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19.お出掛けの提案

 その後どうなったかと言えばーー、わたしとそーちゃんは変わらず、高校生活を送っているわけである。騒動があって以来、そーちゃんは将来のことを、自分の頭でよく考えると口にした。



 関係しているのか、我らが高校の名物? でもあったそーちゃんとイツキ先輩との、ド派手な喧嘩が激減したそうな。おかげで、わたしも安心して勉強に専念出来るというものだ。



 そーちゃんのお父さんは何を考えているのかわからないけど、突然「将来は爽弥の好きにしたらいい」と言ってきたそうな。これにはそーちゃんも驚いたみたい。まさか、親父からこんな言葉が出るなんて……と、話していた。



 イツキ先輩は、喧嘩相手がいなくて退屈なのか、わたしをサボりに誘う回数が増えた。当然だけど、スルーしている。我が物顔で一年の教室に入ってきては、わたしの周りをうろちょろするのはたいへん鬱陶しい。



 騒動があって以降、わたしや真理夏のことを避けることはなくなったけど、やっぱり考えることもあるのか……中々以前のようにとはいかないのが、もどかしいばかり。避けられることがなくなったのは、嬉しいけど。



 高校生活にも慣れてきて、同じ学年の女子とも少しずつではあるけど、話が出来るようにもなった。同性の話し相手がいるのは、やっぱり嬉しい。話題は様々。



 彼氏に対する愚痴や、恋人が中々出来ないことへの不満をもらしていたりする。あとは、コスメのオススメのブランドはどこかとか、可愛くて比較的お財布に優しいブランドの服とか、まさに女子! って感じの会話が多い。



「――あ」



 いつものメンバーで集まって弁当を食べていると、一人が小さく声をもらした。ご飯を箸でつついていたわたしは、顔をあげる。すでにお昼ご飯のパンを食べ終えて、野菜ジュースを飲んでいた子が、開いていたファッション雑誌を閉じて両手を合わせる。



「今週末、うちの好きな人と会うの。誰かWデート出来ない?」



 他のメンバーは、お互いに顔を見合わせる。わたしを除いて、皆彼氏持ちだったり好きな人がいたりと青春してるから、自分には関係のない話だなー、と考えてのんびりご飯を食べるのを再開する。



 多分、今週末空いている子が彼氏か好きな人連れて行くんだろう。好きな人と行けば、もしかしたらWデートのおかげで付き合えるかもしれない。そうなったら、お互いにおいしい話だろうし、今のところ恋愛に興味がないわたしは傍観するのみ。



 するとなぜか、不意に彼氏持ちの一人がわたしに視線を向ける。何か言いたげな様子に、目で何か、と問いかけるとサッと逸らされてしまった。何だったの。



「はいはい、名案浮かびました!」

「なになに?」

「六花が目車先輩と行ったらいいと思いまーす」



 さっき視線を向けてきた子がそんなことを言い出して、突然話を振られぎょっとする。箸落っことすかと思った。むせないようによくかんで飲み込んで、お茶をぐいっと飲み干してから、口を開く。



「何で、わたし!?」

「だってほら、六花って目車先輩の幼馴染みなんでしょう? だったら別に一緒に出掛けてもおかしくないし、恋のキューピットになってやんなよー」



 むむ。確かに、そう言われるとそうかもしれない。それに、騒動後以来そーちゃんと何だかギクシャクしているのを解消する、いい機会になるかもしれない。とにもかくにも、相談なしでは決められないこと。



 スマホを取り出して、そーちゃんに相談してみることにした。まぁ、わたしはあくまでもそーちゃんと遊びに出掛けたいだけで、デートってほどのもんじゃないけど。



 まだ、相談の段階だし……と思っていたら、割りと早く返事がきた。お出掛け、オッケーみたい。やった、これで少しでも、ギクシャクした空気がとけるといいなぁ。



「いいってさ」

「マジで!? ありがとう~! 今度六花の好きなアイス奢るね」

「ホント? やった」



 そんなわけで、友達の凛と片想いしてる男の人、そしてわたしとそーちゃんのお出掛けの日が決まった。別名、Wデートとも言う。凛はすごく嬉しそうに笑っていて、そんな姿を見ると恋する乙女はいいねぇ、なんて感想を抱いてしまう。



 おかしいな、わたしも青春しててもおかしくない年頃なのに、恋愛にまったく興味がわかない。……まぁ、わたしは高校生活という青春だけで充分だよ。ずっと、憧れていたもの。恋愛する時間があったら高校生活をエンジョイしなくちゃ!



 ところで、凛はすごく美人さんなんだけど、中学生の頃から片想いの相手一筋で、未だにその恋は実っていない。なんたること、わたしが凛の片想いの相手なら、こんなに一途に想ってくれる相手は気になってもおかしくないのに。



 凛曰く、相手は童顔で可愛い顔をしているけど、成人済みの立派な大人。知り合ったキッカケは、しつこいナンパに困っていたところを助けてもらったんだとか。だけど、中学生の頃から想い続けている相手なのに、凛の持っている情報が少ないことにちょっとだけ、違和感を感じた。



 しかし、わたしの頭の中はそーちゃんと出掛けられる嬉しさと、奢ってもらうアイスのことで一杯で、そこまで深く考えたりはしなかった。アイス、何奢ってもらおうかなー。期間限定のフレーバーとかがいいかも。楽しみだなぁ……!

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