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武家の嗜み  作者: 澪亜
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私の再会

本日5話目の投稿です

淑女科の授業については、オーレリア様にかつて学んだことの復習のようだった。

全科混合クラスでの基礎学についても、それは同じ。

おかげで躓きらしい躓きもないので、一安心といったところか。

探り探りの生活の中で、まだ特定の仲の良い方というのはいないものの、それでも中々に好調な滑り出しと言えよう。


「……あの、貴女メルリス様ですよね」


談話室でのんびりお茶を飲んでいたところで、突然声をかけられた。

聞き覚えのある声だと思いつつ視線を上げると、そこにいたのはやはりシャリア様。

シャリア・ルル・テルローズ。かつて王都で子女誘拐事件があった際に、救出した少女の一人だ。


「ええ……そうです。貴女はシャリア様ですね」


「覚えていただき、光栄です。……次の教室まで、ご一緒しても?」


「勿論です」


そうして、シャリア様は私の前の椅子に腰をかけた。

混合クラスで同じクラスのシャリア様が、何度か私に声をかけようとしていたことを知っている。

……普通社交界では初対面で爵位が下の者から声をかけることはありえないのだが、この学園内ではその限りではない。

でなければ、いつまで経ってもクラス内での親交など深められないだろうし。

兎も角、声をかけたければ彼女からいつかはかけてくるだろうと、気づいていながらそのままにしていた。

……メルを知る彼女に不用意に近づくと、ボロが出てしまいそうで。


「メルリス様、御礼をお伝えしなければならないと思いつつ今までできなかったこと、お許し下さいませ」


「御礼、でございますか?」


「ええ。……実は私、以前メルリス様の護衛の方に助けていただいたことがあるのです。ほら、何年か前に王都で女の子を誘拐するという事件がありましたでしょう? 実は私、その誘拐された一人でして……」


当時事件は大々的に公表されたものの、その被害者は公開されていない。

それは被害者である少女たちが、好奇な視線に晒されないようにという配慮のためだった。

そして同じ理由で、彼女たちもその事実を漏らさないようにしてきた筈だったのだが……。


思いの外メルではない私にあっさりと言ったなと、メルと同一人物だと既に疑われているのか、それとも彼女がそれ程に大胆かつ剛毅なのか……判断に迷うところだ。


「まあ、そうでしたの……事件はメルより聞いておりましたわ。貴女がご無事で良かった」


「え?え、ええ……そうですわね。それも、メル様のおかげです。ありがとうございます」


「いえ、彼女は職務を全うしただけのこと。……ですが、その過程で救われた方が御礼をお伝え下さることは、彼女にとって最高の誉でしょう」


「メルリス様は……」


彼女は何かを言いかけて、結局口を閉ざす。


「どうかなさいましたか?」


「いえ。……折角こうしてお会いできたのですもの、今後是非ともメルリス様と親交を深めさせていただきたいのですが……」


「勿論、私も同じ思いですわ。今後とも、よろしくお願い致します」


シャリア様の申し出に、迷いなく同意した。

今彼女と話をしていて、彼女のその言葉を飾らない会話に仲良くなりたいと思っていたのだ。

……尤も、正直なところ彼女への好感度は初めから高かった。

何かキッカケがあれば、すぐにでも仲良くなりたいと伝えたかったほどには。


『本当に、ありがとう。貴女が私たちを守ってくれたから……私は、私たちは無事なの。感謝してもしきれないわ』


『私たちのために被った泥を、どうして厭うことができるというの?本当に、ありがとう』


あの事件のときに、彼女がくれた言葉は今でも私の宝物だ。

誰かに自分の進む道を肯定されることの心地良さを知り、そして自分がその進むことで喪う恐怖を味あわせることなく救い出すことができたのだと安堵した。

むしろ、あの事件で私の方こそが……彼女に救われたのだ。


「これからよろしくお願い致しますわね、シャリア様」



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