犬を圧倒している。まるで2匹に人間の力が加わっているかのようだ。
実際にチートスキルのスキルウィンドウ確認してみると、2匹は俺の能力値分ステータスが底上げされている。
そりゃ強いわけだ。俺自身が強くなることも無駄じゃないわけだな。いいじゃん。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
「ええ、お陰様で助かりました」
年はイリアと同い年位だろうか。野犬に襲われたためか若干青ざめている。身のこなしを見るにあまり旅慣れしているようには見えない。あのまま野犬に襲われていたら危なかったと思う。つまり俺がしなければいけないことは・・・。
「連れはいるのか?」
「えっ?あっ、いません」
「行き先は?」
「この森を抜けた先にある村です」
よく分からないけど、とりあえず返事してゆく旅人。
「なぁ、イリア。どうせ方角は一緒なんだ。道中一緒でいいか?」
「いいよ」
「えっ、いいんですか?」
驚きで目を丸くしている。向こうからしてみれば渡りに船だろう。
「もちろん、一人位増えた所で負担にならんしな。アークって言う。よろしくな」
「イリアだよ。よろしく。」
「よろしくお願いします!私はアニーです」
こうして一人、旅仲間アニーが増えたわけだが出発する前にすることがある。勿論野犬達の処遇だ。もう既にテイミング出来て降伏状態になっている。連れてゆくわけにも行かないし無駄な殺生するつもりもない。そうなるとすることは一つ対話だ。
まずは一匹ずつローヒール(下級回復魔法)で傷を癒やしてやる。その上で、二度と人間を襲わないようによく言い聞かせる。通る通行人を助けるようにも注文をつける。すると野犬達はこちらの言い分に素直に応じてきた。
「えっ、野犬と会話出来るんですか!?」
「ああ、これでも本職はテイマーだからな」
「はぁ、すごいですねぇ」
不思議なものを見るような目で俺達(俺と野犬)を見つめてくる。まぁ、言わんとすることは分からないでもない。普通、テイミングはこんなに簡単には懐かない。恐らくはチートスキルの影響だろう。こちらの意志を動物やモンスターにダイレクトに伝えられるのは大変助かる。
「殺さずに済んでよかった」
「全くだ。 よし、これで事後処理も済んだから出発するぞ。アニー乘ってくれ」
「はい、よろしくお願いします!」
平伏した野犬に見送られながら、アニーが目指す村へ向かうことになった。




