『幕間1:ストーリーテラー』
――さて。ここまでの物語は、実はまだ序章にしか過ぎない。
ん? ボクが誰か……だって?
ボクはこのルピナスにおいて、人々を傍観している存在だ。
……そうだなぁ。ここはあえて、ストーリーテラーとでも名乗っておこうか。
ストーリーテラー……いわゆる物語の語り部というやつだ。
この物語はあくまで『ハヤテ』を中心として回っているが、世界は彼一人だけで回っているわけじゃない。
だからボクは物語の『鍵』について纏めていこうと思う。
世界を客観的に見られるボクの『魔法』が、少しでも君らの謎を紐解く助力となることを願う。
まず、この世界には『魔法』と、その対価である『七つの大罪』が存在する。
『魔法』の属性は14に分けられ、使える内容によりさらに幾つもの系統に分類される。
属性については物語に記された通りとして、系統はどんなものがあるかって?
それはボクにもわからない。
『魔法』とは系統樹のように効果の似通ったものが細々と枝分かれしている。
その数は無限と言ってもいいくらいだろう。
しかし魔法という奇跡を得た人間には代償も与えられた。
『七つの大罪』とは、嫉妬、強欲、憤怒、色欲、怠惰、傲慢、暴食のどれかが人よりも色濃く秀でてしまっていることだ。
どれが抜きん出ているかは属性で分類することが可能だ。
『魔法』と同じく、人によりどの大罪がどんなことに対して強く出るのかには個人差がある。
良いことばかりとは限らないのだから、『魔法』を言い換えるならば『人の身に余る奇跡』というところだろうか。
その奇跡を『幸運』として体現しているのが『ハヤテ』だ。
『魔法』の中でも、倫理を侵害する効果や、因果への干渉を及ぼす効果、心身に異常をきたす効果があるものは『禁術』と呼ばれる。
……ところで君は気付いただろうか?
このルピナスの世界には『七つの国』が存在する。
全て名前が出てきたので列挙しておこう。
魔法都市スペルフィル、ドロップリア王国、ナチュレ国、大和ノ国、スカンディナヴィア、ホロウリィ、ルクスリア。
それぞれの国の特徴については後に触れるとする。
きっと彼らの旅路の一部となるだろうからね。
……では今回はここまでとしようか。
次はいつ会えるか?
君がこの物語を読み続けるのならば、必ずまた会えるだろう。
このルピナスの世界で、本当のボクを見つけてくれることを願うとするよ。
いいかい? あくまでここまでが長い長いプロローグだ。
血を恐れ、戦いを好まない、ドロップリア王国副団長の『レイン』
彼女を守ると剣に誓った、魔法をほとんど使えぬ剣士『フレア』
名前や感情を偽ることで、自らの本性を隠そうとする『トール』
これから『ハヤテ』は、この新たな『家族』と共に、グリーングラスの外へと旅立つ。
彼らの冒険は、ここから始まる――