第20話 転がされる僕
そして、翌日の昼休み。
僕は今日も、あの木の下に来ていた。
どうにかして、先輩を成仏?できる方法が無いか探したいけど。
”明日の昼休みも、ここに来てね”
先輩が、ねだる様に、また来て欲しいと言ったのだ。
それで仕方なく、今日も、ここに来たのである。
・・・
それで校舎を出て、コンクリートの基礎の部分を歩き。
丁度、例の木の所に着いた所で。
「やっほ〜、諒くん〜♪」
「わっ! ビックリしたー!」
突然、先輩が目の前に出現した。
ビックリした僕は思わず、後ろに仰け反る。
「もお〜、そんなに僕を驚かせて面白いんですか?」
「だって、諒くんが驚く所が、可愛いからよ♡」
相変わらず人を驚かす、先輩に文句を言うが。
その当の本人は悪びれず、笑顔で、そう言う。
「ひょっとして、怒った・・・?」
僕の様子を見ていた先輩が。
今度は両手を組み合わせ、上目遣いに切なげな視線で、僕を見詰めてくる。
「(うっ!)」
女の子、しかも先輩みたいな美人から。
そんな視線で見詰められた事が無い僕は、言葉に詰まってしまう。
「べ、別に、怒ってなんかいませんよ。
ただ、余り僕をからかわないでくださいよ・・・」
「は〜い〜、善処しま〜す」
「だから、真面目に聞いてくださいよ〜」
僕の返事を聞いた先輩が、一転して、こぼれるような笑顔になった。
どうやら、こうなる事を、分かっててやっている様だ。
「だから、落ち着いて、ねっ♡」
そう言いながら先輩が。
問い詰めている僕の頭に手を伸ばし、頭を撫で始めた。
「(すーっ、すーっ)」
「・・・」
柔らかいがヒンヤリした先輩の手が、僕の頭を滑って行く。
その手の心地良さに、思わず僕は、黙ってしまう。
「(すーっ、すーっ)」
「・・・」
僕は先輩に、もっと言いたかったけど。
その手の気持ち良さに、続きを言う気が失せてしまった。
なんか上手い事、誤魔化されてしまったなあ。
・・・
ホント、いつも先輩に振り回されるなあ。
”まるで、先輩の手の平で転がされているみたいだ”
そう思いつつも、先輩の手に転がされている事を、不快に思わない。
自分が居るのにも気付いているのだが。
悔しいので、考えない事にした。




