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ダンスウィズアームズ  作者: 陣駆
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ソウルフード

「さてと、どうするかな」

 そう言って、顎を右手で揉むスグニィス。

「何か食べた?」

「いえ、食べてません」

「じゃあ、食べに行くか。食べるところと、寝るところを案内するよ」

 そう言って、頷く様に首を縦に何度か振り、付いて来るように手で促した。


 タクシーと思われる自動車に乗って着いた場所は、タルートを降りた場所だ。

「テロなんだ。何度もしつこい連中だよ。まあ無事に済んだみたいで良かった」

 スグニィスが、破壊された双椀重機の方を見て話す。多くの人や車両が集まっていて、片付け作業などをしていた。


 車を降り、建物入口へ近づくと、小銃を携えた迷彩服の兵士と思われる者が何人もいて注目される。スグニィスが悠翔を待たせて入り口横の守衛所のような所で話し、携帯端末を提示する。しばらくやり取りをした後、守衛が頷き、ようやく中へ入ることが出来た。


 門をくぐり、間近の建物の内部へ連れていかれ、長い廊下を歩いた果てに、食堂のような場所に着いた。

「ここで、何か食べよう」

 出入り口横にあるガラスケースの中の、いわゆるホログラムのような立体映像が、悠翔の眼に入る。色々な食べ物がトレイに載り、空中に浮かび上がり回っていた。


「とりあえず、今までで好評だったのはこれだよ」

 指さされたのは、一目でラーメンらしいものと判る。具も焼き豚の様なものが見え、ネギの様なものもある。が、なによりも白色と黄色の花のようなものが乗っていることに目がいき、注視した。

「コレとほとんど同じものが、君らの世界にもあるんだってさ。喜んで食べてたぞ。同じじゃつまらないという考え方もあるが、いきなり冒険するのもなんだから、これにした方が良いと思うぞ」

「あ、はい。じゃあこれで」


「よし、今日は俺がおごるよ」

 スグニィスはそう言って二人とも同じものを注文し、更にサラダの様なものも二人分注文した。それにも花が乗っていて目を奪われる悠翔。呼び出し用と思われる番号の付いたカードを店員から受け取ると、少し離れたところにある、空いた席へ相対して着席した。

 店内はそれ程混んではいない。

「まだ時間が早いから空いててよかったよ。結構混むんだぜ、この食堂」

 カードが点滅して短く音が鳴る 二人でカウンターへ行き、番号の付いたトレーを同じ番号のカードと引き換えに受け取り、コップに水を入れて載せる。悠翔も良く知っているシステムだ。

 トレーにあるスプーンの様なものがまっ平らなのに驚いて手に取る。片側に3本のフォークの様な突起があった。

「右利き?」

「あ、はい」

「じゃあ、この右の穴に突き立てて」

 言われた通り、台にある右側の穴にフォークスプーンの柄を突き立てると、平らだった部分が一瞬で凹んで、完全にスプーンと呼べる窪みになった。


 驚きつつ、席に戻る。やはりどうしても、花に目がいってしまい、固まる悠翔。

「食べられる花だよ。君らの世界にもあるって聞いたぞ。あまり食べる機会は無いとも言ってたから、やっぱり珍しく感じるのかな」

 そう言って、花をフォークスプーンですくい上げると、一口で食べるスグニィス。

「この世界では当たり前のように使われてるんだ。見た目が良くなるからね。まあ、とにかく食べてみてよ。冷めちゃうよ」


 そう言われて食べてみる。和風とんこつ味! 驚愕する悠翔、声を上げる。

「ここやっぱり、未来の名古屋なんじゃないの!?」「違うから」

 即座に否定されたが、フォークスプーンは名古屋が誇る至宝とそっくりで、思わず目の前で裏表を見る。

「そのフォークスプーンいいだろ。昔は利き手に限らず使えるように、真ん中から4本の突起だったんだけど、不評で最近改良されたのさ。電気を流すと合金が変形してどちらの利き腕にも対応出来る」

「凄いですね」

 悠翔の驚き顔と笑い顔につられ、スグニィスも笑った。

「合金や樹脂の種類が、けた違いに多いとラスティンが言ってたよ。無重量状態でいろいろな合金や樹脂が発明されたからね。それでラスティンは帰還作戦よりも、そっちへ興味がいってしまったみたいなんだ」


 ラスティンという言葉に驚く悠翔。

 その顔を見て続けるスグニィス。

「君もなんだろ、なんとかってゲームの達人っていう。そのゲームの達人が何人もこの世界に来てるのさ」

 息を呑む悠翔。

「な、名前は?」

 身を乗り出して聞く。


「あー、ええと、一番最初がなんだっけ、マツバラだったかな。この人のことは俺は知らないんだ。一番最初にこの世界に来た人だから、向こうもこっちもわけわかんなくて苦労したと思うよ」

 大口を開けて驚く悠翔。マツバラはゲームセンターでジールと話題にしたばかりの、30代のスタープレイヤーだ。

「その次がさっき言ったラスティン。この人は30歳くらいのおっさんで、帰還作戦には参加せず、宇宙居住地の管理団体に参加してる。この世界の技術や材質の虜になってるみたいだな。その次は空覇、この子から俺が世話してるんだ。君と同じくらいの年齢だと思うぞ」

 ラスティンもマツバラと同じく、他の人気ゲームからダンアーへ、ダンスウィズアームズというゲームのプレイヤーとして参加するなり名を上げた、スタープレイヤーだった。空覇はわからないが、同じくらいの年齢という言葉が引っかかった。

「その次がリルター、こいつは俺と同い年だったが、とんでもないお調子者で面倒ばかり起こして参ったよ。そして君、悠翔が現れたのさ」

「マツバラ、ラスティン、リルターは全員知ってますよ。話したことは無いですけど、みんなゲームのスタープレイヤーです。空覇はちょっとわかりませんが、てか、帰還作戦てなんなんですか?」

 鼻の穴を広げながら聞く悠翔。


「いいから食べなよ、伸びちゃうぞ。まあ、まだまだ山ほど知ってもらうことがあるから、落ち着いて一つづつ理解してくださいな」

 その言葉と笑みに、悠翔は大きくため息を吐いて落ち着きを取り戻し、食事を続けた。


 しばらくスグニィスの話を聞き続け、あまりのことに顔を上げ聞き返す悠翔。

「核戦争の汚染から、この宇宙居住地に避難したってことなんですか?」

「そういうこと。防護服無しでは外に出ることも出来なくて、耐えられなかったってさ。核以外の化学物質の汚染なんかも酷かったらしいよ」

 そう言って、サラダの食べられる花にフォークを突き刺した。

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