第28話 僕の噂2
僕は、先輩を成仏?させる方法を探していた、ある日。
授業の間の休憩時間、渡り廊下にある自販機で、ジュースを買って。
校舎の影に少し入った、手近な段差に一人で座って休んでいた。
「はあ、手掛かりすら掴めないなあ」
僕は、ジュースを飲みながら独り言を言う。
あれから、色々と情報を集めたが、何の手掛かりも掴めない。
僕は、遠くをみながら色々と考えていると。
「(トントン)」
突然、右肩を叩かれる。
右隣を仰ぎ見ると、涼子先輩が立っていた。
「そんな所で何してるの?」
先輩が上体を傾け、僕の顔を覗き込む様にしながら言った。
「はい、先輩が成仏?する方法を考えていたんですよ」
「・・・そんなのどうでも良いのに。
私は、もう諦めたのだから」
そう言って、少し悲しそうな顔をする。
そんな事を言っても。
心のドコかでは、今のままで良いとは思ってないだろう。
「(ガサッ・・・)」
僕が先輩の事を考えていたら。
校舎の先の方にある角で、何か物音が聞こえた。
「あれ、誰かそこに居た?」
「さあ?」
先輩もその音に気づいた様で、僕に尋ねた。
僕は誰か居たのか確信を持てないので、曖昧に答える。
たとえ居たとしても、余程の事が無いと先輩の姿が見えないから。
僕、一人居るだけしか見えないだろう。
そう思い、タカを括っていた。
だが、その油断が間違いだった。
*********
その2日後。
僕と蛍一は、一緒に廊下を歩いていると。
「(ヒソヒソヒソ)」
遠くで、誰かが、ひそひそ話をする声が聞こえた。
そちらの方を見ると、二人の1年の女子と目が合った。
目が合った瞬間、その女の子達は慌てて、その場を立ち去って行く。
「あれ、僕が女子に何かしたかな?」
女子に嫌われる事をした覚えが無いので。
納得がいかず、そういうと。
「ああ、お前、一部の女子から噂になっているぞ」
「またなの!」
蛍一が、僕の言葉を聞いて、そう言う。
この間、芝山先輩の事で噂になっていたので、またかと思った。
「ああ、だが、今度のはチョット、良い気分にならないぞ」
「どういう事なの?」
すると、蛍一は眉を顰めて、声のトーンを落として言った。
「お前が、例の幽霊と会話をしていると言う話がな。
一部の女子の間で、広まっているんだよ」
「えっ?」
えっ、まさか、涼子先輩と一緒に居るところを見られた?
「何でも、2日ほど前に。
校舎の裏で、お前があの幽霊と話をしているのを、偶然、霊感の強い娘が見たんだとさ」
「何だって」
あ・・・、あの時の事か・・・。
「それに、お前、あの幽霊の事を調べてるんだろ。
それも有って、噂が広がったんだよ」
「・・・」
うわ〜っ、完全に油断していた。
よく考えてみれば、今までも目撃例が有るわけだから。
少ないながらも、見える人間は居るんだよな。
いままで僕以外で、涼子先輩の姿を見た事がある人間を、出会った事が無いから。
つい、油断していた。
これからは気を付けないと、芝山先輩の時を考えると。
どんなトンでもない尾ひれが付くのか、見当が付かない。
先輩にも言って、人目が無い所で話をするようにしないとなあ・・・。




