第30話 前世の夢1
期末試験が終わって、よいよ翌日が終業式の前の夜。
「はあ・・・」
机に座って、僕は溜め息を付いていた。
期末試験の準備をそっちのけで、先輩が成仏?できる方法を調べていた結果。
試験結果が恐ろしい事になっていた・・・。
辛うじて、赤点は逃れたが。
全般的に、酷い点数だったのだ。
この試験結果を知った両親から、大目玉を喰らい。
この夏休みは、大っぴらに遊ぶことが出来なくなってしまった。
「あ〜あ、少しは試験勉強をしておけば良かった」
そう言って僕は、机に突っ伏せる。
*********
しばらく、机に沈んでいた僕は。
気を取り直すと、ノロノロとベッドに移動する。
そして、ベッドの中に入ると、そのまま目を閉じた。
・・・
僕は目を閉じた闇の中で、ある事を考えていた。
最近、時々あの悪夢を見ていたが。
目が覚めると、いつも、その内容を忘れてしまうのだった。
だが日中、何かの拍子で断片を思い出す事がある。
しかし、断片であり、前後の事が分からないので。
その断片が何を意味するのか、皆目見当が付かない。
そんな事を、つらつらと考えながら。
僕は、次第に眠りに落ちて行った。
・・・
*********
・・・
僕は夢を見ていた。
夢の中の僕は、幼稚園児だった。
「おねえちゃん、おねえちゃん」
「何、ゆうちゃん」
ぼくは、おねえちゃんを見つけると。
すぐにかけよって、思いっきり抱きついた。
「おねえちゃん、だいすき」
「うん、わたしもだよ、ゆうちゃん」
おねえちゃんもそう言うと。
ぼくをだき返しながら、あたまをなでてくれる。
そうされると、ぼくはうれしくなり。
おねえちゃんにほおずりをする。
ぼくは、おねえちゃんに甘えたくて。
いつもそうしていた。
そうすると、おねえちゃんも、いつもあたまをなでてくれる。
・・・
「おねえちゃん、だいじょうぶ?」
ぼくは、ぐあいが悪くなって。
ベッドに寝ているおねえちゃんに、そういうと。
「うん、だいじょうぶ、ありがとう、ゆうちゃん」
おねえちゃんは、ベッドから手をのばして。
ぼくのあたまをなでてくれる。
そんなことより、はやくよくなってほしいのに・・・。
ぼくは、あたまをなでられながら、そうおもっていた。
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「お姉ちゃん! 一緒に帰ろ!」
「あっ! 優、一緒に帰ろうか!」
学校の帰り、下駄箱の所で待っていていると。
お姉ちゃんが来るのが見えたので、そう叫ぶ。
お姉ちゃんも、それを聞いて叫び返した。
・・・
小学校の低学年の頃。
学校の行き帰りは、いつもお姉ちゃんと手を繋いでいた。
手を繋ぎながら、僕は、いろんな話をするが。
どんな話でも、いつも、お姉ちゃんはニコニコしてくれる。
僕は、そんなお姉ちゃんの笑顔が見たくて。
ずっと、お姉ちゃんに話し掛けていた。
・・・
それからも時々、発作を起こしていたけど。
寝込む様な酷い事は無く、発作を起こした時、倒れたりしない様に見たり。
側で介抱したりしていた。
一緒に居たいと言うのもあるけど。
発作が起きた時の為にも、いつもお姉ちゃんと一緒に居たのだった。
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「優!」
「わっ、お姉ちゃん、イキナリ抱き付かないでよ〜」
「何よ! もお〜」
小学5年生になった頃。
お姉ちゃんに抱きつかれると、とっても恥ずかしい。
最近、お姉ちゃんの胸が大きくなり。
抱き付かれると、胸が当たってしまうからだ。
しかも、見た目では目立たないが。
抱き付かれると、見た目以上に大きいのが良く分かる。
それだけでは無く、全般的に体がマシュマロみたいに柔らかくなり。
恥ずかしいけど、触れると気持ち良い。
また、側に寄ると、良い匂いがして心臓がドキドキしてしまう。
・・・
最近、何だかオカシイ。
お姉ちゃんを見ると、何だかドキドキしてしまったり。
胸が締め付けられる様になった。
かと思えば。
お姉ちゃんに微笑み掛けられると、舞い上がる様に嬉しくなったり。
二人で歩くと、ウキウキしたりもする。
僕は一体、どうしてしまったんだろうか。
自分でも、良く分からない。




