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夏の涼風  作者: 海獅子
33/36

第33話 嘘でしょう・・・


 「あの・・・、先輩。いや、姉さん!」




 僕の言葉に、涼子先輩が固まった。




 「急に、どうしたの諒くん・・・。

冗談は止めてよ・・・」




 そして、口元に手を当てて、困惑した様にそう言った。




 「いや、冗談じゃないよ。

僕は昨夜、夢の中で思い出したんだよ、自分の前世を・・・。

僕は先輩の弟、芝山優の生まれ変わりだよ」


 「嘘でしょう・・・」




 僕の言う内容を聞いて、先輩が目を見開く。




 「嘘じゃないよ、幼い頃、よく僕が姉さんに甘えて抱き付いたけど。

姉さんは、そんな僕の頭を撫でてくれたよね」


 「えっ・・・」


 「小学校の頃は、いつも学校の行き帰りは手を繋いでいたよね。

それで僕が話し掛けると、姉さんは僕に微笑んでいたね。

だから僕は、それが嬉しくて、いつまで姉さんに話しかけていた」


 「・・・」




 先輩は驚いた表情のままだが、構わず僕は話し続ける。




 「あの事故の時は、確か、高校に入学してから彼氏を作るのかと言う話から。

姉さんが、僕がいるから要らないとか言ったんだよね。

それをキッカケにジャレて、姉さんが発作を起こそうとした所に車が・・・」


 「・・・やっぱり、優だ・・・」




 先輩が両手で口を(おお)い当てると、目から涙が(あふ)れていた。




 「ううん、私のせいで、あなたを死なせてしまったのに・・・。

どんな顔をして、あなたに会えば良いの・・・」




 しばらくして今度は、そう言いながら首を激しく振った。




 「ううん、違うよ姉さん。

僕は、自分で姉さんを助けたいからしたんだ。

だから、僕は姉さんが助かって嬉しいんだよ」


 「優・・・」


 「だから、姉さんがその事を負い目を負わなくて良いんだよ」


 「ゆーーうーーー!」




 先輩がそう叫ぶと、僕の胸に飛び込んだ。


 僕は、抱き付きながら、嗚咽(おえつ)を漏らす先輩の背中を優しく撫でる。


 そうやって涙を流す先輩を、慰めてやったのである。




 *********




 それから、先輩が落ち着いてきた辺りで。




 「そう言えば、姉さん」


 「なあに?」


 「姉さんは、僕の事を弟以上に愛しているって言ってたよね」


 「(ビクッ!)」




 僕が以前聞いた事を言うと、先輩が一瞬身を固くした。




 「僕もだよ、姉さん」


 「えっ?」


 「僕も姉さんの事を、実の姉以上に愛していた」


 「優?」


 「小学5年位から、だんだん女らしくなる姉さんの事が気になって。

中学になる頃から、姉さんの事を愛している事に気付いた。

でも、姉弟だからと、僕は諦めていたんだよ。

だから、姉さんも同じ気持ちだと分かって、とても嬉しい」


 「ほ、ホントに・・・、私も、私も嬉しい・・・!」




 先輩がそう言うと、僕をより強く抱き締める。


 そんな先輩を僕は、抱き返しながら髪を()いた。


 長くて滑らかな、先輩の髪の感触が心地良い。


 僕の指が髪を通る様に撫でると、先輩が気持ち良さそうに僕の肩に頬を乗せている。


 こうして、しばらくの間、僕達はお互いに抱擁(ほうよう)していたのであった。



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