第3話 会いに来たのね
それから、放課後。
ようやく授業が終わった僕は。
急いで、図書室に向かった。
また、あの女の子に会う為だ。
放課後も来るかどうかも分からないが。
居ても立っても居られず、再び図書室に向かったのだ。
*********
「(ガラッ)」
図書室の扉を開けると、相変わらず本棚の方に人が居ない。
カウンターには、昼休みと同じ女子の図書委員が居るだけだ。
その娘は、僕が入ったにも関わらず、やはり顔を上げず本を読んでいた。
この図書室は、放課後になると、更に人が居なくなる。
テスト前でも無い限り、人影すら見ない。
それでも未練がましく僕は、本棚の死角を覗いて見た。
「(・・・誰も居ないか)」
昼休みも居たから放課後も居るとは限らないか・・・。
そう思いながら、帰ろうとした所。
「私を探してたの?」
その目的の女の子が、僕の背後に立っていた。
声がしたので、驚いて振り返ると。
彼女の顔が、至近距離にあり、更に驚く。
驚いた拍子に僕は、2、3歩後ずさった。
「ごめん、ごめん、驚いた?」
そう言いながら彼女は、優しく微笑んだ。
「それで、私に何の用なの?」
そう言って、上体を前に少し傾けて、僕の顔を覗き込む様にして見た。
しかし、ただ彼女に会いたい一心で来ただけなので、特に理由を考えていなかった。
「いや、その、あの・・・。
何で、僕に微笑んでくれたのかなと思って・・・」
なので、僕はシドロモドロになる。
「それだけ?」
「・・・はい、すいません・・・」
僕の答えを聞いて、彼女はキョトンとする。
そんな彼女に、僕は消え入るような声で謝った。
「ふっ、ふふふふっ」
だが、しばらくして突然。
彼女が、口元に手を当てながら笑い出した。
その笑い方も、とても上品で。
同世代の女子には無い物である 。
「ごめんね、ちょっと意地悪だったかな」
そう言って、舌をチョロリと出した。
一見、雰囲気に合わなそうな。
そんな可愛らしい仕草も、意外と似合っている。
意表を付かれた僕は、そんな彼女に見入っていたら。
「・・・実は、私も君に会いたかったの」
「へっ?」
彼女が言った、予想もしない言葉に。
僕は思わずマヌケな声を出してしまった。