ツルツルにしたことがあります
間が開き過ぎてくだらないサブタイトルを思いつけませんでしたので
そういえば書くの忘れてた ことをサブタイトルにしました
悠翔はリルリムの右手首を、怪我をしていない左手でリルリムの右手首を素早く掴むと、食堂の出入り口へ小走りで引き急ぐ。慌てたように悠翔に声をかけるスグニィスや、
リルリムの短い驚きの声をその場に置いて。
二人が通路へ出たその時、リルリムがつまづきよろけたので悠翔は思わず右手でリルリムの肩を押さえて支えるが、激痛が走りうめいてしまう。
「大丈夫? やっぱり、まだ痛いんでしょう?」
体勢を取り戻したリルリムの言葉と視線に、悠翔の目が泳いだ。
「どうして包帯を取ってしまったの? 私の手当てが何かおかしかった? 巻き方がきつかったとか?」
続くリルリムの言葉に慌てて、そんなことはないと手を振って否定する悠翔。
うつむきながら
「ちょっと事情があってですね……」
と口ごもる。
「それは話せないこと?」
リルリムの問いに、そんなことは無いと言いながら、顔を上げる悠翔。
「じゃあ聞くから行きましょう」
リルリムの軽い声。
「医務室へ行くのよ」
リルリムは戸惑い顔の悠翔に続けて言い、悠翔は唇をすぼめてきょとんとしながらも、後をついて行くこととなった。
しばらく歩くと悠翔の携帯が振動する。スグニィスからだ。「今の子誰? 何、何なの? 今の子誰?」
悠翔は無言で切るが、すぐさま再び振動する携帯。
悠翔は顔をしかめた後に通話にして、注文した料理はキャンセルかスグニィスさんが食べてくださいと、早口で言って有無を言わさず切ると、音速を超えるような指さばきで携帯の裏カバーを外し、厚みのある板ガムの様な柔らかい電池を抜き取って、ズボンの後ろポケットにしまった。
「どうしたの?」
「いや、別に。注文してたのを断っただけです」
振り向いて聞くリルリムの問いに、少し鼻息を漏らしながら答える悠翔。
「ああ、それは悪いことしたわね。でもあなたの腕の状態を確認をしたいだけだから、それほど時間はかからないわ」
リルリムは言い終わると、前を向いた後にチラと振り返り、事情も聞きたいしね。と微笑むように付け加えた。
しばらく続く、歩く間の無言の間。悠翔が短く鼻息を吸ってから話しかける。
「髪下ろしたんだ」
「ああ、ええ。リセットブラシっていう、良いものが出てるから助かってるわ」
振り返ることなくそう言って進むリルリム。左手で髪をひと撫でして。
その後は会話も無く、しんとした通路を歩いて行った。
通路を曲がり医務室入り口が見えると、年配の看護師が携帯端末で施錠するような仕草のところだった。
「あら、リルリムさん、何か忘れもの?」
「ああ、ええ、ちょっとさっきの患者さんが」
そう口ごもるリルリム越しに、年配の看護師と目が合う悠翔。視線は悠翔の右腕に動いたように見えた。
「あら、包帯はどうしたの?」
「ええ、何か事情があって取ってしまったらしいんです。だから再検査しようと思って」
「まあ、それは困ったわね」
そう言い終わった年配の看護師に、目を見据えられて困惑する悠翔。
「でも、そんなに変な子じゃなさそうよ」
「ちょっと、フロレスさん」
慌てたようなリルリムの声。
「そうね、患者さんのことをあれこれ言ってはいけませんね」
フロレスと呼ばれた看護師は、少し舌を出しながら答えた。
「じゃあ、再検査をして 事情を聞いてあげてねリルリムさん 先生への連絡も」
続けてそう言うと、承知していますと言うリルリムの返答を受け、フロレスは帰途に就いた。
リルリムは携帯端末を出すと手際よく解錠して医務室へ入り、悠翔も続く。
悠翔を椅子に座らせると、奥からなにやら装置を一抱えして来た 額にはセアトと呼ばれる装置も付けている。
「セアト、超音波検査機を使うわ」
装置を机に置いたリルリムの言葉に、異論はありませんと答える機械音声。
「ひびの経過と内出血を確認するだけだからこれを使うわね。X線は間を開けずに何度も使わない方が良いから」
そう言うと装置を机の上に置きながら悠翔の右腕を上げさせた。
小さな缶スプレーから腕にゼリー状のものが塗り重ねられると、バーコードリーダーの様なT形の機器を押し当てられる。
