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彼とわたしの風変わりな日常  作者: 赤オニ
これからの時間
8/50

7.帰ってきた日常

「おはよう、六花。眠れた?」

「あ、うん」



 一睡も出来なかったと言えば、お母さんがパートを休みかねないので、曖昧に答えておく。ニコニコと笑って朝ご飯を用意してくれた。白米に白味噌汁、具は豆腐となめ茸とネギ。味付けのりと卵焼き。これが、我が家の朝ご飯と決まっている。



 たまに、おばあちゃんからお漬物が届いたりするから、そう言うときは少しメニューが変わるけど。基本ご飯で食、パンはあまり食べない。パンも好きだけど、パン食にするとお昼頃お腹か空くだろうと言う理由から、ご飯。



 家族で食卓を囲むなんて、久しぶり。でも、わたしの中の久しぶりと、お父さんお母さんの中での久しぶりは違うみたいで、何年ぶりかの家族での食事に、お母さんは今にも泣きそうな顔をしている。お父さんは黙ってお味噌汁を飲み干す。



 考えれば、わたしが眠っている間……二人はどんな思いで、お見舞いに来てくれたんだろう。どんな気持ちで、わたしの顔を見ていたんだろう。夜中、寝れないわたしの部屋をこっそり、お母さんとお父さんが代わる代わる訪れたのを知っているから……考えてしまう。



 わたしが眠りにつく度に、二人はまた目覚めないんじゃないかと、心配して過ごしているんだろうか。そう考えると、胸が締め付けられた。これからは、元気な姿を見せて安心させてあげなくちゃ。



 朝ご飯を食べ終え、自室のベッドの上で正座をしてスマホを睨むように見る。現在時刻は朝の七時すぎ。今の時間なら、連絡しても大丈夫だと……思う。追加したそーちゃんの名前を見ながら、恐る恐るタップする。トーク画面が開き、わたしは短くおはようと入力して、送信。可愛いスタンプも追加で送信。



 すぐに画面を閉じて、ベッドに寝転がる。興奮した頭は、睡眠モードに中々切り替わってくれない。そーちゃんからの返事が来るまでは、一応待っているつもりではいるけど。ドキドキしながらも、待つこと十分。



 画面を開くと、返事がきていた。気のせいか、鼓動が早くなっているような。深呼吸を繰り返し、落ち着いてからタップして返事を見る。短文で、挨拶のみ。これから学校に行くから、また昼に連絡すると書いてあった。



「お昼まで、暇だな……」



 あ、そうじゃん。納戸の奥に仕舞ってある小さめのテーブルの拭き掃除をしようと思っていたんだった。いやいや、でもその前に睡眠はとっておいた方がいいよね。また変な時間に寝ちゃって、夜眠れないとか嫌だし。



 お母さんがパートに行ってくると言って家を出ていったので、一人きりになる。一階におりてみると、食卓テーブルの上にはおにぎりがお皿に二つ乗っていて、ラップがしてあった。敷いてあった紙を見ると、お昼ご飯に食べなさいとのこと。



 ありがたいなぁ、と思いながらも中の具は何だろうと考える。小四の時のわたしは、おにぎりの具だとツナマヨが好きだった。まぁ、今でも変わっていないけどね。おにぎりはありがたくお昼に頂戴するとして、納戸から仕舞ってあったテーブルを引っ張り出す。



 ホコリまみれで、思わずむせる。おまけに、汚い。長年仕舞い込んであっただけ、あるね。こりゃ掃除も骨が折れそう。ひとまず部屋の中が汚れないようにテーブルを庭に出す。仮眠するつもりだったけど、掃除をせねばという使命感に火がついてしまった。



 濡らした雑巾と、水の入ったバケツを持って庭に出る。相変わらずいい天気が続いているから、丁度いい。雑巾で汚れを拭っていく。雑巾が汚れたらバケツの水で洗って絞って、また汚れを落とす。繰り返していたら、手がスッカリ冷たくなってヒリヒリする。



 でも、ようやく汚れが落ちて綺麗になったので、今度は乾いたタオルで乾拭きする。ずっとしゃがんで作業をしていたから、腰が痛い。小さく「イテテ」と声を出して立ち上がって、テーブルを家の中に戻す。何か、年寄りみたいだな……。



 バケツの水は、汚れですっかり濁っている。これは、庭に流していいか。適当に庭に流して、ホースの水でバケツを軽く洗って元の場所に戻して、雑巾は石鹸で洗って干しておく。



 そんなこんなで、もうお昼である。テレビをつけると、ワイドショーがやっていて、芸能人の何やかんやが流れている。司会のおじさんが笑いをとっているのを眺めなから、お母さんが握ってくれたおにぎりをかじる。



 中の具は、予想通りツナマヨだった。時間が経って、海苔がふやけてしまっているけど、これが何気に好きだったりする。おにぎりの海苔って、パリパリ派とふにゃふにゃ派かわかれるよねー、なんてどうでもいいことを考えながら、二つのおにぎりを完食。



 お茶を飲んで一息ついたところで、携帯を見る。そーちゃんからラインがきていた。昼メシ、と送られてきたのはやけに豪華な弁当の写真だった。……あの強面男衆が作ったのかな。器用だな、彩りも綺麗だし、滅茶苦茶美味しそうじゃないか。



 おにぎりを二つ完食したばかりなのに、お腹が空きそう。それにしても、量多いな。高校男子って、こんなに食べるの? 小学生の頃のそーちゃんは、どちらかと言えば少食なほうだったと記憶しているけど。いつの間にこんなに食べるように……。


 

 わたしのお昼はおにぎりを二つ食べたよと伝えると、少ない、大丈夫かと割りと真面目に心配するような返事がきた。いや、わたしが少ないんじゃなくて、そーちゃんが多いんじゃないかな。突っ込まなかったけど。 



 何回かやり取りをしてるうちに、昼休みが終わったようで、また学校が終わったらと言って返信が途切れる。なんか……連絡、マメだなぁ~? 別にいいけどさ、むしろ嬉しいけども。彼女みたいって、ちょっと勘違いしちゃうじゃん?



 ダメだよ、そーちゃん。彼女いない身でこういうことしていたら、いざ彼女が出来たときに、こじれちゃうかもしれないぞ。うんうん、と一人うなずく。何様だよって感じだけどね。



 そう言えば、真理夏に連絡してなかった。だいぶ遅いけどおはよー、と送ると見事に遅い! と突っ込みを入れてくれた。その返事に、一人で笑ってしまう。真理夏とは、つい最近知り合ったばかりなのに、まるで昔からの友達のように話せる。



 なんか、不思議。同世代ではないけど、頼りになるお姉さん兼同性の友達が出来たって感じで嬉しい。真理夏は、高校を卒業してすぐに就職したみたいで、今は社会人らしい。バリバリのキャリアウーマンな姿が容易に想像できる。

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