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ダンスウィズアームズ  作者: 陣駆
6/30

村上商事

(悲報)おっさんが書いています

 スグニィスを送り、奥の部屋へ戻る前にトイレと浴室のある場所を確認する。戸を引き開けると、照明が自動で点いた。入口すぐに洗面台があり、奥がトイレ、左側の突き当りに洗濯機のようなものがある。トイレの戸はスペースの関係の為か開き戸だった。中は洋式トイレとたいして変わらない。洗濯機も同じく似たような形状で「全自動」と感じる文字にも気が付いた。その右側に引き戸があり、中は浴室でシャワーらしいものもある。

 納得した後に戻り、シンプルな洗面台の鏡の前で、大きくため息を吐く青い顔。何度も掌の表裏を見て開き閉じ、両掌で顔をまさぐり確かめる。心臓に手を当てると首を振って再び大きく息を吐き、壁に指を引きながら部屋へ戻った。


 戸を開けて入ってすぐの前方に、スグニィスに調書取られた4人掛けの椅子とテーブル。その右後ろは仕切られていて、裏には真っ白なベットがある。ベッドの先にはベランダへ続く大きな窓があり、左側には低いテーブル。

 低いテーブルの前で胡坐をかき、そこにあったリモコンを適当に触ると、前方の壁に大きく映像が映った。テレビだと判る。

 映像は重機テロを伝える報道番組だった。ベッキアという女隊長たちが相手にしていたのは、かなり大型のクレーン車だった。走りながら鉄球の付いたクレーンを振り回す車体を相手に、苦戦しつつも2機の人型機体が連携し、鉄球とクレーンを切り落とした後に、車体に剣を突き立て停止させた。建物に被害は無い。

 続いて、悠翔が戦った、双椀重機の映像が始まる。テーブルに手をつき、身を乗り出す悠翔。背筋が伸びた。

 コメンテーターの指摘は厳しく、首をすくめる。右腕を切り落とした後、即座に距離を取っていれば、左腕を振り回されても回避出来たはずだと、建物に突っ込んだ結果を非難された。うなだれる悠翔。タルート3機しか出動出来ない規則は緩めるべきだという指摘などがあり、次のニュースへ移行した。

 細々としたニュースの後、宇宙港へ入港する、小惑星資源採掘往還船のニュースがあり、港から撮影される往還船の後方の宇宙に、小さいながらも別の宇宙居住地らしいものが見える映像が流れた。輝く悠翔の目。ドーナツ状の居住地と思われるものが、4つ連なっているのが、一つの宇宙居住地の全貌だった。

 報道番組が終わると、ドラマやバラエティ番組らしいものが始まるが、あまり興味が持てずどうでもよくなる。とりあえず汗を流そうと、シャワーを浴びることにした。


 ベットの反対側にあるたんすから、スグニィスに教えられた下着を取り出し、浴室へ行く。脱いだ下着は洗濯機と思えるものに入れるが、操作はしない。

 シャワーは簡単に出来た。使い方は何ら変わらず簡単に分かる。洗濯機の上にある棚に置いてあったタオルの様なもので、体を拭いて下着を身に付けた。この世界の下着は、形は何ら変わらないものだったが、縫製されていないということに悠翔はすぐに気がづいた。まじまじと縫製の無いことを指で確かめる。

 洗面台横の壁に取り付けられているのはドライヤーで、簡単に使用出来た。「熱っ」


 部屋は暖かく、下着姿のままでも良いくらいだが、たんすをいろいろ調べると、寝巻きの様なものもあったので、それを着た。

 その後もテレビを適当に観るが、0時になると全て終わってしまった。低いテーブルにある時計らしいものの、文字か数字かわからないものを見た瞬間に、何時何分なのか理解出来るというなんとも不思議な感覚だった。

 やることが無くなるが、どうにも気が張って眠れない。何度も荒い鼻息を吐く。しばらくして睡眠導入剤を思い出すと、脱ぎ置いていたズボンのポケットから取り出し、台所の水で飲み込んだ。


