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追放-突然やってくる凶報-

「それじゃお疲れ様ー!」

「「「「お疲れ様」」」」

 

 席には、瞬唱の魔法使い、ケーシー。

 次期聖女と目される僧侶、ペルラ。

 恐れ知らずの狂戦士、ゴンザレス。

 そして、テイマー(魔物使い)の俺、アーク。

 パーティリーダーのダニエルは用事があるということで席にはいない。


 ケーシーの音頭で、クエスト達成の祝いが始まる。ムードメーカーである赤毛の彼女は上機嫌だ。

 教会からの依頼で、神々の神託を受ける子供の護衛が無事完了し、こうして酒場で祝宴を上げている。


「なぁ、ペルラ、ダニエルがいない理由何か心当たりないか?」

 僧侶ペルラに話を振ってみる。パーティリーダーである騎士ダニエルと最も接点のあるからだ。

「いえ・・・、私も知りません」

 何となく騎士ダニエルがいないことを不自然に思いながら酒を飲む。


「やあ、待たせたな」

「あっ!遅いよ。とりあえずダニエルも飲め」

 上機嫌でグラスにビールを注ぐ魔法使いケーシー。受け取るダニエル。しかし、ビールを飲もうとしない。


「何で飲まないの?私の酒が飲めないの」

「みんな話を聞いてほしい。神託者から信託が下った。明日から聖遺物の探索に向かう」

「えー、休みないの。人使いが荒いなぁ」

「明日の探索には、アーク、お前はパーティから脱退してもらう」

「「「「えっ?」」」」


 俺を含め全員驚く。理解が追いつかない。


「ダニエル、冗談ですよね?」

「冗談じゃないよ。ペルラ。パーティは専門家であるべきじゃないかい?」

「言っている意味が分かりません」


 騎士ダニエルが諭すように言葉を続ける。

「アークは一体何の専門家なんだい?前衛としてはボクやゴンザレスにも及ばない。ケーシー程魔法が得意なわけでも、ペルラのように神聖魔法に長けているわけでもない。アークが目立った功績を上げていないのは事実だろう?シーフのように罠解除だって出来るわけでもない。前回それで痛い目をみただろう。」


「罠解除出来なかった理由をアークさんのせいにするのはおかしいです。パーティの連帯責任ではないですか?」

「ああ、その通りだ。だからパーティリーダーとしてシーフを連れてきた。彼だ」


 騎士ダニエルが目線を俺達の後ろに向ける。

 後ろを振り返ると、いつの間にか中肉中背で肌は浅黒い。顔立ちの整った男がいる。年は同い年、25位だろうか。


「はじめまして。ナイアと申します」


 困惑する俺達。魔法使いケーシーが食ってかかる。


「いきなりそんなこと言われて納得出来るわけないじゃん。そもそも腕前だって分からないし」

「まぁ、まずは仲良くしましょ」

「気安く触るんじゃない!」

 ニコニコしながら握手してきたシーフの手を振り払う。


「手先が器用なのでこんなことが出来ます」

「えっ!?」

 魔法使いケーシーが指に嵌めていた指輪をシーフがつまんでいる。

「勿論お返しします」

 手を両手で包み込むように指輪を返却する。

 気味悪そうに手をさっと引っ込めて指輪を嵌める。


「彼、ナイアはAランク冒険者だ」

「「「えっ!?」」」


 俺達はBランク冒険者だ。

 冒険者はEランクから始まりSランクまである。

 Bランク冒険者は冒険者ギルドの中で一目置かれる熟練冒険者だ。

 Aランクはギルドを代表する冒険者。

 更にその上にSランク冒険者という人外の域が存在する。

 実質的にはAランク冒険者こそが人の域における最高の冒険者だと言える。


  SSSランク 神話レベルの人材

  SSランク  伝説級。語り継がれる人材

  Sランク  国家を代表する人材

  Aランク  ギルドを代表する有名人

  Bランク  熟練冒険者

  Cランク  一人前冒険者

  Dランク  半人前冒険者

  Eランク  駆け出し冒険者


 ランク差により実力は隔絶している。

 年単位の実力差が存在していると考えてよい。

 つまり、シーフのナイア氏の実力は間違えない。


「だったら、パーティにナイアさんを加えればいいだけでしょ」

 ランク差と腕前を披露されて、さすがに魔法使いケーシーも勢いが弱くなる。

「もう一度言うよ。僕達は専門家であるべきだ。Aランクに上がるためにアークは必要なのかい?アークの代わりにナイアを加えるべきではないか?もしも僕の意見が通らないのであれば僕はパーティを抜けようと思っている」

「えっ!?」


 特に驚くのは僧侶ペルラ。教会からの依頼であるならば彼女に拒否権は存在しない。そしてペルラの親友である魔法使いケーシーにも依頼を断る選択肢は存在しない。つまり騎士ダニエルは二択の選択を迫っているわけだ。俺を追い出して依頼を達成するか。俺を残して依頼を未達成とするか。


「俺がパーティを抜ける」

 俺に選択権なんてなかった。

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