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武家の嗜み  作者: 澪亜
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父の嘆き

内容を第6部より場面を追加したかったために刷新しております。また、これまでの部分についても細かいところを変えています。大変申し訳ございませんが、改めてお読みいただけると幸いです。(12月3日更新五話目です)

※ダイジェスト化は、ございません。

「……ご当主。あのような子を、どこで見つけたのですか?」


護衛隊隊長を任せているガリヤの言葉に、儂は苦笑いを浮かべた。


「何だ? 気になるのか」


「はい。彼女の実力故に」


「あり得ないですよ。あの幼さで、護衛隊の奴らと同等以上の実力なのですから」


ガリヤの横から、護衛隊副隊長を務めるシュレーがそう言葉を続けた。

シュレーは若いながらも、副隊長を務めるだけの力量を持っている。


ガリヤとシュレー……護衛隊一の実力者とその次席の者たちから揃いも揃って僅か一日も早くも賞賛されるとは……娘の実力が認められるとは。


思わず、つい小さく息を吐いた。


「それだけじゃ連中も面白くないでしょうが……。訓練後の彼女の自主練を見て、全員そんな思いも吹っ飛んだみたいですね。何人かが面白そうだからって観察していましたが、もれなく全員の顔が青ざめていましたよ。勿論、後からそれを聞いた奴も含めて。入隊合宿を思い出すとね」


入隊合宿……別名、地獄の洗礼と何故か呼ばれておるそれ。

儂が直々に内容を考えて、実施させている訓練だ。


……まあ、確かに強い強いと持て囃されて入ってきた者たちの鼻っ面を折るために、多少厳しくしているかもしれないが……そんな、顔を青ざめさせるほどのものだろうか?と、儂は内心首を傾げる。


「一応言っておくが……いくら儂でも、あやつに最初に言い渡した訓練内容はアレの半分ぐらいだぞ?」


何より、娘に言い渡した内容はより優しくしていたつもりだったのだ。

余計、彼らのその反応が解せぬ。


「……半分でも、多いと思いますけど」


儂の言葉に、生真面目なガリルから珍しくツッコミを入れられた。

その横で、シュレーは乾いた笑みを浮かべている。


「あんな可愛い子なのに。まだ遊びたい盛りでしょう? それなのに、どうしてあんな必至に訓練をしているんでしょうね」


そして続けられたシュレーの言葉に、儂は娘を思い浮かべた。


……確かに、親の贔屓目なしに娘は美しい。


幼いながら既にその身に完成された美を持っているのだ。

プラチナブロンドの髪に、アクアマリンのような透き通った水色の瞳。

長じれば、どれほど美しい女人となるだろうか……今ですら、誰もが見惚れるような容姿の持ち主だ。

その成長が、心より楽しみな子どもである。


そんな彼女が、傷だらけになりながら男に混じって訓練をしているのだ。


普通なら、ありえない。

貴族の……それも幼い娘を、そんな環境下に置くことなどまずない。


それでも儂が訓練を応じたその最大の理由は、天稟の才を彼女から彼が見出してしまったからだ。


勿論、妻を亡くしたが故に自衛の術を身につけて欲しいという願いはあった。

けれども、それだけならばあんなに厳しくすることはない。


もっと伸びやかに軽く訓練を施して、それで終わりでも良いだろう。

そうしなかったのは、彼女の才を伸ばしたかったから。

それに、尽きる。


そもそもの始まりは、妻であるメルリダの葬儀の時のことだった。

葬儀の場では、儂と同じく嘆き悲しむ子どもたちを見て更に悲しみが押し寄せていた。


けれども、その葬儀の最中のある一瞬。

ゾワリ、全身に鳥肌がたったような心地がした。


強者と見えた瞬間に本能が伝える、警報。

それが、その鳥肌だ。


この葬儀のどこからそのような気配が……と、危険を感じてその気を探ったら、自分の娘から発せられていたのだと理解した時には本気で自分の正気を疑った。


なにせ、五つを過ぎたばかりの自分の娘から、覇気のようなものを感じ取ってしまったのだ。


幾人もの猛者と見えた彼が感じた、危険。

娘の様子を伺えば、いつの間にか涙は止まり、代わりに噛みちぎりそうなほど唇を噛み締め、その瞳には憎悪の炎が燃え盛っていた。


何を考えていたのかは、一目瞭然だった。

そしてそれ故に発露した感情が、彼の本能に警鐘を鳴らしたということも。


『……メリー。今はただ、お前の母のことを想ってくれんか?』


それ故に、儂は彼女にそう言ったのだ。

メルリスは一瞬キョトンとしていたけれども、すぐに意識を妻に向けて、再びさめざめと涙を流していた。


悲しみに包まれた葬儀は、けれども呆気なく終わり、そこから儂は怒涛のような日々を過ごした。

喪失感から逃げるように、仕事に打ち込んだのだ。


傷は決して癒えることはない。

きっと、生涯そうであろう。

それだけ、儂の中で彼女の存在は大きかったのだから。


けれども日常を過ごすうちに、段々と心の整理がつき……必ず野盗を殲滅してやると至極健全な心持ちとなった頃。


メルリスは、儂に願った。


自分を、鍛えて欲しい……と。


コメントをいただきましたので、前書きの文言を追加させていただいております。メルリスの幼少期の場面を増やしたかったために、一旦刷新させていただきました。混乱させてしまうような編集の仕方をしてしまい、大変申し訳ございません。よろしくお願い致します。


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