訓練
私は目を開けた。
同時に、思考が現実に戻る。
そろそろ私の番だと立ち上がり、剣を手に取った。
その予測通り訓練場では片方の男が倒れ、審判が勝者の名を叫んだ。
……観客はいないため歓声も何もないけれども、それでも勝者は誇らしげに立っていた。
この場の空気を変えるように、審判役を務める男が私の名を呼んだ。
そして、相手の名前も。
慌てることなく、けれども相手を待たせないように訓練場へと上がる。
目の前には、大きな男。
それも、鍛え抜かれた筋肉が圧倒的な存在感を示し、私よりも一回りもふた回りも大きい男だった。
私は訓練用の、刃の潰れた剣を抜く。
こんな小娘相手ではあるが、相手は侮った様子もなく同じく剣を抜いていた。
……相手にとって、不足なし。
そうして互いに構えたところで、審判の開始の声が響いた。
カンカンカン、と訓練用の刃を潰した剣がぶつかり合う音が響く。
相手の動きは力強く、けれども逆に言えば力任せな剣筋だ。
相手の動きをよく見て、呼吸を感じ取る。
そうして予測した瞬間先の彼の動きを対処すべく、体を動かす。
……いつも自分に言い聞かせるている言葉を頭の片隅で思い浮かべながら、私は相手の剣を避けつつ反攻した。
相手は私の剣を剣で受け止めた。
剣をぶつかり合わせ続けていても力負けすると、私はすぐさま退がる。
そして再び、相手の懐めがけて駆け出した。
相手は冷静に駆け寄る私めがけ、剣を振るう。
それを私は剣で受けようと、タイミングを合わせて剣を振るった。
相手はほんの一瞬驚いたような表情を浮かべたけれども、すぐにそれを振り払って全力で振り下ろしてくれた。
甘えの一切ない、素早く重そうな剣戟。
その相手の力を、私は受けとめずに受け流す。
「おうわっ……!」
いいように流されてくれて、体勢を崩した相手の懐に入り剣で殴りつけるように振るった。
そして、うつ伏せに倒れた相手の首元に剣を置く。
「……そこまで! 勝者、メル!!」
審判の声と共に、私は剣を収めた。
お母様が亡くなってから、早七年。
……私は毎日、こうして剣の腕を磨いている。




