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閑話 とある人物との出会い1

 退院してから――中学生の勉強をしていて、なるべくお金がかからないように、無料で勉強出来るサイトはないか、携帯でネットを開いて探す。探していた途中で見付けたのが、お互いに勉強を教え合うという、掲示板。


 

 試しに、挨拶と一緒にわからない問題を掲示板に書き込むと、早速HN(ハンドルネーム)楓という人から返事が。女の人のようで、丁寧でわかりやすく教えてくれた。わたしが、慣れない掲示板の書き込みに悪戦苦闘しながらお礼を言うと、優しくまた書き込んでねと。



 その日から掲示板をよく覗くようになった。掲示板には、色んな年の人がいるみたい。中学生、高校生が割りと多いけど、驚くことに中には小学生もいた。中学生の問題が書き込まれると、わたしも一緒に勉強する。



 しばらくはそんな感じで、書き込まないことが多かったけど、どうしてもわからないところがあると、時々書き込む。たまに別の人から返事が来るけど、基本的には楓さんが答えてくれる。



 そんな風にやり取りをしていくうちに、この掲示板によくいる人たちで、会って勉強会をしようと提案が出た。参加出来るのは10代まで、会う場所は人の多いところで、など色々詳しく決めていた。提案したのは、楓さんだ。



 いわゆる、オフ会というやつか。でも、十代だけだし、人が多い場所で会うなら……いっか。参加人数を募っていたところに、わたしも参加することを伝える。少し不安もあったけど、お母さんには友達と会うと伝えた。



 オフ会の日までも、何度か掲示板に書き込んで勉強に励む。掲示板と、楓さんのおかげでずいぶんと勉強が進んだ。ありがたく思いながら、着ていく服を考える。小学生に見えない服装……難しいな。



 そんなことを考えながらも、当日。お気に入りの赤色のワンピースを着て、髪の毛はサイドで三つ編みにして縛る。髪ゴムについリボンのついたものを選びそうになって、小学生のくせが抜けないなぁと苦笑してしまう。



 黒のショルダーバッグを肩にかけて、中には財布とスマホ、ハンカチやポケットティッシュなどを入れる。出掛ける前に姿見でよくチェックして、家を出た。



 電車に乗って待ち合わせ場所に向かうと、すでに待っている人たちがいた。もしかして、わたしが一番遅れた!? と焦って駆け寄る。声をかけると、予想通り皆わたしより背が高い。必然的に、見上げる形に。



 中には、高校生の女子で十センチはあるんじゃないかってぐらい高いヒールをはいている子も。どうやら、まだ主催者の楓さんがいないらしい。メンバーは、高校生が三人、中学生が一人、学生じゃないわたしが一人、楓さんと全員で六人。



「ありゃぁ、まさか主催者の()が一番遅れるとは……申し訳ない」



 高めの男声に、皆が振り向く。そこに立っていたのは、高校生ぐらいの男の子だった。まさか……この人が楓さん? ビックリした。てっきり、女の人だとばかり思っていたから。しかも、まさかの高校生? 大学生かと……。何だか、とっても意外。



 皆、同じことを考えていたようで固まっている。楓さんは、ニコニコと人の良さそうな笑顔でマイペースに自己紹介を始めた。服装は爽やかな白シャツに、黒のズボン。まるで、学生服のままきたような印象を受けてしまう。



「僕は山田太郎。十九歳だよ。すごくありふれた名前を名乗ったのはね、やっぱり主催者としては本名を名乗るべきだと思っていてね。君たちは別にHNでいいよ。今日一日、よろしく」

「えっと、花です。十五歳です」



 ネット上での楓さんは、あまり自分のことは話さない人だったから、こんなによく話す人とは思っていなかったなぁと考えながら、つられてわたしも自己紹介を軽く済ませると、ぎょっとしたように皆に視線を注がれる。



 楓さん……もとい、太郎さんまで驚いたように目を丸くしていた。むう、やっぱり十五歳には見えないか。何とか持っている服や、髪型で大人っぽくしてきたつもりなんだけど。つい、自分の貧相な胸元に視線が向いてしまう。



 何となく、皆それぞれが軽い自己紹介を済ませる。高いヒールをはいて、ガッツリ化粧をしている女子は高校一年のミナミちゃん。平凡で、どこにでもいそうな感じの男の子も高校一年、りく君。ピアスにアクセサリーがジャラジャラの派手系女子は高校二年、愛ちゃん。そして真面目そうな顔の中学二年、長宮君。



 自己紹介が終わったところで、皆でファミレスに移動する。食事を終えて、勉強道具を取り出して教え合いながら、勉強をする。太郎さんは、女の人ではなかったけど、実際に会うと紳士的で丁寧に教えてくれた。



 中学生の長宮君のことを考えて、夕方の五時には解散することに。いつの間にか女子二人は太郎さんにすっかりなついて、連絡先を交換していたようだ。わたしは掲示板で話せるならいいかなと思ってそのまま別れようとしたら、太郎さんに連絡先を教えてほしいと言われる。



 連絡先を交換済みなのは、中学二年の長宮君とだけだ。やっぱり、中学生の勉強をするなら現役に聞くのが一番早いと思ったからら。女子二人は、太郎さんに腕を絡ませている。ハーレム…。



 そんな状態で聞くかと思いつつも、まぁ別にいいかと交換する。なぜか、太郎さんは満足そうだった。変わっている人だな。

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