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武家の嗜み  作者: 澪亜
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彼との再会

本日18話目の更新です

翌日、私はアルメリア公爵家別邸に向かった。

長く空けていたつもりはないのだけれども、酷く懐かしい。

汚れのない白亜の建物が立ち並ぶ様は、とても眩しくて美しかった。


「……メリー」


屋敷に入ってすぐのところで、私の愛しい婚約者が両手を広げた状態で出迎えてくれた。

人の目を忘れ、私は彼の懐に飛び込む。


「ルイ……!」


ルイはそんな私の背に手を回し、ギュッと強く抱きしめてくれた。

暫くその体制でずっといた。

彼の温もり、匂い……記憶にあるそれらと寸分も変わらないことに、私は安堵の息を漏らす。

……どれぐらい、そうしていただろうか。

やがて彼が少しだけ私から離れると、エスコートするように私をその場から連れ出してくれた。

そして私たちは、室内でピタリと隙間もないほどにくっつき合って椅子に腰掛ける。


「……よく、戻って来てくれた」


「ありがとう、ルイ。貴方のおかげ。……貴方が早く物資を送ってくれたおかげで、私は敵地に潜伏することができた。そしてだからこそ、奴らの動きを止めることができた」


「お前の役に立ったのなら、良かった」


彼の胸元にもたれかあかるように座り、彼の鼓動に耳を傾けているようだった。


「でも、ごめんなさい……貴方の、大切な人を……守り切ることができなかったの……」


ギュっと、彼の胸元の服を握り締めた。


「ああ……ああ、聞いている。その上で言わせてもらうが、あれはお前のせいではない。あれは、ベルン自身が選択した結果だ」


「……ベルン?」


聞き覚えのない名前に、首を傾げる。

ああ……もしかしてそれは……。


「あいつの名前だよ。俺と、アルフと父上しか知らない名前。そしてこれからも……」


やはり、彼の本当の名前だったのか。

やっと、知ることができた彼の名前。

忘れるつもりなど、元よりない。

元よりないのだが……刻み込もうと、私は内心彼の名を呟く。


「……ねえ、ルイ。ベルンの葬儀、公なものはできないのよね?」


「ああ。父上とアルフそれから俺だけで、葬儀をしたんだ。職務上、やはり公にはできないからな」


「お墓は、アルメリア公爵家の共同墓地よね?」


「そうだ。本来は国軍の共同墓地に墓があるべきなのだろうが……今後入隊する者たちのことも考えて、アルメリア公爵家の墓地に墓を建てさせて貰った」


ベルンはともかく、他の面々の素性はその秘匿性故に未だ私も知らない。

中には、エナリーヌのように女性が入隊する機会も増えていくかもしれない。


女人禁止の国軍の墓地に女性の名の墓標を建てる訳にもいかず、そうすると今後入隊する面々のためにもと、アルメリア公爵家の共同墓地に彼の墓を作ったそうだ。

そしてその横には、アンナの墓も建立している。


「……ならば、私もこれから弔いに行くわ。そしてその後……彼とアンナの話をさせて。彼らを偲ぶために」


「ああ……分かった」


そして私たちは、そのままベルンとアンナの墓に向かった。


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