第26話 意外な人と鉢(はち)合わせ
それから別の日の昼休み。
今日も昼食を済ませると、いつもの様に図書室に行く。
図書室に行くのだが、最近は、涼子先輩の事に付いて調べている。
先輩をこのままにして置けないので、どうにかして成仏?出来るか調べているのだが。
今だに、その手掛かりを掴むことが出来ない。
今日こそは、何か手掛かりを掴もうと思い、図書室に向かっていると。
「(あれ?)」
階段を昇り、途中の踊り場に着くと、上から降りる人影が見えた。
良く見ると、それは僕が知っている人である。
「あれ、芝山先輩ですか?」
「うん? ああ、神沼くんだよね」
その人影を見ると、それは図書委員の芝山玲先輩だった。
芝山先輩は、数冊の本を両手に抱えていた。
「どうしたんですか? そんなに本を持って」
「これね、先生に頼まれて、職員室まで運んでいる途中なのよ」
僕は、先輩の1mの所で止まり、質問すると。
先輩は、踊り場から3段ほどの所で返事を返す。
「それじゃあ、私は行くね。
あ、あああ〜」
「危ない!」
先輩が急ごうとして、階段を踏み外した。
それを見た僕は、慌てて飛び出す。
”あ、姉さん・・・”
”危ない!”
なぜか、あの悪夢の内容を一瞬思い出したが。
それには構わず、先輩の所に飛び出す。
「(ぽすっ)」
「ふう〜」
階段から落ちる先輩を、正面から受け止める。
本は踊り場に散らばったが、先輩を無事に受け止められた。
「(あれ? 軽いなあ)」
僕は良く、螢一達からジャレている最中に飛び込まれたり、乗ってこられてしていたので。
その感覚で居たら、余りの軽さに拍子抜けしてしまった。
やっぱり男とは違い、女の子は軽いなあと思った。
涼子先輩も軽いが、あの人?は人間では無いので例外だと思ったが。
やはり、同じ様に軽かったのだ。
「ねえ、早く、下ろしてよ・・・」
「ん、あっ、すいません、すいません」
僕は先輩を正面から受け止めていたので、シッカリ抱き上げている状態になっていた。
先輩も反射的にだろうか、掛けている眼鏡がズレながらも、僕の背中に腕を廻している。
だが、その状態のまま恥ずかしそうにしながら、僕に下ろす様に言った。
僕は先輩の言葉に自分の状況に気付き、慌てて下ろした。
*********
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だから・・・」
僕は落ちた本を拾うと、先輩の代わりに本を抱え職員室まで運んでいた。
先輩は少し赤い顔で、視線をやや下に向けながら歩いている。
「でも、先輩」
「ん?」
「先輩って軽いんですね、余りにも軽いからビックリしましたよ」
「そ、そう・・・」
先輩が恥ずかしそうに、返事を返している。
「き、君だって、意外に逞しいんだね・・・。
私を受け止められるなんて・・・」
「そうですか?」
「それに、抱き止められた時、気持ち良かった・・・」
「えっ!」
「何でもない、何でもない。
お願い、忘れてぇ〜」
僕が、先輩の言葉に思わず反応すると。
先輩が真っ赤な顔で、両手と首を振りながら必死になって、お願いしてきた。
・・・
その後、職員室まで歩いたが。
先輩は真っ赤な顔のまま黙り込んでしまう。
僕も、先輩の雰囲気に、何だか声を掛けづらくなってしまった。
*********
こうして僕は、数冊の本を抱えながら。
職員室まで、真っ赤な顔で黙っている先輩と、一緒に歩いていたのだった。




