表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の涼風  作者: 海獅子
24/36

第24話 プールの前に


 その翌日。




 「お〜い先に行っているぞ」


 「うん、分かったよ」




 螢一が先に行くと言うので、僕は返事をした。



 ・・・



 次は、体育の授業である。


 夏で体育となれば、当然、プールで水泳だ。


 だから、これから海パンに着替えるに行く所であるが。


 またも準備にモタつき、僕だけ一人で向かう事になった。




 *********




 「少し、急いだ方が良いな」




 みんな、先に行っていて、僕一人だけ歩いている。


 そうやって、プール横の脱衣所へと続く、渡り廊下を歩いていると。




 「(ポンポン)」


 「ん?」


 「(ぷにっ)」




 後ろから、右肩を叩かれたので振り返ってみたら。

何かが、頬に刺さった。




 「引っ掛かった、引っ掛かった」




 見ると、指が僕の頬に刺さっていて。

後ろには、先輩がチェシャ猫の様な笑顔で、立っていた。


 どうやら、古典的なイタズラに、引っ掛かってしまった様だ。




 「またですか、先輩」




 僕は、呆れたような溜め息を出しながら、そう言った。




 「どうしたの? そんなに急いで」


 「これから体育で水泳なんですが、準備にモタついて、少し急いでいたんですよ」


 「ふ〜ん」




 先輩が手を後ろに廻し、首を傾けながら、不思議そうに聞いてきた。




 「あ、何なら、見学してみませんか。

どうせ、姿が見えないんだし」


 「・・・いいよ。

男の子の裸を見るのは、恥ずかしいよ・・・」




 そう言って、顔を赤くしながら(うつむ)く。


 幽霊?だから、姿が見えないから、そんな事を思いついたら。

なぜか、恥ずかしがってしまった。


 いつもは、僕に何かに付け、くっ付いて癖に。

そう言う所では、恥ずかしがるんだから。 




 *********




 「あ、そろそろ行かないと。

それじゃあ、失礼します」




 先輩と話をして、そろそろ本格的に時間が無くなってきたので。

そう言って、行こうとしたら。




 「(ギュッ!)」




 行こうとする僕の後ろから、先輩が抱き付いてきた。




 「ねえ、もう少し、話していこうよ〜」




 後ろを向くと、先輩が甘える様な、切なげな瞳で僕を見ている。


 普段なら、その瞳に負けて、このまま止まるだろうが。

今は、急がないとイケナイので、それ所では無い。


 ん! この展開は、前にもあったな。

確か、その時は、遅れて・・・。


 イヤな事を思い出した僕は、慌てて。




 「ホントに時間が無いんだすよ〜」


 「大丈夫、大丈夫♡」


 「お願い! 行かせて!」




 先輩の言葉を聞いて不安になった僕は、先輩に必死に懇願(こんがん)したが。

それでも先輩は、僕から離れようとしない。



 ・・・



 何とか、先輩から離れる事が出来た頃には。

大幅に遅れてしまい。


 結局、僕は、プールの側で正座をするハメになってしまった。


 そうして、授業が終わった後。

脚が痺れてしまい、しばらくの間、マトモに立てなくなったのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