表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/50

20.短期バイトが決まりました

 お出掛け気分だけど、凛にとっては片想いの相手との大事なデート? だし、やっぱり適当な服装ではイカンだろうと思い、Wデートの前に以前イツキ先輩に連れていってもらったオシャレなショップに学校帰りに寄ることにした。



 恐る恐るショップに入ると、店長さんをすぐに見付けることが出来た。声をかけると、嬉しそうに「この間の!」と笑いかけてくれる。事情を説明すると、なぜか少し残念そうな顔をしていた。



 もしかして、出掛ける相手がイツキ先輩じゃないからかな。この間、店長さんからイツキ先輩をよろしくされていたのを、思い出す。そうは言われても、イツキ先輩は気のいい先輩だ。それ以上でもなければ、それ以下でもない。



 ファッション雑誌を見ても、自分に似合う服がわからないので、やはりここはプロに教えてもらうのが一番だと思ったのだ。何せ、ファッション雑誌に載っているのは背が高くて、スタイルのいいプロのモデルさんばかり。



 背が低く、幼児体型のわたしがモデルさんの真似をしても、服に着られている感が出てしまうだろうし。それではダメなのである。女の子としては、可愛い服は着たいけど、それが自分に似合わないものだったら嬉しくない。



 自分に似合う、可愛い服を着たい。わがままかもしれないけど、それが本音。別に大人っぽく見せたいとか、そういう要望があるわけじゃない。ただ、高校生の自分の感覚で服を選ぶのが、まだ難しい。



 高校生活にも慣れてきたし、最近はバイトを始めてみようと思って、求人広告に目を通したり、ネットで探してみたりしている。中々いいバイト先が見つからないけど、バイトを始めたら多少は懐に余裕も出来るというものだ。と思う。



「Wデート、お友達が主役なら、控え目な服装のがいいかもね」

「確かに! それは考えていなかったです。じゃあ、あまり明るい色は避けたほうがいいですかね?」

「そうねぇ、お友達が普段どんな服装なのかにもよるけど……。とりあえず、服持ってくるわね」

「はい!」



 ちょっと待ってて、と言われて椅子に腰掛け待つこと十分。紙袋一杯に詰まった服を、急いで持ってきたのか額に汗を浮かべてわたしの目の前に置く。中から一枚一枚丁寧に取り出して机に並べていく。



 どれも店に並んでいる商品と違って小さめで、細身のものばかり。タグもついていない。もしかして……? これ、店長さんの私物では。店長さんに視線を向けると、その目はすでに真剣に服を選んでいる。声をかけれる雰囲気ではなかった。



 試着室に入って、一時間以上は着せ替え人形状態だった。何度も脱いでは着て、をひたすら繰り返す。服はどれも、わたしの体のサイズに丁度よくて、着せ替え人形してても結構、楽しい。



 最終的にトップスは白で、後ろがレース模様になった可愛らしいもので、ボトムスが黒のショートパンツに決まった。ちなみに、やっぱり服は店長さんの私物……中学生ぐらいの頃に着ていた服なんだとか。



 流石に小学生のときの服は残っていないけど、思い出深い服は残してあると言う。そんな大切な服を借りてもいいのかと聞くと、気にしなくていいと笑ってくれた。……バイトを始めたら、絶対にこのショップの商品を一番に買おうと決めた。



「むしろ、そんなに喜んで着てくれるなら、あげるわよ。サイズも丁度いいみたいだし?」

「や、流石に悪いです……!」

「んー、じゃあさ。六花ちゃん、まだバイトとかしてない?」

「してません」

「よかったらでいいんだけど……うちの店で働かない? そしたら、その服は働くための服としてあげるわ」



 驚きのあまり、ポカン、と口を間抜けに開く。え、いやいやいや、だってこの店にある服、モデルさん向けの服ばかりでしょ。わたしぐらいの背丈の子が着られるような服、見てないし。



 そもそも、わたし接客業は無理だと思うから、裏方の仕事探しているんですが……。なぜ、わたし? 疑問符で頭の中が一杯になる。店長さんは、照れたように視線をさ迷わせながら、特別ね、と話してくれた。



「実はね、最近の小学生って結構……ほら、おませさんでしょう? だから、そういう小学生をターゲットにした服を考えていて、そのモデルになってほしいの。短期バイトみたいなものよ。高校生の六花ちゃんにこんな頼みするのも失礼なのはわかっているんだけど……」

「……接客業では、ないですか?」

「そうね。だけど、服をお披露目する場では、結構な人数に見られることになるけど」



 悪くない話では、ある。探しているバイト先が見つかるし、接客業でもない。高校生なのに、小学生としてのモデルをやるのはなんと言うか、こう……胸元の寂しさが憎くなるけど。



 でも、店長さんには前回イツキ先輩に連れ出されたときもそうだけど、全然知らない相手なのに、すごくよくしてくれている。何か返せるものがあるのなら、ここで働くのが一番かも。

 


 それに、短期バイトなら、また次に好きなバイト先を撰べばいい話なわけで……。うんうん、なんかいいかも。短期バイト引き受けてオシャレな服が手に入るなら、わたしも素直に受けとることが出来る。



 わたしは、短期バイトを引き受けることを決めた。モデルっていい響きだけど、実際は小学生としてのモデルだからね……そこがちょっと、うん、悲しいかな。



「わかりました。短期なら」

「ありがとう! すごく助かるわ!」



 接客じゃないし、大丈夫……だよ、ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