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ダンスウィズアームズ  作者: 陣駆
30/30

いなり寿司と巻物を詰め合わせたもの

前回のを見直したらベッキアがペッキアになってました間違いなく濁音で入力しているのに半濁音になることがたまにあってまた発生したみたいですPCで書いてるのでモニターと少し距離があり濁音と半濁音はよほど目を凝らさないと気づけないのです歳を取るとはそういうことです

ペッキアではなくベッキア大尉です

 二人でいるところを誰かに見られるのは良くないということで、ベッキアが先に門を出て外で待つということになり、悠人は着替えなど支度をした後に出ることになった。

 悠人が門に近づき守衛室のガラス越しに門衛の顔色を見ると、手のひらで門の右側へ行くことを促される。正門横にある通行用の小型の門に近づくと、自動で門が開く。門は二重になっていて入った門が閉じてから外への門が開いて出ることが出来た。

 小銃を携える衛兵を横目に、少し歩くとベッキアがいる。

「外に出られて嬉しいですけど、俺みたいな存在はこの世界でどういう認識なんです? 監視してるのはわかるんですけど、その程度でいいんですか?」

「ああ、そのことか。空覇も不思議がってたな。だがその話は後にしよう、誰かに聞かれても困るからな」


 街なかを歩く二人。腕を組もうとするベッキアの手を何度も振り解きながら、悠人は街のあちこちに目を奪われていた。

 悠人の世界での三階建てくらいまでの高さの建物しかなく、少し不思議な感覚になるが、それ以外は多少建物などの意匠が異なるだけで色彩も似ていて、それほどの違和感はなかった。

 そのことに軽く頷くようなそぶりで見渡しながら歩く悠人だが。


「さっきから私の方をチラチラ見ているが、何か言うことは無いのか?」

「え? いや、え?」

 横目で何度かベッキアを見ていたことを突かれ、悠人が少し戸惑い照れながら続ける。


「いや、見慣れない格好なんでちょっと気になっただけですよ」

その応えに不満そうに沈黙するベッキアに、悠人は少し慌ててつぶやいた。

「・・・・・・似合ってると思いますよ」

「よし!」

 そう叫ぶと、ベッキアは悠人の左手を掴んで走り出す。引っ張られる悠人。

「まだ昼には少し早いが、ちょっとしたものなら食べられるだろ?」

 悠人は戸惑いつつ、はい、と答えてついていった。


「ここのが旨くて好きなんだ。悠人の口にも合うといいが」

 ニコニコ顔で言うベッキア。

 二人は店先のベンチの一つに腰掛け、二つ折りにしたお好み焼きのようなものを食べようとしていた。

 包んでいる調理用のアルミ箔であろうものを広げて中身を出し、まだ湯気の立つ熱い生地にかぶりつく悠人。

 悠人はすぐにそれが魚の練りものだと判断できた。


「また、練りもの」

 そう言った後に、ええ美味しいですねと慌てて言うが、続けて。

「この世界の人には魚の身の練りものがそんなに人気なんですか」

「ああ、栄養あるからな。長期保存が容易となってから、よく使われるようになった感じだな」

 悠人の問いに、少し驚き気味のベッキアが答える。

「確かにすごく良い食べ物ですからね、魚の身の練りものは。美味しいですし」

 練りものとしては少し弾力がある方で、二つ折りの片側6枚切りの食パン、2センチほどの厚みの間に、なにやら薄く固いものが挟まれていて、噛むとパリパリと音が鳴る。

「挟んであるのはでんぷんを含んだ何かを、薄く焼いたものですね。噛み応えの差がある食感がいいです」

 そう言って再びかぶりついてから、はたと思い出してベッキアに話しかける悠人。


 近くに人がいないことを確認してから小声で話す。

「ここなら話してもいいですか? 俺みたいな存在の話ですけど。監視してるのはわかるんですけど、その程度でいいのかなとずっと不思議で」

 ベッキアもここならいいだろうと話し出す。手荒なことをすればいなくなってしまうというのが何度かあり、その後は監視のみになったという。

「かなり昔からその手の話はあったらしいんだよ。神の使いが現れてこの世界を危機から救ってくれるという話がな」

 有名なのは、核戦争の危機を救った救世主が異世界から来た人間で、おかげで世界は救われたという話があり映画にまでなったと言う。元になったのは亡くなった政府関係者が残した手記ということだった。