 ベッドに寝転がる悠翔。、全てが絹織物のような肌触りで、思わず身にまとわりつけて頬ずりをする。

 薬の効きが早いのか、眠くなりあくびをする悠翔。仰向きになって、シーツを首元まで引くと発声した。

「ライトオフ」

 消えない。

 しばし固まった後、身を起こし困惑する悠翔。もう一度発声するが消えない。顔が歪み横を向く。傾げられる首。正面に向き直し、上を向いてもう一度大きく発声するが、やはり消えない。引きつる顔。

「照度0」「消えろ」「消えて」「寝ます」「消えてください」

 消えない。


 ベッドから降り、部屋中の壁を歩き見て回るが、どこも真っ平らで何も無い。まさぐる手。

 ベランダへ続く窓と壁との段差、掌ほどの幅の壁に面一のパネルがあり、触ると明るくなって文字が浮ぶが、それは窓の設定を調節するものでしかなかった。

 諦めて、点けたままで再び横になる悠翔。シーツで顔を覆ってひと時が過ぎるが、顔を出して叫ぶ。

「消えろや!」「どないせいっちゅうねん」「いてまうぞ、おらぁ!」「かんにんしてやー」「お父ちゃん消してあげて、どぅーん!」消えない。


 鼻息を長く吐く悠翔。うつろな目。

 しばしの沈黙の後、発せられる言葉。

「あ、ポン!」

 消えた。

 飛び起きる悠翔。

「あ、ポン!」「ポン!」「あーっ!」

 点かない。

 悠翔は怪訝な顔をするが、暗いせいか瞼が落ち、倒れ込むと、わずかな時間で寝息を立てた。



 目が覚める悠翔。窓から弱く光が差し、部屋が薄明るくなっていた。起きて大きく伸びをする。

 カーテンの無い窓へ近づいてパネル調べると、外から入る光の量を調節する設定が、15に設定されていた。100にすると、外からの光が入って部屋が明るくなる。

 腹が鳴り、冷蔵庫を開けるが何も無い。上の戸棚を開けると、縦長の箱が2箱あったので、取り出すと2種類の菓子の様なものだった。

 赤いゼリー状のものが乗った、美味しそうなクッキーの様な絵が描かれている方を先に開けて、中身を取り出す。

 悠翔は飛び上がって、取り出した小袋を放り投げた。

 柄のついた透明の袋の中に、四角い緑色のゼリーの様なものが入っているのだが、そのゼリーとおぼしきものの中に、薄茶色の芋虫と断言出来るものが3匹連なっていたのだ。ギャー!

 落ち着いて放り投げた袋の端をつまんで箱に戻すと、もう一つの箱を開け、恐る恐る中身を取り出した。肩の力が緩む悠翔。箱の画と同じもので安心する。淡いパステル調のクッキーの様な感じだが柔らかい。

 中身を取り出し食べてみると、口の中で粉々に崩れて泡立ち広がるゴムの様な味に、顔をしかめて台所まで走って吐き出した。


 部屋に戻り、ベッドに倒れ込んで思案に暮れる悠翔。突然頭の中に声が響く。

「私の名はシムカ。あなたをこの世界に呼び寄せた師の使いです。あなたと話をしたいのですがよろしいですか?」

 驚いて辺りを見回すが、声の主の存在は感じられない。しかし再び同じ言葉が頭に響く。どうしていいか逡巡する悠翔に、更に言葉が流れ込む。

「なに黙ってんのよ、あんた。ハッキリ答えなさいよ。都合が悪いなら後でもいいのよ。早く答えなさい!」

 その声に驚いて答える。

「あ、はい。いいですよ」

 答えた途端、部屋全体の輪郭が霞んだように緩くなり、悠翔の目の前に、光の粒の集合体が現れると、クルクルと回りだした。

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