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夏の涼風  作者: 海獅子
27/36

第27話 僕の噂1


 それから二、三日ほど、経った頃の事。



 朝、いつもの様に教室に着き、机に座ると。




 「おはよ、螢一」


 「おい諒、さっき聞いたが。

お前、女と付き合っているそうだな。

しかも3年生で、年上じゃないか」


 「はあ?」




 こちらを向いた螢一が、突然、予想もしないことを言い出した。




 「トボけても無駄だぞ、相手も分かっているし。

3年B組の芝山玲だろ、”図書室の主”と呼ばれる、あの」


 「ええっ〜!」




 僕は、その相手もだが、芝山先輩の二つ名にも驚いた。




 「何だよ、その”図書室の主”って」


 「ん、付き合ってる癖に知らないのか?」


 「だから、付き合ってないって!」


 「じゃあ、どうして二、三日前、階段の踊り場で、抱き合っていたんだ?

目撃している、女子がいるんだぞ」




 ああ、先輩が、あの階段から落ちた時。

受け止めた所を見られたんだろな。




 「あれは、先輩が落ちた時、偶然居て受け止めただけだよ。

第一、まだ、学校があっている最中に、そんな事する人間がいるのか?」


 「ホントか〜?」


 「だから、どうして、そうなるんだよ!」


 「この間、芝山先輩って言いながら探していたじゃないか」


 「あれは、同じ名字の別人だよ!」




 僕は必死になって、誤解を解こうとしていた。



 ・・・




 「ふう〜、その調子だと、ホントみたいだな。

良く考えれば、お前に、そんな度胸が有るとは思えないしな」


 「何気に、酷い事を言う!」




 しばらくの間、螢一に説明し。

その甲斐あって、とにかく誤解は解けたが。

本当に、人の事を何だと思っているんだか。




 「まあ、見たのは、その場面だけらしいから。

おそらく、噂が流れている内に、尾ひれが付いたんだろうな。

女子連中が、妄想たくましくしながら、キャッキャと言って噂していたから」


 「・・・」




 その調子だと尾ひれどころか、角や尻尾まで生えそうな感じだな・・・。




 *********




 「それで、螢一」


 「うん、何だ?」


 「”図書室の主”って一体、何なんだ?」




 僕は、先輩の二つ名に付いて聞いてみた。




 「ああ、3年B組の芝山玲って、1年の頃から図書委員で。

しかも、どの本がどの棚にあるか分かる位、蔵書に付いて詳しいし。

それに、騒がしいと、真っ先に飛び出して注意するそうだ。

だから、いつしか”図書室の主”と、言われる様になったんだとさ」


 「へえ〜」




 なるほど、あの人らしいと言えば、らしいなあ。




 「で、諒、お前その人の事をどう思っているんだ」


 「ぶっ!」


 「だから、なんとも思っていないなら。

そんな事を聞かないだろ」




 イキナリ、思いも寄らない事を言う、螢一。




 「べべ、別に、ただ図書室に行って。

たまたま、親しくなっただけだよ!」


 「へえ、たまたまね〜」


 「な、なんだよ」




 螢一は、そう言いながら、意味ありげな笑みを浮かべていた。


 だから、ただの知り合いだって。


 こうして、またも螢一に、必死に説明するハメになってしまった。



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