「ただ何に一つとして物的証拠もない伝聞だけだから、あまり信用はされてなかったと思うな。そのへんは人によるんだろうが」

 そう言ってからフッと笑って続ける。

「そして結局は核戦争になってしまったからな。その後はやはりそんなものは無いという風潮になった感じだ。しかし物は言いようで、救う事も出来ないくらいこの世界は愚かだったのだと言う者もいるよ」


 悠人の世界ではどうなのかと聞かれ、戸惑う悠人。

「いやあ、そういうのは聞いたことがないですね。神の使いにしても、とある動物がそうなのだと言われたりしますけど、異世界からの救世主とか現実的な話や言い伝えは全然ないと思います。俺は聞いたことないですね」

「そうなのか、この世界の人間は悠人たちの世界の役に立たないか、悠人の世界が救わなければいけないほどの危機にないということかな」

 悠人は少し微笑みながら首を傾げた。


 その時だった。


 何かが弾ける様な音があちこちからして、瞬く間に悠人の視界が白い煙に覆われていく。

 何が起きたのかと戸惑う悠人をベッキアが素早く引き寄せると、足早にベンチの後ろに回り、悠人の頭を押さえて屈み込む。

 悠人の視界は完全に白くなってしまった。


 そして、銃の発砲音らしきものがあちこちから鳴り響く。少しの間をおいて男の叫び声が轟くと、人が倒れるような音がいくつかして、その場はパニック状態になった。

 悠人は逃げ惑う人とぶつかり転ぶが、ベッキアに素早く起こされる。


 ベッキアはあれは玩具用の火薬か何かで銃撃の音ではないと、民衆を落ち着かせようと叫んだほんの少し後 わずかに違う音が三回ほどした。

 「やめろ!」

 その直後に、遠くで叫ぶ男の声。

 

「くそっ」

 そう呻くと少し青ざめた顔のベッキアが悠人の左腕を掴むや走るようにして、白い視界の途切れに薄っすらと見える、路上に停車した自動車の後ろ。わずかに違う音がした方角から身を隠すようにしてしゃがんだ。悠人も引き込まれてしゃがむ。

 今のは本物の銃声だとベッキア。


「戦争はこんなものではないぞ! 本当にそれでもよいのか!」

 白い闇の中を逃げ惑う人々にその音声が浴びせられる。

 ベッキアは悠人を自分の後ろにしたまま動かずに沈黙した。


「アクスリアへの帰還は、再び戦火を開く愚の道と心得よ!」


 その言葉を最後に何も言わなくなり、白い闇も徐々に晴れていく。


 多くの警察官とその車両が何台も集まり、車両屋根部のライトを明滅させたまま停車している。

 何台もが駆け付けた負傷者を病院へ届ける車両は、最後の一台が出て行くところだ。


 「犯人は仮面をつけた複数人で、大きめの箱型車両から降りて発煙筒を投げ散らかし、発砲音とともに商品衣料を着せて展示する人形を倒すことで、混乱を促進させたということか」

 いつぞやの警部がベッキアと話している。

 「問題なのは本物の銃を持ち、見えない中で発砲してきたことだ。今までには無かったことだからな。発砲を制する声もあったということは、連中の総意ではないということで、分裂による暴走など余計に先が案じられる」

