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其の6 まさや君の絵本

「真っ赤なブーメランパンツのその男は、カルボナーラのような髪を振り乱し、右手に槍を持ち、左手にはノートパソコンを持っている。京浜東北線の各駅停車、大宮行きの最前列に乗っている……」

「ま……まさや君!? な……何の話をしているの!?」

「あっ! より子先生。実はお昼寝の時間なんだけど、皆が寝れないっていうから、ボクがオリジナルで描いた絵本を読んであげていたんだ」

「そ……そうだったのね。驚いたわ」

「ボクも話に夢中になりすぎていて、みんなが寝付いた事に気付かなかったです。すみません」

「い……いいのよ、まさや君。そんな謝らなくても」


 まさや君は変な所で律儀だ。

 異常なほど大人びているというか、幼稚園児ながら自分で絵本を創作してしまう時点で、並の子供ではないのだが……

 どちらにしても恐ろしくIQが高い事は確かだと思う……

 絵本の内容はともかくとして……


「まさや君も皆と一緒にお昼寝していいのよ」

「ありがとう、より子先生。でもね、皆と同じ事をやっていたら、一生凡人のままで終わってしまうと思うんだ。ボクはそんな人生は耐えられない。お父さんとお母さんにもらったこの命。いつ死ぬか分からないんだから、自分の成長の為には、1秒足りともムダにする事は出来ないんだよ」


 園児の発言ではない……

 人として、成熟しすぎている……


「より子先生、鼻水出りゅ……」

「あっ……はいはい! ちょっと待ってね!」


 たまにこうやって手の掛かる所は普通の園児なんだけどなぁ……

 このギャップは一体……


「ねぇ、まさや君。寝る子は育つって言葉知ってる?」

「知らないです。何ですか、そのインチキ商法のキャッチフレーズみたいなのは?」

「イ……インチキ商法じゃなくて、昔からあることわざみたいなものよ。心に不安のない子供はぐっすり寝る事から、すくすくと健康的に育つっていう意味らしいわよ」

「そんな言葉があるなんて……。寝る間も惜しんで努力しているボクが、呑気に寝ている子より下だなんて……。世の中にはボクの知らない不条理な言葉がたくさんあるんだなぁ……。ちなみにボクが知っていることわざは『他人のフンドシで相撲をとる』と『病脇(やまいわき)から』だけです」


 何故その二つだけ!?


「ま……まさや君。他人のフンドシはともかくとして、病()からじゃなくて、病は()からだと思うわ」

「そうなの? 病気は脇が原因になりやすいから、脇を大事にしなさいって事なんじゃないの?」

「ち……違うと思うわ。病気は大抵、気の持ちようでなるものだから、気をしっかり持つ事が大事って意味よ」

「より子先生は思ったより博学なんだね」

「そんな事ないわよ、人並みよ」


 博学なんて言葉を知ってる方が、博学でしょ……その歳で……


「そう言えば、郷に入れば郷に従えなんて言葉もあった気がします。という事で、ボクも今日の所は皆と一緒にお昼寝しますね。おやすみなさい」

「お……おやすみ」


 布団に入った後、数秒で寝てしまったまさや君は5分後にはお漏らしをし、結局すぐに起きてしまった。


 ショートスリーパーまさや君は、お家に帰ってからもちゃんと寝ているのか心配になる小松崎 より子でした……

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