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31.夏休み突入

 あっという間に梅雨明けして、季節は夏。登校するのに、日傘がほしいぐらい。日差しはじりじりと照りつけ、暑いのが苦手なわたしは冷房の効いた教室で机に突っ伏していた。登校するのに、外は汗が出るほど暑いのに電車の中は凍えるほど寒い。



 寒暖差が激しすぎる。毎朝登校するだけでぐったり。そういえば、もうすぐ夏休みを迎える。夏休みと言っても、レポートがあるから登校する日は結構多い。何のための休みなのか、休みと謳うのなら、レポートなんて出さないでほしい。



 わたしは小学生の頃から、夏休みに出る宿題に疑問を抱いていた。休みなのに、休みじゃない! 夏休みの度に出される好んでお友達になりたくない、夏休みの友。あれ、確か一度もすべてのページを埋めて出した記憶がない。



 大体八月の三十一日に、夜中までかけて半泣きで終わらせてわからないところはばんばん飛ばしてとりあえず解けるところだけ解く、みたいな形で出していた気がする。今思えば、そーちゃんに手伝ってもらえばよかったのでは。



「おはよー! ねぇねぇ、うちこの間商店街のくじ引きで最近出来たプールのチケット当たったんだ~。でも家が毎年家族で旅行行くからさ、誰かチケット使ってくれない?」



 この暑いのに、元気に登校してきた凛がペアチケットを振りながら言う。最近出来た近くのプールといえば、様々なウォータースライダーや水着でも入店可能なレストランが併設されているなど、夏休みに最も混むであろうスポットナンバーワンのところじゃないか。



 人混みが嫌いなわたしは、ソッコーパス。ほかの子から「目車先輩と行けばいいのに」と言われたけど、そもそもプール行っても泳げないので、浮き輪に乗って流れるプールで漂っているだけならいいけど。



 結局チケットは、彼氏と交際を初めて一ヶ月とラブラブ真っ最中の子の元へ。夏のレジャーか、小さい頃は家族でBBQとかしたり川へ行ったこともあるけど、大きくなるにつれなんだか面倒になっていくよね。



 外は暑いからら、今年の夏は冷房の効いた図書館でレポートをこなすことにしよう。あとは……イツキ先輩のお姉さんの店のバイトを、断りに行かないと。何度も考えたけど、店長さんを見るとどうしてもイツキ先輩を連想してしまって、ダメなんだ。



 一回しか行けなくてすごく申し訳ないし、引き受けておいて無責任だとは思うけどお断りすることにした。今日、学校帰りに寄る予定。……店長さんには、お世話になりっぱしで、何も返せなかった。



 流石に高校なだけあって、先生からテンプレみたいな「夏休みだからといってはしゃぎすぎないように」という注意の言葉はなかった。あれ、小学生までなのかな?



 学校帰り、夕方になってもまだ暑い道を歩いてお店の中へ。店長さんが、迎えてくれた。事件の経緯を知っているのか、何となく察したのか、謝罪された。



「樹の馬鹿が、迷惑をかけてしまったみたいで……」

「いえ……。あ、あの。本当に申し訳ないし、無責任だとは思うんですが、バイトを辞めたくて、今日は来ました」

「無理ないわ、気にしないで。つらいでしょうに、わざわざ店まで来てくれてありがとう」



 頭を下げ、店を後にする。久しぶりに見た店長さん、笑っていたけど憔悴しきっていた。やっぱり、弟のイツキ先輩のこと……かな。ううん、考えても意味ないんだから、早く忘れよう。



 次の日、嬉しそうにプールのチケットをもらった子が、風邪を引いたのでプールに行けなくなったからチケットをあげると手紙が家に届いた。中には、ペアチケットが。う、むむむ。手元にあっても仕方ないけど、このまま無駄にするのもなぁ。勿体ない精神が顔を出す。



 ……そーちゃん、誘おうかな。とりあえず、友達からプールのチケットをもらったのでよかったら行かないかと送りかけて、ちょっと可愛いげがないかな? と考え直す。この間、物凄い勢いで拒絶してしまったし……目が腫れている姿を見られたくなかったからなんたけど。



 そのお詫びも兼ねて、真理夏に相談することにした。事件以来会っていなかったので、ケーキが美味しいと有名な喫茶店で話をすることにした。



「ふぅん、だからあの日落ち込んでたのね~、そうのやつ」

「え? 何が?」

「うふふ、なーんでもっ。そうとなったら、可愛い水着買わないとね」

「ま、まだ誘ってないよ」

「大丈夫大丈夫、絶対来るって。あ、このケーキ美味しい」



 紅茶のお供にケーキを食べながら、真理夏が自信たっぷりに言う。何でそんなに自信あるんだろう? まぁでも、確かに可愛い水着はほしい。真理夏と一緒に買いに行くのも、楽しそう。



「じゃあ、今度の日曜日に水着買いに行きましょう。その間に、そうを誘っておいて。決まりね」

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