スイーツ談義-イベント回収-
「イリア嬢、腹すかないか?どうせおやっさん(鍛冶屋のストーン氏)に作ってもらうまでは待つんだ。飯にしないか?」
「大賛成」
時間は14時頃、イリア嬢も待ちに待ったという表情をしている。
「もしよかったら何だがケーキ食べにいかないか?」
「食べたい!」
予想以上に食らいついてきたイリア嬢。
昼飯にケーキというのもアレだが、ケーキ食べたいと言っていたし提案してみた。嬉しそうな顔をしてくれても俺も嬉しくなる。
「んじゃ、行くか」
「うん!」
◇ ◇ ◇ ◇
「どこも満席だね・・・」
「どうすっか」
ケーキを求めてメインストリートに顔を出してみたがどこも満席だった。お店に入ることすら出来ない。出来れば評判の店で食べてみたいといっていたケーキを食べさせてやりたかったが叶わずにいる。
「お腹すいちゃったし、別にする?ほかも興味あるし、ケーキじゃなくていいよ」
気を遣うように提案してくれるイリア嬢。
「穴場のケーキ屋を知ってるんだ。そこが駄目だったら別にするか」
「分かった」
街外れに顔馴染みのケーキ屋がある。最初からそこに行けよと思うかも知れないが、元パーティの頃によく通っていた店だから意識的に外していた。
イリア嬢の喜ぶ顔と自分のプライドを天秤にかけたらイリア嬢が喜ぶ顔を優先したい。初めてづくしでこの子も疲れているだろうからケーキを食べて喜んでもらえるなら喜んでほしい。
◇ ◇ ◇ ◇
街外れにある馴染みのあるケーキ屋『魔女達のお茶会』の前に到着した。魔女が箒に乘った看板がトレードマークだ。満席になっていないか心配したが空いていた。立地のせいであまりお客さんが来ないせいだ。煙突からお菓子特有の甘い匂いを含んだ煙がモクモクと出てくる。
「いい匂いだね」
「そうだな」
イリア嬢にケーキを食べさせられる算段が立ってほっとする。
◇ ◇ ◇ ◇
「いらっしゃいませ〜。あっ、アーク!いらっしゃい」
「どうも、ハンナさん」
「今日は5名様?ペルラちゃん達も後からくるかしら?」
「今日は2名です。俺とこの子です」
「分かったわ、どうぞ席に座って。」
女店主のハンナさんが一人で切り盛りする『魔女達のお茶会』だ。見た目は30代。何をやってきたのかよく分からない。ある日ふらっと魔法使いケーシーがここのお店を見つけてきた。それ以来皆でよく通っていた。騎士ダニエルは甘いものが嫌いだからと辞退していたが。
通された席に座るとメニューが置いてある。フルーツケーキとホットケーキ。
「2種類あるけど、どう違うの?」
「ホットケーキは生地そのものを楽しむケーキだな。フルーツケーキは果物・生地・クリームをバランスよく楽しむ。どっちも美味いけどフルーツケーキがお薦めだな」
「じゃあ、フルーツケーキにする」
「ハンナさん、フルーツケーキを2つお願いします!」
「はーい」
ハンナさんのふんわりした声が厨房から聞こえてくる。
そして暫くするとハンナさんがやってくる。
「はーい、お待たせー」
「すごい!ピカピカしてる」
「見た目もいいよな」
ホットケーキと紅茶のセットがテーブルに並ぶ。
蜜で表面がコーティングされていて、文字通りピカピカしている。
「さっ、召し上がれ」
「「いただきます」」
恐る恐るケーキにフォークを入れるイリア嬢。崩すのがもったいないというような表情をしている。
ケーキを口に運ぶと満面の笑みに変わる。
「おいしい!」
「ああ、美味しいな」
「ふふ、ご堪能ください」
今までで一番強い感情を見せるイリア嬢。
年相応に喜んでくれる顔が見れて本当によかった。




