馬探し-RPGのお約束-
というわけで、馬車を引く馬を手に入れるために街に隣接している牧場へ向かった。
「見かけない顔だな。何しに来たんだ?」
鍔の広い帽子をかぶった40代位の男が声をかけてくる。不審げな表情を隠さない。
イリア嬢は浮世離れしてるし、俺は金持ってそうな身なりをしていない。しかも大型の狼とフクロウを連れている。関係性が分からない以上不審がるのは仕方がないのかも知れない。
「馬車を引く馬が欲しい」
「金持ってんのか?」
ほらきた。ドンピシャだ。不毛なやりとりするのも馬鹿らしいのでギルドマスター、フィンさんから預かった小切手を男に差し出す。
「冒険者ギルドの関係者か。好きな馬を持ってけ」
馬主も納得いったというように頷く。冒険者ギルドなら、俺とイリア嬢の組み合わせもありえるだろうと。
俺も首を縦に振る。
柵の中に入ると、馬が放し飼いされている。
イリア嬢がのびのびと過ごす馬を見てホッとしている。街に人がたくさんいて緊張してたんだろう。やっぱ馬いいよな。
「どの馬がいい?」
「あの馬」
イリア嬢が指差した馬は他の馬と比べて二周り程大きな白馬だった。
1匹だけ纏っている雰囲気が異なる。殺気立っているというかピリピリしている。そのため他の馬と交じわっていない。
「あの馬だったらやめとけ」
「なんで?」
「お嬢ちゃんな、あれははぐれ馬だ。母馬とはぐれていた子馬を拾ってきた。女子供には気を許すんだが大人の男に絶対懐かない」
「あの馬がいい」
パタパタと馬に向かうイリア嬢。馬にピタッと張り付いて満足げに撫で回している。馬は嫌がっていない。
「あの嬢ちゃん面白いな」
「ああ、良い子だ」
あんなに執着されちゃ、他の馬を勧められんよな。
ここは一つ、大人の威厳ってやつを見せる時だ。
俺が傍に近づくと馬はピタリと俺に視線を合わせて警戒心を露わにする。『ブルルッ』
テイマースキルの<心を一つに>を使用するが失敗。心が一つになんねぇ。警戒心が解けない。
馬俺に突っ込んでくる。
ここでチートスキル使用。
オウルの動体視力を用いると馬の挙動がゆっくり、スローモーションになる。
ウルフの俊敏さで横っ飛び回避。そのまま暴れ馬に乗る。
馬が暴れる。野生の俊敏性で乗りこなす。乗りこなす。乗りこなす。
次第に暴れ疲れて大人しくなる。大人しくなってから馬から降りる。
もう一度正面から向き合ってテイマースキルの<心を一つに>を使用する。
よしっ、今度は成功だ。心が通じ合う。今度は従順だ。
「すごい!」
「あんた何者だ?人間業じゃねえぞ」
「気にしないでくれ」
すごいのは女神様だよ。
<システムメッセージ 馬のテイミングに成功しました>
<システムメッセージ 馬の体力を獲得しました>




