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別れ-良い奴の幸福は願ってやりたい-

「道中気をつけろよ」

「アークさん・・・」


 早朝6時頃にも関わらず、僧侶ペルラ、魔法使いケーシー、狂戦士ゴンザレスが見送りをしてくれている。

 騎士ダニエルと顔を合わすのも気まずいのでなるべく早く宿を出たわけだ。


「くぅーん」

「ウルフ寂しいよね。私も寂しい」

 魔法使いケーシーが泣きながらウルフをモフる。

「腹立ってきた。やっぱりあいつを殺そう。そうしよう」

「落ち着けって」

「アークは悔しくないの!」

「悔しいっていうより、寂しいって感じだな。それなりに仲良くやってきたつもりだったんだがな」


 魔法使いケーシーの目尻がハの字に下がる。


「何でこうなっちゃったんだろ」

「・・・あの魔剣が原因じゃないか?」

「私もそう思います」


 3人共同意する。魔剣は騎士ダニエルの愛剣だ。2ヶ月ほど前に潜った遺跡の最奥で入手した。

 切れ味抜群で、騎士ダニエルの剣技と相まってパーティに多大な貢献をしている。


「魔剣、役に立ってるけど、魔剣の切れ味を実力と勘違いしてるよ。立ち回り雑になったし」

「私ももう少し慎重に動いた方がよいかと思います」


 二人の意見に俺も概ね同意だ。魔剣が刺さっていた台座に刻まれていた『所有者に力と破滅をもたらす』という言葉が目に焼きついている。騎士ダニエルは、そんな迷信はしんじないと軽く見ているが、いつか痛い目を見るんじゃないかと不安を拭えない。

 後、その時に戦った魔族も変なやつだったし。俺達を嗤いながらいなくなった。奴の目的は結局何だったのだろうか。


「そう言えば、神託はどういったものが下ったんだ?」

「聖遺物の回収です」

「なるほど」


 質問から出てきた答えはある意味で神託あるある。

 定期的にこの世に現出する神々の遺物の回収だ。教会の定常業務といっても差し支えない。

 ある程度実力あるパーティが回収の任を請け負う。俺達も何度か請け負ったことがある。魔剣もその過程で潜った遺跡で入手したものだ。

 神託はそれ以外にも世界の破滅といったSランク向けの物騒なものが割とポピュラーだ。俺達には縁のない話しだが。


「じゃあ、こいつを持ってけ」


 懐から特製の魔物よけの匂い袋を渡す。魔物を退ける効果がある。袋を開けると魔物を退ける煙が生じる。強烈な匂いは難点だが、魔物のランクを問わず有効なのでかなりの優れものだ。

 シーフ、ナイアに手先の器用さは披露してもらったが、実際に戦闘でどこまでのものか未知数だ。自衛の手段はあるに越したことはないだろう。騎士ダニエルが守備をしっかりするのに期待するのも怪しい。


「アークさん、ありがとうございます!私からもこれを受け取ってください」

「これは・・・?」


 僧侶ペルラから手のひらサイズの水晶を渡される。


「破邪の水晶と呼ばれる道具です。効果は一回きりですが道具や魔法といった補助効果を一切無効化します。聖痕や加護の類はそのまま適用されます」

「もらっていいのか?」

「勿論です。受け取ってください」

「ありがとう」

「こちらこそ」


 心が通じ合ったような気がしてどうにも照れくさい。僧侶ペルラもはにかんでいる。

 俺に加護や聖痕はないから活かしきれるか分からないが、その心遣いがありがたい。


「ところでアークはこの後どうするの?どっか次のアテあるの?」

「んー、特にアテはないな。とりあえず冒険者ギルドで何か依頼を探そうと思っている」

「良い依頼が見つけるといいね。もしなかったら私が紹介してあげる」

「そんときゃ頼むぜ」


「・・・ねぇ、ペルラ。この依頼達成したらうちらのパーティも解散しない?アークとパーティ組み直そうよ」

「私がダニエルを説得します。きっと元通りになりますよ」

「無理はせんでいいからな」


 僧侶ペルラは、元の形に戻したいようだが、正直俺は戻りたくない。

 騎士ダニエルにどんな顔をすればいいんだ?アイツだって俺のことが嫌だったから追放したわけだしな。

 一抹の寂しさはあるが、戻りたいとは思わない。


「ゴンザレス、お前が頼りだ。どうかみんなを守ってやってほしい」

「マカセロ」


 ずっと沈黙を貫いてきたゴンザレスが口を開く。無口だがイイ奴だ。いつもと変わらない返事に安堵を覚える。


「アーク、オマエ、イイヤツ」

「ありがとうよ。お前もいいやつだよ」


 胸の中のわだかまりが少しとけたような気がする。


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