第6話 だ〜れだっ
翌日の昼休み。
「先輩、来てるかな・・・」
僕は昼食を急いで済ませると、先輩に会いに図書室に向かっていた。
昨日、せっかく先輩と親しくなれたんだから。
もっと、色々な話がしたい。
そう思いつつ、急ぎ足で廊下を歩いた。
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図書室に着くと、静かに戸を開けて中に入る。
「(あれっ、今日は居ないのかなぁ〜)」
中を見渡すと、昨日とは別の図書委員と、2人の生徒がいるだけで。
先輩の姿は無かった。
”しょうがない、今日は一人で本を読むか”
そう思い、棚から適当な本を取り出し、近くのテーブルに座る。
本を読みながら、先輩の事に付いて考えてみる。
「(そう言えば、何で今頃、先輩の姿を見るようになったんだろうか?)」
僕は入学して、もう三カ月近く経つの、急に先輩の姿を見たのだ。
その事について、考えていたら。
「だ〜れだっ♡」
突然、本を読んでいた視界が暗くなった。
どうやら、誰かが目隠しをしたようだ。
この手の冷たさ、そして、僕にこんな事をする様な女の子と言えば。
「ひょっとして、涼子先輩?」
そう言ってみた。
「ふふふっ、正解♪」
振り返ると、先輩がニコニコしていた。
「良く分かったね」
「この手の冷たさだし。
それに、僕にこんな事をしてきそうなのは、先輩だけですよ」
「そうなの?」
「今時、こんな事する娘は居ませんし。
第一、僕にする娘なんて居ませんよ」
「ふ〜ん、可哀想ね・・・」
「ほっといてください」
「ごめん、ごめん」
そう言って、僕の頭を撫でる先輩。
「でも、私の手って、そんなに冷たいのかな・・・」
自分の手を見て、呟く先輩。
「でも、先輩。
手の冷たい人は、心が暖かいって言うじゃないですか」
「・・・ありがとう、諒くん」
そう言って、僕に飛びっきりの笑顔を見せる先輩。
その笑顔を見て、僕はドキリとした。
「そう言う諒くんこそ、暖かいんだよ」
先輩が僕の頬に手を当てながら、そう言った。
「ホント、暖かいよねえ・・・」
僕の頬に手を当てると、今度はユックリ愛おしむ様に撫で出す。
僕を撫でる先輩の手は、外から入って間が無い、ほてった体にはとても気持ち良い。
気持ち良い先輩の手に僕は、再び成すがままになっていたのだった。