表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武家の嗜み  作者: 澪亜
49/144

美への苦行

本日投稿2話目です

「……甘酸っぱいわねえ」


それから数日後、私はマダムの店に相談するため一人で訪ねていた。

相談内容は、どうしたらお姉さま達のような女の人らしい……可愛らしい子になれるか、だ。


その、今まで全く気にしてなかったと言えば嘘になるが……それでもここ最近は特に気にしていたのだ。

私が、全く女の子らしくないことに。


戦うための、短い髪。

傷だらけのこの、身体。


それを、悔やんだことも卑下したこともない。

むしろ、誇りにすら思っているのだから。


けれども、ルイの隣に立った時……どうしても、気になってしまうのだ。


果たして、彼は私が女だと気付いているのだろうか?

女として、見てくれているのだろうか?

……そんな、ことを。



とはいえ、侯爵家の面々の誰に相談できるかといえば……。

思い浮かぶ人が、いない。

そもそも、街に一人で出たと露見するのが怖いし。


それに何より、前々からマダムのお店のお姉さまがたが綺麗で良いな……とずっと思っていたのだ。


ということで、マダムのお店を訪ねたのだけれども……。


結果、根掘り葉堀りお姉さん達に質問されて、大方話してしまったというのが事の顛末。

お姉さん達は皆、生温かい目で私を優しく見つめてくれている。

それがかえって、気恥ずかしい。


「……は、話は戻しますけど。それで、どうしたらお姉さん達のように綺麗になれますか?」


そう再び問えば、お姉さまがたが笑う。


「何を言っているのかしら、メルちゃんは」


クスクスと笑いつつ、ルルリアさんが言葉を発した。

……やっぱり、私なんかが可愛くなりたいなんて……土台無理な話かと諦めかけた時。


「こら、皆。ちゃんと言葉にしないと、ダメよ?メルちゃん明後日の方向に勘違いしちゃっているから」


マダムがそう言って、皆を嗜める。


「あら、ごめんなさい。メルちゃん。でも、今更何を言っているのかしらと思ったら、可笑しくって」


クスクスとやっぱり笑いながら、ルルリアさんが私の頰に手を伸ばす。


「メルちゃんはもう、女の子が一番可愛くなる魔法にかかっているのに。今更可愛くなりたいからどうすれば良いか、だなんて……」


「……一番可愛くなる、魔法?」


「気持ちよ、気持ち。前にも言ったでしょう? 可愛くなりたいって、そう思ったら女の子はいつだって可愛くなれるのよ」


「そうそう。特に、恋する乙女は最強よね」


ムニムニと、お姉さまがたが私の頰を撫で倒す。

「……こ、恋!?」


「してるでしょ、メルちゃん」


「そうねー。どう考えても、恋する乙女の発想だと思うけど?」


私の過剰な反応にお姉さまたちは笑う。

恋、恋、恋……!?


「あら、そこからか」


茹で上がる私に、お姉さまは苦笑いをしていた。


「彼のために、綺麗になりたいと思ったのでしょう?」


ルルリアさんの言葉に、悩みつつ私は頷く。


「彼の言動に一喜一憂して……でも、それが幸せでしょう?」


私は再び、その言葉に頷いた。


「メルちゃん、彼の他にそう感じる人はいる?」


私は、首を横に振る。


「それが、答えなんじゃないかしら?なんて、私が言うのも野暮ね。素直になれば、答えはメルちゃんの中にあるもの」


ふと、ルイのことを考える。

余計なことをあれやこれやと考えずに、ただただ彼のことを思う。


彼のことを思うだけで、ドキドキして。

嬉しくって、幸せで。

……彼にしか感じない、この特別な感覚。

その特別を、恋と呼ぶのであれば。

私は、確かに彼に恋をしている。


「それはともかく、恋する乙女はそれだけでどんどん綺麗になるのよ」


別のお姉さんのその言葉に、私は首を傾げた。


「あら、信じていないでしょ?」


鋭いルルリアさんの言葉に、私は言葉を詰まらせる。


「じゃあ言うけど。メルちゃん、この前と違って毎日髪をケアしているでしょ?」


……確かに。

少しでも何かできればなあと、ばあやに教えてもらった方法で毎晩髪をケアしている。


「彼を意識する前に、それ、していた?」


その問いに、私は首を横に振る。


「肌も、前よりも艶やか。何かしているわね?」


別のお姉さんからの鋭い指摘に、今度は首を縦に振るった。

お姉さまの言う通り、髪と同じく顔もばあやに教えて貰った方法でケアを毎晩している。


「そうやってね、ちょっとしたことに気をつけていくのを積み重ねるの。美に近道はないわ。少しずつ、していきましょうね」


「……まあ、メルちゃんは元が良いからね。すぐに皆が振り返るような美女になると思うけど」


「そうそう。まずはメルちゃん。自信を持ちなさい。貴女が自分を信じないで、誰が信じるというの?」


なるほど、と無条件で思うような深いその言葉に私は真剣に頷いた。


「良し。じゃあ、コレから少しずつ更に可愛くなれるように頑張りましょうね。私たちも、応援するわ」


「ありがとうございます、お姉さまたち」


「……でも、その前にメルちゃん。もうちょっと、メルちゃんのその甘酸っぱい話を聞かせて」


ギラリとお姉さんたちの目が、妖しく光る。


「……へ?」


その後、散々お姉さん達に弄られた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