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ダンスウィズアームズ  作者: 陣駆
13/30

仮想訓練機2/2

「おまたせ。よし、やるぞ、って繋がらないぞ、おい」

 スグニィスの声。

 悠翔が、教えられてボタンを押すと画面が明るくなり、色々な文字が表示される。スグニィスの指示通りの場所を選択して押すと、マッチング画面なった。

 画面右下に小窓が開き、スグニィスの顔が出る。

「ニコニコしちゃって、まあ」

 スグニィスの笑いながらの言葉に、破顔する悠翔。抑えられない。こぼれる笑い声。

 悠翔がは言われた通り、画面のカーソルを移動してボタンを押すと、実写としか思えない映像が映し出された。木々や建物の残骸が見える。明るい昼間だ。

 更に言われるまま選択していき、ようやく画面から設定の選択を要求する小窓画面が消えうせた。

 操作するタル―トの装備が画面の線画から確認できる。機体が持つ主力の武装は、太めのアサルトライフルの様なもの。背中右には短剣が三本装備されていて、背中左には予備弾倉が三個装備されていた。


挿絵(By みてみん)


「じゃあ知っている範囲で、やれるだけやってみてよ」

 スグニィスの言葉か終わるや否や、レバーを操作する悠翔。双椀重機の時のことを思い出しながら操作。前進、後進、旋回に、低く短い跳躍。悠翔のにやけ顔。

「おいおい、もっと大きく動いてみろよ。仮想訓練機だぜ、何が起きても何も困らないんだから、まずは限界を知れって、俺はそう教わったぞ」

 その言葉に顔を上げて頷く悠翔。大きく動かしてみる。(頭上のシムカはその動きに追随し、動じていません)

 動き回る悠翔の操作する機体。感嘆の声。

「凄いですねコレ。空中での機動性も思いのほか高い。先行入力も効くし、入力のキャンセルも同じように出来ますよ。驚きです」

「驚くのはこっちだよ、なんでそんなに自由に動かせるんだよ!?」

 スグニィスの感嘆と鼻息の音。

「だって基本的に同じ操作で動けるんだから出来ますよ。映像はこちらの方がはるかに凄いですけど」 

 「そりゃ軍のものだからな、最新の技術で作られてるし。それより、いいから撃ってみろよ。木でも建物でもいいからさ。誰も困らないんだぜ」

 悠翔はにやけ顔で、近くにある木々を撃ってみた。響く射撃音。画面に映る、砕ける樹の幹、散る木の葉。その細やかな再現度に瞠目する。


 悠翔は、所構わず撃ちまくり続ける。残弾を示す表示が、白から緑 黄色になると警告文字が出て、赤色になって弾が尽き、一際大きな赤色の文字が出た。弾倉交換を要求する表示だ。

 視線を合わせボタンを押すと同時に、左人差し指でレバーの何も無い部分を等間隔で叩き続ける悠翔。

「8か」

 弾倉交換完了の表示を見て呟く。

「教官が、弾倉交換にかかる時間も記憶しろってさ、機体の状態によっては誤差も出るから、それも勘案出来るようになれと」

 スグニィスの通信の声。

「ああ、はい。そうですね。記憶します」

 悠翔は、微笑んで答えた。


 しばらくの間、建物の残骸を撃ち砕いたり、跳び乗ったりしてみる。機体の傾き、建物に接触した時の揺れの動きや粉塵の舞い上がり方の細かさに、悠翔は、首を振りながら微笑んで鼻息を漏らした。

「動けるのは分かったよ。本当に凄いな」

 スグニィスが、そう言った後に一呼吸おいて。

「そこから、俺の機体に向けて撃ってみてくれないか」

 その言葉に驚きながらも画面の数字を探す。悠翔の機体からスグニィスの機体はかなり離れている。およそなんとなくたぶんそんな気がする300メートルほどの距離だ。それと合致する感じの数字が画面にあることにも気が付いた。