 ベッキアの言葉を受け、今回の帰還作戦の次になる法案が強制を含みつつ強行されつつある中、凶暴化してくるのかもしれんなと警部。


 以降は警察に任せ、ベッキアは悠人を連れて現場を後にした。

「まったく、とんだこの世界の紹介になってしまったな」

 そう言って、歩きながらベッキアがため息をつく。

「帰還作戦に反対するためにここまでするのは驚きですね。そんなに反対が多いんですか? テレビでも帰還作戦の継続と推進に対して否定が多いような感じでしたけど」

 ベッキアは少し沈黙した後に答える。

「民意で選ばれた政府のやること全てに、反対することが目的になっている少数のいかれた連中の声がでかく見えるだけさ。悠人の世界も似たようなものだと、空覇に聞いたぞ」


「ああ、たしかに似たようなものですね。でも、政府のやること全てを絶賛する声の大きい世の中も、ろくなことにならない感じがしますけど」

 悠人の言葉に一瞬驚きながらも、ベッキアは笑って同意した。


「でも反対だからって、暴力はダメですよ。そんなの当たり前のことなのに、どうしてもわからない人たちがいるんですね。どこの世界でも」

「だが、革命を名乗る暴力も歴史にはあるからな」

 ベッキアは少し息を吐いて、悠人に言うでもなくつぶやいた。


 ベッキアの携帯端末に、明日以降の警備の見直しを行う旨の連絡があり、昼過ぎには戻らなくてはいけなくなってしまったという。

 残念そうな表情で悠人に話すベッキア。

 悠人が慌ててベッキアに聞く

「あれ、ひょっとして俺が関係してるとか、疑われたりしませんコレ!?」

 ベッキアもハッとした顔をしてから確かに、と悠人を睨むようにしてつぶやく。

 慌てて否定する悠人にベッキアがア吹き出した。

「私が立証するし、それなりに監視されているからな。無関係なのはすぐに了解されるよ」


 しばらく街中を歩き、ベッキアに悠人の世界のことなども聞かれ、悠人も普通に受けて悠人の世界のことの話をいくつかした。


「やっぱり変ですよ、異世界から来た人間なんてそんな簡単に受け入れられるものなんですか?」

 どうにも据わりが悪い話の流れに、悠人がたまらず聞く。


「そうか? ああそうそう。そのことについては昔から、救世主を使わせた神が、穏便に受け入れられるように、私たちの心をコントロールしてるんじゃないかという説を聞いたことがあるよ」

 そのことに合点がいった悠人が頷く。

「あくまでも推測だがな。そこまで人の心を支配されるというのも良い気がしないが、元々、神は人の世の道理から少し外れた畏怖すべき存在だとされているから、仕方ないのかもしれん」


 昼食も、ベッキアのお薦めという店で取ることにした。スパゲティのようなものを食べる悠人。

「これとか、小麦粉もこの世界にあるみたいですが、あまり使われてないみたいなのは理由があるんですか?

「小麦粉は、私たちがここへ来ることの原因になった戦争の時に、輸入に頼っていた国とも戦争する事になって、使えなくなったことの影響が大きいらしい。今は作ろうと思えば作れるんだが、あまり健康に良くないというお題目もあってな。結構揉めたみたいだが、徐々に減ったという話さ」


 食事を終えて、そろそろ戻ろうと道すがら、悠人がある店に目を奪われて硬直した。

 ベッキアが来る前にテレビで見ていたケーキ店だ。

 無言で吸い寄せられていく悠人に、少し唖然としたような顔つきでついていくベッキア。

「悠人は甘いものが好きなのか? 私も好きだが」

 その声に少し驚いて慌てる悠人。

「ええ、甘いものも好きですよ。基本的に好き嫌いはないですから」

 そう言いつつ、目は商品の並べてあるガラスの向こうのケーキのいくつかを品定めしていた。


 しばらくして買うものを決めた悠人が、店員に話しかけた時にベッキアの顔がゆがんで声が上がる。

「二つずつとはどういうことだ悠人。誰の分だ?」

 悠人は狼狽えて、店員がそばにいることもあり言葉に詰まる。

「まさか、あの、小女か?」

 睨むようなベッキアの詰問に、悠人は慌てて応えだす。

「いや、違いますよ、まだ違いますよ。・・・・・・お世話になってるスグニィスさんの分です。あの人甘いものが好きらしいので」

 鼻の穴を広げてやや早口で言う悠人に、ベッキアは疑うような目を保ちつつも仕方なく納得したような素振りになった。

 店員に帰宅までの時間を問われ、適当に思い出しながら答える悠人。二酸化炭素を固体化したであろう小さな冷却材をいくつか同梱されてから、カードで支払いを済ませて店を出る。

 訝しむベッキアの視線を外しつつ、悠人は誤魔化す目的で明日以降のことを聞くと、ベッキアは明日以降のことは明日以降話すと答えなかったが、悠人はハッとして感心した。


 行きと同じように、時間をおいて門から戻るということになる二人。

「今日は大変でしたけど、この世界を色々見られて良かったです。ありがとうございました」

 悠人の言葉に微笑んでベッキアが応える。

「観光地じゃない、ただの居住地だから、たいして面白くなかったかもしれないが、これが私の育った世界さ」

「宇宙でもこんなに良い街が作れるんだと驚きましたよ。人間ってやっぱり凄いですね」

 悠人の言葉に、ベッキアが笑顔で手を振るなか、悠人は先に門をくぐった。


 自宅に戻った悠人。戸を開けて入るや声をかける。

「シムカ様いますか? 美味しい助六を買って来ましたよ」

「なになに?」

 テレビを見ていたのか、奥から飛んで来るシムカ。

 悠人が箱のふたを開けて冷気の上がる中を見せると、シムカの黄色い歓声が轟いた。

「早く早く! 助六出して! 早く!」

 

 ※ケーキです。

いやシムカ様もケーキくらい知ってると思いますが強行しました

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