「痛くない?」「ああ、ええ。痛くは無いです、これくらいなら」
「そう良かった。これは患部に当てるから骨折が疑われる場合の使用優先度は下がるけれど、骨の検査にはx線と同じくらいの精度があるのよ」
そう言いながら悠翔の腕にそって機械をゆっくり動かす。
そして。
「それじゃあ、何があったか聞かせてもらいましょうか」
そう、小首をかしげて上目がちで聞くリルリムの問いに、悠翔は一息つくとゆっくりと話し出した。
ひと時の間に、医務室の窓の外は暗くなっている。
「まあ、棚から落ちたものに当たったと言っていたけど、誰かが故意に落とした可能性があると騒ぎになって、あなたはその犯人探しをしたくないから、怪我をしていないことにして収めたということ?」
しばらく悠翔の話を聞いてたリルリムが、確認するように聞く。
「まあ、そういうことです」
伏し目がちに目を泳がせ、わずかに頷きながら小声で答える悠翔。
しばしの沈黙。
「事情はわかったけれど、怪我をしていないことにしたくても、実際には怪我しているのだからきちんと手当てをしないと治りが遅くなるわよ」
「はい。すいません」
うつむいてしおらしい悠翔。少し微笑むリルリム。
「内出血は少し増えているれけど、骨の亀裂が広がったりはしていないわ。知ってはいたけれど、新しい薬は凄いわね」
装置の画面を見ながらそう言って続ける。
「昔、兄が転んで腕の骨にひびが入った時は、何日か腕を吊って安静にしなければなかったのに、もう骨のひびが固着されて安定している感じよ」
その後リルリムがセアトと何度かやり取りと確認をして、冷却剤の入った薄いシートを巻かれ、前回とは違い淡い橙色の包帯の様なものを巻かれた。
「もう、みんな帰宅しているから大丈夫だと思うけれど、これなら目立たないでしょう」
包帯の様なものの表面はゴムの様な感じで柔らかく、テープの様にくっついて留められた。
「骨のひびは早く治るけれど、痛めた神経の回復には時間がかかるから、しばらくは無理をしないようにしないとダメよ」
リルリムが装置を片付けるしばしの間。悠翔がぼんやりと立っているとリルリムが振り向いて声を投げてきた。
「あら、もう行ってもいいわよ。お腹すいたでしょ」
そう言われた悠翔は、大きく鼻息を吸って答える。
「あ、いや、俺のせいで迷惑かけたので、夕食はおごろうかなと、ですね」
ぎごちなくそう言って、伏し目がちからリルリムをチラ見する悠翔。
「あら、ありがとう。でも医療従事者は、患者さんからお礼を受け取ってはいけないのよね」
少し間をおいて答えるリルリムの言葉に、ああそうかと悠翔は顎を上げる。
「でもそれは各病院の決まりごとであって法律ではないから、政府の要請で特別研修している私には関係ないかも」
そう言ってほほ笑むと続ける。
「もらった規範書にも書いてなかったと思うし、デザートをおごってもらおうかしら」
その言葉に悠翔の顔もほころび、二人は食堂へ向かうこととなった。
「ああ、ええ。看護の研修よ。ちょっと特殊で一般的なものとは違っているけれど」
通路を歩きながら、悠翔の問いに答えるリルリム。
セアトという、新しく導入されることとなった医療機器の実証試験を主目的とした研修だという。
「ああ、研修と言っても基本的なことはきちんと学んでいるし、先生の許可を受けてやっていることで、セアトの確認と記録もあるから心配しないでね」
「そんな心配はしてないですよ。包帯の巻き方も上手くて流石だなと思ったし。昔、姉貴に巻かれた時はぎゅうぎゅうに巻かれて酷い目にあったから」
悠翔は答えながら、手で包帯を巻き付け強く引っ張る仕草をして笑った。
食堂に戻り中に入ると、時間が遅い為かほとんど人はほとんどおらず、スグニィスもいなかったが、一角にベッキア大尉と教官たちが居た。
「なんだ!? 不純異性交遊はいかんぞ! 不純異性交遊は!」
二人に気が付いたのか、ベッキアが立ち上がって気色ぱむ
「相手にしなくていいから。猫のおならでも聞いたと思って無視して」
ギョッとしているリルリムに、小声で話す悠翔。
「隊長、落ち着いて。彼女は医務室の子ですよ」
「医務室? なんだ悠翔、やっぱり腕を痛めてるのか?」
