第23話 もう一人の先輩
それから2、3日の間。
昔の学校に関する資料を図書室で調べたり(先輩が絡んで来て大変だったけど)。
両親などに、その頃の事を聞いたりしてみたが、余り情報が集まらなかった。
・・・
そして今日も、昼休みに図書室で調べ物をしていた。
先輩はと言うと、僕が調べ物に夢中に集中しているに、遠慮しているみたいで。
今は姿を見せていない。
「(これもダメかな)」
手当たり次第に目を通しているが、先輩に関わる事は見つからない。
むしろ、噂話を聞いている方が、情報が集まる位だ。
とは言え、少しでも手掛かりが見つかるならと思い、探していると。
「どうしたの、そんなの読んで?」
僕のすぐ隣で声がするので、そちらを振り向くと。
あのおかっぱ頭で、眼鏡をした図書委員の娘が立っていた。
「(ビクッ!)」
ビクつき驚いた僕は、思わず体を仰け反らせる。
「なんで、そんなにビックリする事は無いじゃないの。
しばらく姿を見せなかったから、様子を見に来たのに」
その娘は、顔をしかめて言った。
「なになに、これ全部、この学園の資料だよね」
「えっと・・・、この学校の幽霊の話について調べているんです・・・」
脇に積まれた資料を見て、イキナリ尋ねてきたので、僕は慌てて答える。
先輩の話そのまま話す訳にはいかないし、話しても信用されないだろう。
かと言って、全く別の話をしても、辻褄が合わなくなるだろうから。
少し、内容をズラして話した。
「ああ、知ってる、知ってる。
あの話だよね、私は信じて無いけどね。
でも、その話、私に少し関係するのよ」
「えっ!」
「私の名前は、芝山 玲。
ちなみに、3年B組よ。
あの幽霊の事を調べていたら、何か思わない」
芝山、芝山・・・って、まさか!
「まさか、あの死んだ大富豪の娘の・・・」
「そう、その遠縁の親戚なの。
あの一家は、結局、多額の借金を作って夜逃げしたけど。
当然、親戚一同からもしていて、もちろんウチの家族からもしていたの。
だから夜逃げした後、残った土地建物を分配して。
ウチに割り当てられた分に、家を建てたのよ」
「そうなんですか・・・」
「他の親戚なんかは、早々に売り払ったりしたんだけど。
なぜかウチは、そこにずっと住むことにしたんだよねぇ〜」
そう言いながら、首を振り、両手の掌を上に向け。
やれやれ、と言ったジェスチャーをした。
この娘が涼子先輩の親戚なのかと思い、よく顔を見てみると。
確かに、眼鏡をしていて雰囲気が違うだけで、顔立ちは全体的に似ている。
と言う事は、涼子先輩の事に付いて何か知っているのでは?
「お願いします! 知っているなら、その死んだ娘に付いて教えて下さい!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 痛い、痛いから」
「・・・す、すいません」
僕は、そう思うと突然立ち上がると。
芝山先輩の両肩を掴み、揺すりながら詰め寄っていた。
芝山先輩の声で我に返り、掴んでいた肩を放した。
「はあ、もう。
ウチと、あの家とは、借金絡みで最後の方は、カナリ険悪な関係になっていたみたいで。
口にするのも腹立たしいらしく、両親も話したがらないから、詳しい事はよく知らないの」
「・・・そうですか」
涼子先輩の事に付いて、何か分かるかと思ったののだが。
何も掴めなかった事に、ガッカリしてしまう。
「どうしたのよ、そんなにガッカリして?」
「いいえ、何でもないです」
「?」
気のない返事をする僕を、芝山先輩が不思議そうに見ていた。




