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夏の涼風  作者: 海獅子
30/36

第30話 前世の夢1


 期末試験が終わって、よいよ翌日が終業式の前の夜。




 「はあ・・・」




 机に座って、僕は溜め息を付いていた。


 期末試験の準備をそっちのけで、先輩が成仏?できる方法を調べていた結果。

試験結果が恐ろしい事になっていた・・・。


 辛うじて、赤点は逃れたが。

全般的に、酷い点数だったのだ。


 この試験結果を知った両親から、大目玉を喰らい。

この夏休みは、大っぴらに遊ぶことが出来なくなってしまった。




 「あ〜あ、少しは試験勉強をしておけば良かった」




 そう言って僕は、机に突っ伏せる。




 *********




 しばらく、机に沈んでいた僕は。

気を取り直すと、ノロノロとベッドに移動する。


 そして、ベッドの中に入ると、そのまま目を閉じた。



 ・・・



 僕は目を閉じた闇の中で、ある事を考えていた。


 最近、時々あの悪夢を見ていたが。

目が覚めると、いつも、その内容を忘れてしまうのだった。


 だが日中、何かの拍子で断片を思い出す事がある。


 しかし、断片であり、前後の事が分からないので。

その断片が何を意味するのか、皆目(かいもく)見当が付かない。


 そんな事を、つらつらと考えながら。

僕は、次第に眠りに落ちて行った。


 ・・・




 *********




 ・・・



 僕は夢を見ていた。


 夢の中の僕は、幼稚園児だった。




 「おねえちゃん、おねえちゃん」


 「何、ゆうちゃん」




 ぼくは、おねえちゃんを見つけると。

すぐにかけよって、思いっきり抱きついた。




 「おねえちゃん、だいすき」


 「うん、わたしもだよ、ゆうちゃん」




 おねえちゃんもそう言うと。

ぼくをだき返しながら、あたまをなでてくれる。


 そうされると、ぼくはうれしくなり。

おねえちゃんにほおずりをする。


 ぼくは、おねえちゃんに甘えたくて。

いつもそうしていた。


 そうすると、おねえちゃんも、いつもあたまをなでてくれる。



 ・・・



 「おねえちゃん、だいじょうぶ?」




 ぼくは、ぐあいが悪くなって。

ベッドに寝ているおねえちゃんに、そういうと。




 「うん、だいじょうぶ、ありがとう、ゆうちゃん」




 おねえちゃんは、ベッドから手をのばして。

ぼくのあたまをなでてくれる。


 そんなことより、はやくよくなってほしいのに・・・。


 ぼくは、あたまをなでられながら、そうおもっていた。





 *********




 「お姉ちゃん! 一緒に帰ろ!」


 「あっ! 優、一緒に帰ろうか!」 




 学校の帰り、下駄箱の所で待っていていると。

お姉ちゃんが来るのが見えたので、そう叫ぶ。


 お姉ちゃんも、それを聞いて叫び返した。



 ・・・



 小学校の低学年の頃。


 学校の行き帰りは、いつもお姉ちゃんと手を繋いでいた。


 手を繋ぎながら、僕は、いろんな話をするが。

どんな話でも、いつも、お姉ちゃんはニコニコしてくれる。


 僕は、そんなお姉ちゃんの笑顔が見たくて。

ずっと、お姉ちゃんに話し掛けていた。



 ・・・



 それからも時々、発作を起こしていたけど。

寝込む様な酷い事は無く、発作を起こした時、倒れたりしない様に見たり。

側で介抱したりしていた。


 一緒に居たいと言うのもあるけど。

発作が起きた時の為にも、いつもお姉ちゃんと一緒に居たのだった。 




 *********




 「優!」


 「わっ、お姉ちゃん、イキナリ抱き付かないでよ〜」


 「何よ! もお〜」




 小学5年生になった頃。


 お姉ちゃんに抱きつかれると、とっても恥ずかしい。


 最近、お姉ちゃんの胸が大きくなり。

抱き付かれると、胸が当たってしまうからだ。


 しかも、見た目では目立たないが。

抱き付かれると、見た目以上に大きいのが良く分かる。


 それだけでは無く、全般的に体がマシュマロみたいに柔らかくなり。

恥ずかしいけど、触れると気持ち良い。


 また、側に寄ると、良い匂いがして心臓がドキドキしてしまう。



 ・・・


 最近、何だかオカシイ。


 お姉ちゃんを見ると、何だかドキドキしてしまったり。

胸が締め付けられる様になった。


 かと思えば。

お姉ちゃんに微笑み掛けられると、舞い上がる様に嬉しくなったり。


 二人で歩くと、ウキウキしたりもする。


 僕は一体、どうしてしまったんだろうか。

自分でも、良く分からない。



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