教官の言葉に、驚いたようにベッキアが悠翔に聞く。
「ああ、ええ、でもたいしたことは無いんで」
一瞬ベッキアの方を見てから、視線を外して少し慌てる悠翔。
「今、再検査を終えたころです。このことに関しては後で子細を報告しますので」
リルリムの声が続く。
ベッキアがその言葉に身を引いたので、悠翔とリルリムは食事の注文をして席に着いた。
しばらく間は静かだったが、悠翔とリルリムが食事を始めてしばらくすると、悠翔の方をしばし見つめていた教官の一人が大きめな声を出す。
「悠翔とリルちゃんか、優秀な者同士、引き合うのかねえ」
その言葉に、隣の教官が「おい、ヤメロ馬鹿!」という声が聞こえてきそうな勢いで小刻みに動いた。
「なんだあ、悠翔並みに優秀なのか!? その小女が」
ちらと、こちらを見てベッキアが言う。
「何? 小女って」
リルリムが不快を顕わに呟き、冷や汗の悠翔。
「帰還作戦の医療班に採用されてるんですよ、リルちゃんは」
「見たところ学生みたいだからまだ修学中だろ、そんなんで大丈夫なのか?」
「だから凄いんですよ。普通は試験に受からないのに受かったんですよ、リルちゃんは。学生で受かったのは数人なんですから」
ふーん、というような顔のベッキア。まだ納得しないのか続ける。
「そうは言っても、所詮は学生だろ。実務経験も無くて役に立つのか?」
その言葉に即座に声を上げるリルリム。空気の流れに気圧される悠翔。
「帰還作戦の医療班の大半は、実務経験のある看護師の方たちです。私を含め採用された学生たちは、あくまでも予備人員だと心得ています」
きりりとした言葉が続く。
「そして、今次、医療班の責務は基本、外傷治療が中心になりますし、その基礎知識と研修は学生の私でも修了しています。それに最新の技術を使用した、セアトという医療補助器具があり、処置の適正の確認が取れて記録として残りますから、心配には及びません」
わずかだが怒気が感じられる声に、しんとなる食堂。
「あ、いや。しっかりやりますので、その、安心してください」
慌てたのか、小声になり口ごもるリルリム。
「そうか、わかったよ。しっかりと責務を果たしてくれ」
ベッキアが微笑んで言うと、空気の色もやわらかに戻った。
「あー、そのなんとかっていう医療補助の機械って、ニュースで見たぞ。医師会が導入に慎重なのを、帰還組に使わせて広めようとしてるとかなんとかで」
「なんか頭に付ける奴だな、指示や確認がされるとかの。使用することで救命士や看護師の医行為権限の拡大が検討されていて、負担が増えるとかで揉めてるんだよ」
教官たちの会話に、何か言いたげなリルリムの顔。悠翔と目が合うと口を開いた。
「私は、良いことだと思っているわ。患者さんに、迅速に対応出来る方が良いに決まっているもの」
悠翔も軽くうなずく。
「当面は帰還組で使用するだけらしいですけど、どうなるんですかね」
「大昔のX線照射の資格の時もいろいろ騒いだが、高度画像診断資格以外は無くなったからな。便利に使えるとなれば普及するだろう。問題は費用だろうから、また税金上がるんじゃないのか」
そんなやりとりを聞きながら、食事をしばらく続けた後、悠翔がリルリムに話しかける。
「それにしても、数人しか受からない試験に受かるとか凄いね。手当の上手さも当然なんだ」
「わしを見くびるでないぞ」「また、おじいちゃんみたいな声!」
少し首を振りながら叫び、微笑む悠翔。
「以前から噂はあったから予習していたし、実は試験を受けた人がそんなには多くはなかったのよ」
「いや、でも凄いと思うよ」
感心して話す悠翔。そして続ける。
「それにしても、おじいちゃんの声が上手いね」「あんまりうれしくないからそれ」
「声だけだと、完全におじいちゃん「失礼だから! 真似しているだけだからね!」
リルリムが声を上げた後、二人の柔らかな笑い声が響いた。
般若のようなベッキアの顔。周りの教官は背を向けて無言で食べている。
「わしじゃよ、って言ってみて。黒幕っぽく」「黒幕なの?」
そのリルリムの問いに悠翔は
満を持してではなくもう無理もう知らんという感じでの投稿です すいません
次話は早く書きたかったことなので早いかも




