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ダンスウィズアームズ  作者: 陣駆
24/30

シムカ様! 呪いを解いてくれませんか!?

なんか最近抜け毛が多くてですね

 それは、食堂でリルリムとの夕食のひと時を終え、帰宅した時だった。


 何かを思い出しているのか、少しにやけた顔の悠翔は、手慣れた動作で玄関の鍵を開けて中へ入る。そして奥へと続く通路が自動で照らされると、悠翔は首を小刻みに振りながら身を引いて戸惑った。

 シムカが通路中央に倒れ伏しているのだ。横に向いた顔をうつ伏せにして尻を上げ、への字の格好で固まっている。


「どうしたんですか!? シムカ様!」

 悠翔は慌てて靴を脱いで前のめりに走り寄るが、シムカの反応は無く、ピクリとも動かない。

 悠翔はシムカの横で、床に頬が着きそうなほど頭を傾げ下げ、シムカをしばしの間、凝視する。わずかな身体の動きで呼吸しているのが見てとれ、身を起こしてホッとため息をつく悠翔。


「シムカ様、どうしたんですか? 起きてください」

 さほど大きくはない声をかけるが、反応は無く、ピクリとも動かない。

 悠翔はしばし沈黙した後、更に声をかけた。

「シムカ様、起きてください。神様…… 毛の神様」ビクッ!

 ピクッとした気がする! 悠翔は頭を横に振って身を縮めた後に、首を伸ばしてシムカを睨むように上から見つめた。

 ……動かない。


 悠翔は首を傾げながら身を引くと、再び首を伸ばして声をかけた。

「シムカ様、起きてください。シムカ様」


 反応が無いことにあぐねたのか、しばし沈黙すると、この部屋には悠翔とシムカ以外、誰もいるはずが無いのに辺りを見回す悠翔。顔が凄くにやけています。

 「シムカ様、起きてください」

 そう言うと、右手を延ばし、倒れているシムカの突き出したシムカの臀部、お尻を人差し指で撫で回した。


 その瞬間、シムカは弾けるように跳び上がり、窓ガラスを激しく振動させる程の凄まじい濁音の叫び声をあげた。

 悠翔は身を反りながらも、さして驚かずのにやけ顔。

 シムカはまたしても見事な着地を決める。


 それを見て、顔はにやけたままの悠翔が口をついた。

「シムカ様、ギャーはヤメましょうよ、ギャーは。キャーって感じでお願い出来ませんか? そんな声出してたらモテませんよ「何してるのあなた!」

 両手を尻に回し、頬が少し赤いシムカが下から上目で睨んで言う。


 悠翔は目をそらしながら、唇を尖らせてにやけ顔のまま答える。

「何って、シムカ様が倒れてたから、起こそうと思って」

 そう言いながら、ちらと見るシムカは湯気立っている様に見え、悠翔はわずかに頬をこわばらせるが、にやけ顔は解けていない。

「起こそうと思って、起こそうと思って、ちょっと触っただけですから、無罪ですよ、無罪。ノット・ギルティ!」


 ぎごちなくもそう見得を切る悠翔に、シムカの声がかぶさる。「全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける」

「ちょ、ダメですよシムカ様! それはダメですから!」

 慌てる悠翔に、静かに低く、しかし通る声のシムカの詠唱が続く。


「全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける「駄目ですからシムカ様! そんな祈願が成就したら死んじゃいますから! ショック死しますから!」

 悠翔が青くなって叫ぶが、シムカの詠唱は止まらない。

「全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける「駄目ですからシムカ様! 聞いてますか?「全身の毛が一瞬で全部抜ける。全身の毛が一瞬で全部抜ける。「聞いてない、聞いてない、全然聞いてない!」

 必死な形相。


「なんかチクチクし来た! 危ない!危ない!」

 両手で自分の身をさすりながら足踏みする悠翔。

「やめましょうよ、シムカ様! ショック死しますし、死ななかったら死ななかったで、え? 毛が無い状態でどうやってこの世界で過ごすの? みたいな問題がですね」

 悠翔の早口にも、詠唱は止まらない。

「てか、何があったんですか? まあ、だいたい想像つくんですけど」

 そう言って、シムカが倒れていた場所の周りを見ながら続ける。

「あれでしょ? 戸棚にあったお菓子の箱を見つけて、中を開けたら芋虫の入ったゼリーみたいなのが出てきて……」

 悠翔がそう言った瞬間、シムカは詠唱をやめ、かわいい悲鳴と共に飛んで来て悠翔の右肩後ろに隠れた。


 驚く悠翔にシムカが続ける。

「なんなのよあれ! あなた罠を仕掛けたの!?」

 悠翔はシムカの方を見ようと首を回すが、すぐ元に戻す。

「罠なんて仕掛けませんよ、俺がここへ来る前からあった物らしくて、俺も驚いたんですから」

 目だけをシムカの方へ向けて話す悠翔。

「なんなのよ、あれ!」

「まあ、一応食べるものだと思いますけど「あーあー、聞こえない聞こえない」

 そう言って悠翔の言葉を遮るシムカ。

「何をわけのわからないことを言ってるの! 早く片付けて!」

 そう言うと、ふわりと浮いて部屋の奥へ行ってしまう。

 姿が見えなくなる寸前でシムカがポツリとつぶやいた。

「まったく、誰が毛の神様よ」「聞こえてたんですね!」

 聞こえないのか、シムカからの応えは無いまま見えなくなり、悠翔は首を傾げる。


 菓子箱を戸棚に戻し、部屋の奥に行くとシムカは低いテーブルの上で寝転がり、テレビを見ていた。

 悠翔は気になっていたことを聞いてみる。

「なんで戸棚なんか探してたんですか? お供え物ならまだあるでしょう?」

「薄い本とかあったら困るでしょ「無いですから」

 呆れ顔の悠翔に続けるシムカ。

「お供え物も残り少ないから、また供えなさいよ」

 そういうとまたテレビの方を向いた。


 それからしばらくして、ああ、と思い出した悠翔は携帯端末を取り出すと電池を入れる。即座に呼び出しの振動がして驚くが、当然スグニィスからだ。

 携帯端末を顔の高さで持ち、腕を伸ばして離す悠翔。通話にするや否やスグニィスのけたたましい声が響く。

 案の定、あの子は誰だと聞いてきて、長い時間携帯が繋がらないと面倒なことになるからやめてくれと、少し語気が強い。

 悠翔は、あの子は医務室の子だと説明し、驚いた様子で怪我の心配をするスグニィスに、明日話しますからと言ってやや強引に切り上げた。


 ため息をついてシムカの方を見ると、お供え物と称する袋菓子を食べている。テレビはCM中で、悠翔にも違和感の無いありがちなCMソングが流れていた。

 CMの終わりに、お酒は20歳になってからという注意が入るのも同じだった。

「そういえば、シムカ様って歳はいくつなんですか?」


 何気にそう聞きながら、痛めた右腕を見て擦る悠翔。包帯としてリルリムが再度巻いてくれたものだが、時間の経過とともに融着して一体化していた。艶消しのうすだいだい色で

遠目には包帯しているとはわからない。2日間はこのままにするようにと言われた。それは剥がしてしまった白い包帯の時にも言われたことだ。水に濡れても問題無いのも同じで、融着することと色が付いていることの違いだけらしいが、悠翔の事情を聞いたリルリムが気を利かせてくれたようだった。


 腕を見ていたのはわずかな時間だが、シムカからの返答が無いのに気づいたのでシムカの方を見ると、めっちゃ睨んでる! 首を振って身を引く悠翔。

「あなたの世界では女性に年齢を聞くことが非礼とされていないの?」

 うろたえる悠翔に、シムカかが口をとがらせて言う。 

 瞬時に理解したという悠翔の表情。

「ああ、そういうのは確かにありますけど、でもそれはある程度、歳のいった女性に対してのことで」

 むっとした表情のシムカを見て続ける。

「シムカ様は、見た目は俺より若いくらいじゃないですか。若いうちは歳なんてそんなに気にしなくてもいいんじゃないですか? 俺は17歳ですよ」

 しばしの沈黙。シムカは顔を横下に向けて思案しているような仕草。

「17歳? ふん、子供ね。そうね、確かにまだ私が気にする様なことじゃないかしらね」


 顔を上げ、胸を張って悠翔を見るシムカ。

「私の年齢は10万……なに笑ってるの、あなた!」

 シムカが噛みつくように叫ぶ。

「いやいや、笑ってない、笑ってないですよ。ちょっと驚いただけですから」

 悠翔は慌てて横を向き、顔を伏せ気味にすると、右手で顔を覆いながら答えた後に、歯をかみしめて前を向いて聞く。

「お続けください閣下。10万とんで、おいくつなんですか?」

 悠翔の態度に不満げな顔をしつつもシムカは答えた。

「10万とんで、15歳よ」

 思わず少し吹いてしまう悠翔。慌てて横を向き誤魔化す。


 シムカは睨むように悠翔を見ていたが、テレビのCMが切り替わった瞬間、声を上げた。

「あ! あれ、あれ。あれ買ってきて!」

 シムカが指さすCMはお菓子のCMだった。薄い生地を丸めた小さな棒状のクッキーで、チョコクリームのような物に包まれているお菓子だ。

「ああ、あれなら食べましたよ」

「いつ!? なんで、お供えしないの!」

 サラリと言う悠翔の言葉に、驚きながらも詰問するシムカ。

「一応、お供えするつもりだったんですけど、一つ食べたら美味しくて」

 またシムカに睨まれる悠翔。

「だって10個しか入ってなかったんですよ。シムカ様もいなかったし」

 睨むシムカをチラ見しながら続ける。

「食べるとサクサクとした歯ごたえで気持ちいいんですよね。細かく砕けるんですけど、その時にチョコクリームが口の中全体に染みわたるように溶けていって、凄く美味しいんですよ」

「んあー! 買ってきて!」

 聞きながら口を開けていたシムカが叫ぶ。

「明日買って来ますよ「絶対よ! 絶対に買って来て!」

 シムカの剣幕に少し笑いながら、買って来ますからと答える悠翔。

「絶対よ! 絶対に買ってきてよ! もし買って来なかったら」

 その言葉ににやけつつ緊張する悠翔。

「もし買って来なかったら、究極ののろ、願掛けをするからね」

 悠翔は少し顔を引きつらせたが、あえてツッコミは入れませんでした。

「買って来ますから」


遅くなりました

3か月以内にと思ってましたが

さすがにそんな気になれなかったです

ということでシムカ様とはもう一戦あります

ほとんど同じことをやります

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