第4話 実は、私も・・・
「・・・実は、私も君に会いたかったの」
「へっ?」
意外な彼女の言葉に。
僕は、思わずマヌケな声を出していた。
「あ、そう言えば、名前がまだだったよね。
私は、芝山 涼子。
3年C組なの、よろしくね♡」
「ぼ、僕は、神沼 諒、1年A組です。
こ、こちらこそ、よろしくお願いします涼子先輩」
「涼子先輩かぁ・・・、良い響きだね・・・。」
自己紹介した時、失礼ながら先輩の事を、思わず名前で言ってしまったが。
それを聞いた先輩が、なんだか一人で満足したように頷いていた。
「すいません、名前で呼んで」
「ううん、良いのよ、それじゃあ名前で呼ばれたから。
私もそうするね、諒くん〜♪」
イタズラっぽい笑顔で先輩が、そう言う。
初対面の人間に、イキナリ名前で呼ばれた失礼を咎める事は無く。
それどころが、僕の事を名前で呼んでくれた。
「それでね、君に会いたかったって言うのは。
諒くんがね、私の姿が見えたからなの・・・」
「へっ?」
先輩が言っている意味が分からずに、またもマヌケな声を出した。
「あっ、・・・ううん、ただ私が目立たないから。
いつも気付いて貰えないの」
「えっ?」
”こんな美人は目立ってしょうがないに?”と思い、今度は疑問の声を出した。
「先輩みたいな美人に、気付かないんですか?」
「へえ、私は美人なのね? 嬉しいなあ」
「えっ! あの、その・・・」
「ふふ〜ん♪」
僕が思った疑問を口に出した途端。
それを聞いて先輩が、顔を接近させて僕を茶化し出した。
僕は、顔を赤くさせながらシドロモドロになる。
*********
しばらく慌てふためく僕の反応を楽しんだ後。
おもむろに先輩が。
「ふふふっ、ごめんね、からかって。
諒くんは、弟に似てるから、思わずイジメたくなるの」
「弟さん?」
「うん、2つ下で、おとなしくて優しくて。
顔立ちも何となく、諒くんに似てたのよ・・・。
でも、2年前に死んだの」
「すいません」
「いいのよ。
でも、どことなく似てるなあ・・・」
「でも、先輩の弟さんなら、結構美形なんじゃないですか?
多分、僕は似てませんよ」
「あれ、諒くんも、地味で目立たないだけで、結構カッコいいよ。
でも、もう少しオーラがあればねぇ・・・」
そう言いつつ先輩が、右手を上げ僕の頬を撫でた。
「(なでなでなで)」
先輩の手は色白で、小さくて、細くてしなやかだけど。
とてもヒンヤリとしていた。
まるで長時間、プールで泳いで体が冷えきった人の手の様だ。
「先輩、手が冷えてますね」
「うん、私は冷え性だから。
直射日光に当たらない限り、暑さ、その物自体は結構平気よ」
「そうすると、冬が大変そうですね」
「そう、冬は手足が冷えて大変。
だから、その心配の無い、夏が好きなの」
先輩のヒンヤリした手が、頬を滑る。
「諒くんは、暖かいな・・・」
そう呟きながら、しばらくの間、先輩が僕の頬を撫でていた。