第24話 プールの前に
その翌日。
「お〜い先に行っているぞ」
「うん、分かったよ」
螢一が先に行くと言うので、僕は返事をした。
・・・
次は、体育の授業である。
夏で体育となれば、当然、プールで水泳だ。
だから、これから海パンに着替えるに行く所であるが。
またも準備にモタつき、僕だけ一人で向かう事になった。
*********
「少し、急いだ方が良いな」
みんな、先に行っていて、僕一人だけ歩いている。
そうやって、プール横の脱衣所へと続く、渡り廊下を歩いていると。
「(ポンポン)」
「ん?」
「(ぷにっ)」
後ろから、右肩を叩かれたので振り返ってみたら。
何かが、頬に刺さった。
「引っ掛かった、引っ掛かった」
見ると、指が僕の頬に刺さっていて。
後ろには、先輩がチェシャ猫の様な笑顔で、立っていた。
どうやら、古典的なイタズラに、引っ掛かってしまった様だ。
「またですか、先輩」
僕は、呆れたような溜め息を出しながら、そう言った。
「どうしたの? そんなに急いで」
「これから体育で水泳なんですが、準備にモタついて、少し急いでいたんですよ」
「ふ〜ん」
先輩が手を後ろに廻し、首を傾けながら、不思議そうに聞いてきた。
「あ、何なら、見学してみませんか。
どうせ、姿が見えないんだし」
「・・・いいよ。
男の子の裸を見るのは、恥ずかしいよ・・・」
そう言って、顔を赤くしながら俯く。
幽霊?だから、姿が見えないから、そんな事を思いついたら。
なぜか、恥ずかしがってしまった。
いつもは、僕に何かに付け、くっ付いて癖に。
そう言う所では、恥ずかしがるんだから。
*********
「あ、そろそろ行かないと。
それじゃあ、失礼します」
先輩と話をして、そろそろ本格的に時間が無くなってきたので。
そう言って、行こうとしたら。
「(ギュッ!)」
行こうとする僕の後ろから、先輩が抱き付いてきた。
「ねえ、もう少し、話していこうよ〜」
後ろを向くと、先輩が甘える様な、切なげな瞳で僕を見ている。
普段なら、その瞳に負けて、このまま止まるだろうが。
今は、急がないとイケナイので、それ所では無い。
ん! この展開は、前にもあったな。
確か、その時は、遅れて・・・。
イヤな事を思い出した僕は、慌てて。
「ホントに時間が無いんだすよ〜」
「大丈夫、大丈夫♡」
「お願い! 行かせて!」
先輩の言葉を聞いて不安になった僕は、先輩に必死に懇願したが。
それでも先輩は、僕から離れようとしない。
・・・
何とか、先輩から離れる事が出来た頃には。
大幅に遅れてしまい。
結局、僕は、プールの側で正座をするハメになってしまった。
そうして、授業が終わった後。
脚が痺れてしまい、しばらくの間、マトモに立てなくなったのだった。




