表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼とわたしの風変わりな日常  作者: 赤オニ
これからの時間
7/50

6.クッキー作りと不安と

 あっという間に退院日がきた。お世話になった先生や看護師さんに挨拶を済ませて、迎えに来たお母さんの車に乗り込む。退院日は、十二月の十七日になった。今日はゆっくり休むとして、明日からお菓子作りの練習をしなければ。



 クリスマスイヴまで、あと一週間。そーちゃんが欲しがるものを、わたしはプレゼント出来るかな。思えば、お菓子を作ったのはあれが人生で初めてだった。まぁ、お菓子作りはキチンと分量や時間を計れば簡単なものなら美味しく作れると聞くし。



 近所は、ずいぶんと景色が変わっていた。新しい家が建っていたり、逆に家がなくなって更地になっていたり。リフォームされていたりとか、色々。見ていない間に、変わったんだなぁと思う。



 自室は、定期的にお母さんが掃除してくれていたのか、綺麗なまま保たれていた。中は小学生の使う学習机に、ベッドの上には小学生の頃好きだったアニメのキャラクターのぬいぐるみ。カーテンも可愛らしいピンクに花柄と、まさに小学生のまま時が止まっている。



 今日は、少し休むつもりだったけどやっぱり止めた。部屋の模様替えをしよう! この、いかにも小学生女児の部屋は止めよう。そうと決めたら即行動。部屋に散らかった漫画雑誌をまとめてビニール紐で縛り、どんどん運ぶ。ごみ袋片手に、ごみをばんばん捨てていく。



 小学校の教科書は、一応最低限取っておく。いつでも復習できるように。ぬいぐるみは、リサイクルショップに持っていって、ピンクに花柄と目がチカチカしそうなカーテンも外し、新しいものを夏ってもらう。今度は落ち着いた色の、黄緑色のカーテン。



 それにしても、ピンクに花柄とか、当時のわたしは何を考えていたんだろう。目がチカチカするわ、こんなド派手なカーテン。カーテンの花柄のように、頭の中もお花畑だったんじゃないかな……。



 半日かけて模様替えした部屋は、何となく落ち着いた感じになった。ぬいぐるみも、キャラものをなくして普通の動物のぬいぐるみだけ残した。学習机は今日すぐにどうにかできるわけじゃないから、お母さんに相談することに。



 このまま勢いで、お菓子も作ってしまおうと材料を買ってきて作り始める。クッキー生地を作る。チョコチップを練り込んで冷蔵庫で一旦冷やす。待ち時間はタイマーをセットして、本を読んで少し休む。タイマーが鳴った音で、よだれが出かかっていたことに気付き慌てて拭く。



 寝てたのか……半日で掃除を一気にやり遂げたもんな。体を伸ばして、意識がハッキリしてからクッキー作りの続きを始める。一口サイズに包丁で切って、クッキングシートを敷いたところに一口サイズのクッキー生地を並べる。オーブンに入れ、焼く。



 焦げないか心配で、オーブンの前でうろうろと落ち着かない。焼き終わり、そっと取り出して冷めるまで待つ。勉強の自習して冷めるまで待つ。見た目は焦げてなかったけど、今度は中まで火が通っているかが心配になる。



 食べてみないとわかんないよね……。ううん、早く冷めないかな。中学校の勉強をしながら、待つこと一時間。そろろろいいかなー、とキッチンに置いたクッキーを一つ手に取って口の中に放り込む。



「……うん、結構美味しい」



 ちょっと固い気もするけど、そこまで気にはならないし。なんだ、わたしでもお菓子、作れるんじゃん。良かった~。これならクリスマスイヴまでに何回か練習すれば、美味しいのが作れそう!



 ほっと一安心したととろで、疲れの限界がきたのでクッキーはまとめてタッパーに詰めて、片付けを軽く済ましてベッドに倒れ込む。体は疲れてぐったりとしているのに、気分は高揚していて目が冴えている。



 外を見るとすっかり橙色に染まっていた。ぼんやりと空を眺めている間に、寝落ちしていた。起きると、夜の二十一時で何とも中途半端な時間。おまけに、晩ご飯を食べそこねてしまった。



 すっかり暗くなった部屋の電気をつけて、あくびをしながら入院中に買ってもらったスマホをいじる。真理夏から連絡がきていたことに気付き、今の時間なら、まだ返事してもいいかなと思い返事を送る。内容は退院おめでとう、という言葉と一緒に花束を持ったスタンプ。



 ありがとう、と返すとすぐに既読がついた。そこから、やり取りをしていて気が付く。わたし、そーちゃんの連絡先……知らない! どうしよう? 真理夏に慌てて相談すると、そーちゃんの連絡先が送られてきたので、お礼を言ってそーちゃんを追加しておく。



 やり取りに夢中になっていると、夜中の零時を回っていた。そろそろ寝るねーと送って、真理夏からの可愛らしい了解! のスタンプを見てから電源を落とした。



 明日は何時に起きようかな。起きたらまず、そーちゃんにおはようと送ってみよう。それから午前中は勉強して、午後から学習机をどうにかして……。大きい学習机がなくなれば、部屋も広く使えるだろうし。



 学習机の代わりに、家で納戸に仕舞ってある小さめのテーブルをもらおう。勉強するには充分な大きさのテーブルだし、そこまで部屋を圧迫しない。そうと決まれば、明日は長年仕舞い込んであるテーブルの拭き掃除から始めよう。



 ふふふ、楽しみ。クリスマスイヴ前に無事退院出来て良かった。クリスマスパーティーとか、やってみたいなぁ。そーちゃんの誕生日を祝うのも兼ねて。うん、楽しそう。



 布団の中で体を丸め、目をつむるけど中々眠気がやってこない。んー、まぁ当たり前か。夕方から二十一時ぐらいまでと、変な時間帯に寝ちゃったもんな。眠れないのも当然か。親は二人とももう寝ているから、家の中は静まり返っている。



 そろそろと階段をおりて、キッチンでコップに水を汲んで飲む。ふぅ、とため息がこぼれる。退院したからには、高校探しもしなくちゃ。楽しみは当然あるけど、不安もあるっちゃある。



 わたしが、周りとどれだけずれているのか、そこが不安だった。仕方ないことだけど……うん、考えるとちょっとだけ怖い。真理夏は、話していてわたしの知らないことがあったら、丁寧に説明してくれる。でも、外に出ればそう言う人ばかりじゃないことも知ってる。



 考えても、意味ないか。高校に行きたいって言い出したのは、自分なんだから。そこら辺も、覚悟の上で行かないと。よし、頑張るぞー。ああ、でも途中から入ったとしても、ぞーちゃんのほうが先に卒業か。いや、まず同じ高校に入れるかわかんないし。



 第一、高校は自分が行きたいところに決めて行くものだ。何でもかんでもそーちゃんにくっついて回るのは、よくないよね。将来就きたい仕事とか、まだ決まっていないけど。これから、見付けられるといいな。



「さ、寝よ寝よ」



 ポツリともらして、二階の自室に戻る。ベッドにもぐって、布団をかぶって寝ようと試みてみるけど、寝付けない。ビックリするほど、眠気が来ない。これも中途半端な時間に寝たせいか。くそう、寝たいのに眠れない。


 

 結局その日は、一睡も出来ずに朝を迎えるはめになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