「何度も言うけど、仮想空間でのことだから誰も困らな……」

 聞くまでも無く発砲する悠翔。銃口から火花を散らして弾が飛ぶ。スグニィスの機体めがけて何発も。


 だが、弾かれる銃弾。ただの一発もスグニィスの機体に届くことが無かった。かなり手前の空中で銃弾が弾かれているのが見て取れる。

 唖然とする悠翔の顔。首を伸ばして括目する。目を凝らした後に射撃を止めた。

 気が付いて感嘆の声を上げる悠翔。 

「これって、バリ「防御波だよ」「え、バリ「防御波だからね」

 悠翔の声をかき消す、スグニィスの声。

「バリアですよねこれ!?」

 悠翔が早口で叫ぶと、スグニィスが大笑いして答える。

「防御波と呼称してください」


 スグニィスの説明では、防御波というものに機体が守られているということだった。機体に積まれた小さな炉から半径100メートルが防御波というものに覆われているという。

「へえ、銃弾とかミサイルとか、速度の速いものは一切通さないんですか。そんな嘘くさいものが本当にあるんですか?」

 悠翔が上目で頭上のシムカを見ようとしながら、スグニィスに聞く。

「あるんだからしょうがないだろ。まあ発見された時は大騒ぎだったらしいぞ。そしてこの発見が戦争の引き金になったとかという説まである」

 驚く悠翔に説明を続けるスグニィス。

「防御波には二種類あるんだよ。ひとつはこのタルートに搭載されているもので、もう一つは何キロだったか忘れたけれど、都市を覆うほどの大きさのものさ。おかげで戦争時も首都といくつかの都市は無傷で済んだ」

「そんな大きなバリ……防御波があるんですか」

「まあ、速度の遅いものは通過出来るから、漂ってくる汚染物質は防げないんだけどな。しかも維持するのに大電力を必要とするし」


「あれ? それじゃあどうやって戦うんですか? 全部弾かれちゃうんじゃ戦えませんよね」

 スグニィスは答えず、機体を悠翔の方へ移動させてきた。

 しばらくすると、短い警告音と画面下に小さく文字が出る。

「そこから、もう一度撃ってみてよ」

 スグニィスの声、機体は前方で動きを停めて立っている。

 悠翔は言われるままに撃ってみた。

 一瞬、スグニィスの機体の前で数発の弾が、いましがたと同じように弾かれるが、すぐに後続の弾がスグニィスの機体に到達した。スグニィスの叫び声。

 スグニィスのタルートが、左前方へ跳躍して建物の残骸へ隠れる。悠翔は撃つのをやめた。

「なんで当たるんですか?」


「悠翔のタルートの防御波と、俺のタルートの防御波が接触したからだよ。接触すると間が開くのさ」

 目を見開いたまま、応えない悠翔に続ける。

「ま・が・あ・く んだよ。防御波と防御波が接触すると、その部分の防御波が消えてその効果が無くなるということさ。それでお互いに撃ち合いが可能になる」

 大口を開けた後、何度も頷く悠翔。漏れる鼻息。

「あれ、でも一瞬とはいえ、弾が弾かれましたよ?」

「ああ、それは防御波弾。防御波の余剰分が撃ち出されて、円盤状に防御波を形成する。わずかな時間だけだけどな」

「また面倒な……ああ、でも撃たれる側は少しとはいえ助かるか……」

「ということで、遠距離攻撃はほぼ無効化され、攻撃をするには間を開けないといけないということさ。これは当然、無人機にも搭載されている」

 その言葉に口を開ける悠翔。スグニィスに聞く。

「これがあるから無人機は、近づかなければ何もしないってことなんですか」

「そう。無人機は一定の場所に待機している。間を開けたり、武器と判断されるものを持って近づかなければ何もしないのさ。もちろん武器のあるなし関係なく、絶対に入れない立ち入り禁止の区域もあるけどな」

 そう言った後に、スグニィスの機体が出てくる。


「では一戦交えましょうかねえ、救世主様。さあ、やるぞ!」

 そう言って撃ってきた。

「ちょ」

 悠翔は慌てて、機体を建物の残骸のある方向へ低く跳躍させる。撃たれた何発かが機体に当たる効果音。


次回 第14話 仮想訓練機3/2


え?

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