第8話 廊下で遭遇
それから2日後の休み時間。
「お〜い、諒、先に行っているぞ〜」
「うん、ちょっと遅れるから先に行っててよ、螢一」
次の授業は、科学実験室で実験があるので教室移動なんだけど。
準備に手間取り、螢一を先に行かせた。
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「みんな早いなあ・・・」
準備に手間取った結果。
みんな先に行ってしまい、僕一人だけで実験室に向かっていた。
準備室は、校舎の離れた場所にある為。
周りは、基本的に人気が無い。
誰も居ない廊下を一人、歩いていると。
「わっ!」
「うわぁぁっ!」
突然、背後から声と共に、背中に誰かが抱き付く。
ビックリした僕は、思わず声が上げてしまった。
驚いて振り向くと、そこには相変わらず上品な空気をまとった。
涼子先輩が居たのだ。
「よっ♪」
「ああっ、ビックリした」
シュピっと右手を上げて。
文字通り、イタズラが成功した子供のような笑顔を見せる。
「イキナリ脅かさないで下さいよ!」
「えへへっ、ごめん、ごめん」
一応謝るが、まるで悪気の無い笑顔のままでいる先輩。
黙って居れば、お淑やかなんだけど。
意外に、茶目っ気が有りすぎる所があるんだよなあ・・・。
それでも上品さが崩れないのは、才能かな?
「諒くんは、どこに行くの?」
「次が科学の実験だから、実験室に行く所です」
「ふ〜ん」
「そう言う先輩は、何ですか?」
「ん、う〜ん・・・、ないしょ♡」
そんな僕の内心には気付かず、行き先を尋ねる先輩。
しかし、逆に僕が尋ねると、はぐらかしてしまう。
「じゃあ、もう行かないと遅れてんで」
余り時間が無い僕は、先を急ごうとする。
だが。
「(ギュッ!)」
先輩が抱き付く力を強めた。
「ねえ、もうチョット、お話しよ」
「せ、先輩、急がないと遅刻してしまいますよ!」
そう言って、急ぐのを妨害する先輩。
それも、強い力で抱き付く物だから。
自然と密着する形になり、先輩の柔らかい体の感触に、思わず胸の鼓動が高なる。
タダでさえ急いでいるのに、その感触が加わり。
僕は、慌て出した。
「鐘が鳴るには、まだ間があるけど?」
「あの先生は、鐘が鳴ると同時に入るんですよ!」
そうなのだ、次の科学の先生は、鐘が鳴ると同時に入るので有名だ。
「心配しなくても、大丈夫よ〜♪」
「全然、大丈夫じゃない!」
なぜか、根拠の無い安心を言い出す先輩。
それを聞いて、更に焦る僕。
「お願い、行かせてー!」
「い・や・よ〜♡」
僕が必死で懇願するが。
先輩が悪魔の微笑みを浮かべながら、僕を妨害する。
それからしばらくして、ようやく先輩の拘束から脱出したが。
当然、授業には遅刻して、先生から大目玉を喰らってしまった・・・(涙)